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「同姓強制の民法750条は違憲」――夫婦別姓求め初の違憲訴訟提訴

「今日は嬉しい。同じ志の若い人たちと提訴ができて」と顔をほころばせる塚本協子さん(七五歳)ら原告が二月一四日、東京地裁に向かった。原告五人は婚姻の要件として夫婦同姓を求める民法七五〇条が憲法に違反するとして国などに対し、慰謝料計六〇〇万円を請求する訴訟を東京地裁に提訴した。

 榊原富士子弁護団長によると、別姓に関する家裁審判はこれまでもあったが、規定を違憲だとして訴える訴訟はこれが初めて。訴状では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とした民法七五〇条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立することを定めた憲法二四条一項、婚姻に関する事項は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定することを定めた同条二項に違反するのみならず、個人の幸福追求権を定めた憲法一三条、差別法規の改廃義務を定めた女性差別撤廃条約にも違反すると主張。また、法制審議会が一九九六年に選択的夫婦別姓の導入を答申し、改正案も作られたにもかかわらず提案されなかったことを、国会の立法不作為だと訴えている。

 原告は、富山県在住の塚本さんをはじめ、東京都在住のフリーライター加山恵美さん(三九歳)と会社員渡辺二夫さん(四三歳)の事実婚夫妻、東京都在住の行政書士、小国香織さん(三六歳)、京都府在住の短期大学講師、吉井美奈子さん(三四歳)の五人。

 加山・渡辺夫妻は、二〇〇〇年に法律婚をしたものの、仕事上の名前と法律上の名前が違うことで、混乱や不都合が生じたこともあり、二〇〇四年にペーパー離婚。その後、三度、各々の姓を書いて婚姻届を出したがいずれも受理されなかった。そのため、この処分は違法だとして取消を要求し、相続権がないなどの損害が生じることの賠償請求もしている。加山さんは「いまは名前か結婚かを選択しなくてはならない。どちらも名前を変えることのない婚姻制度を望んでいる」と話す。

 夫妻以外の原告女性らは現在法律婚をして戸籍上は夫の姓だが、旧姓を通称使用している。「かなり広い範囲で通称使用できている」という吉井さんも「とはいっても、(戸籍名と通称名が違うので)自分あての郵便物を取りに行けないとか、学生を海外に引率するときにパスポートは戸籍名だが学生は誰もその名前を知らないし、戸籍名、通称、その併記という三つの表記が重なってトラブルになりかけたこともある」と日常生活での不便不利益を訴える。

 小国さんは「直前まで事実婚にするか法律婚にするか迷ったが、夫と妻という身分を証明するのはいまの日本では法律婚だけ。どちらかが事故にあったときや病気で緊急手術という場合に、家族という証明が事実婚でできるのか不安だったこともあり法律婚を選んだ。嬉しいはずの結婚の際に、自分の一部を捨てるような思いをする人がいなくなってほしい」と切実な思いを語った。

 提訴の根底にあるのは、国会への怒りと絶望感だ。昨年、民法改正案を提出してきた民主党が政権をとり、推進派の千葉景子氏が法務大臣、福島みずほ氏が男女共同参画担当大臣になったため、「この内閣で改正できなかったらあと一〇〇年はできないと思った」(小国さん)というほど実現への期待は最高に高まった。しかし期待は裏切られ、塚本さんは「五〇年も待ち望んだ民法改正がまた遠ざかった」との思いから「絶望のあまり寝込んだ」という。

「政治の場が動かないのでもう裁判しかないという思い」(小国さん)から、国の立法不作為を問う訴訟提訴へ。被告となった国側の江田五月法務大臣は、これまで民主党議員として民法改正案の提案者側だった人物である。どのような思いでこの訴状を読むのか。

 一月に立ち上げられた「別姓訴訟を支える会」には「自分も原告になりたかった」という声が複数寄せられているという。「私たち五人の後ろに、大勢の同じ思いの人がいる」(吉井さん)のだ。望ましいのは、長くかかる裁判での決着よりも、国会で早急に民法が改正されることである。

(宮本有紀・編集部、2月18日号)

秋葉原事件、3月24日判決――加藤被告の最終意見陳述

「事件を後悔し、少しずつでも他者の気持ちを思いやろうとしている。更生の可能性がある」――弁護人は最終弁論でこう語り、死刑回避を訴えた。

 二月九日、東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われて死刑を求刑された加藤智大被告(二八歳)の公判(村山浩昭裁判長)が東京地裁で開かれた。

 二〇〇八年六月八日、秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込んで歩行者をはねた上、ナイフで通行人を刺し、七人が死亡、一〇人が負傷した事件は、社会に大きな衝撃を与えた。二九回にわたる審理では、犠牲者の遺族や、負傷者らが検察側証人として出廷し、意見陳述をした。また、検察側の精神鑑定医は「精神疾患の兆候はなく、責任能力がある」と証言した。これに対し、弁護側が申請した精神再鑑定や、責任能力を問う鑑定人の証人要請は退けられている。

 公判を通して被告は事件の動機について、「居場所」と感じていたインターネットの掲示板に現れた「なりすまし」や「荒らし」に対して、これをやめるように訴えることが目的だったと語った。

 残虐な無差別殺傷事件と、動機との乖離について弁護側は、被告に事件前後の記憶がないことなどから、当時、ネットの掲示板をめぐるストレスから心神耗弱、または心神喪失状態の疑いがあると主張。また、残虐な絞首刑による死刑よりも、生かして責任の重大さを認識させることの方が刑罰としてふさわしいなどと述べた。

 この日、加藤被告は最終意見陳述を求められ、「今現在、事件を起こすべきでなかったと後悔し、反省しております。ご遺族の方、被害者の方には申し訳ないと思っています」と謝罪の言葉を述べた。

 公判はこの日で結審。判決は三月二四日に言い渡される予定。

 なお、本誌では、この事件の重要性に鑑み、特集記事を組む予定。

(山村清二・編集部、2月18日号)