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マンガ等の性描写が問題を生じさせる根拠を答えられない外務省

 マンガやアニメ、ゲームなどでの性表現を規制しようとする行政側の動きと、規制へ反対する運動がせめぎあっている。

1960年後半から永井豪氏の『ハレンチ学園』など性や暴力描写が頻出したが、国内の強かん被害者数は60年代後半から減っている。(『少年犯罪データベース』URLhttp://kangaeru.s59.xrea.com/より)

 国政レベルでは昨年八月、創作物規制を盛り込んだ児童ポルノ禁止法の改正案が、衆議院解散に伴い審議未了廃案となった。また、「非実在青少年」規制を盛り込んだ東京都の青少年健全育成条例改正案は反対の世論が盛り上がり、今年六月都議会で否決されたが、石原慎太郎都知事は九月議会(九月二一日~一〇月七日を予定)への再提出を公言。大阪府など他の自治体でも規制の動きがあり、規制反対の声も同様に強まっている。(編集部注:その後、石原都知事は9月都議会への提案は断念)

 もちろん、児童の性的な被害をなくすための取り組みが必要なことは論を待たない。問題は、マンガなどの創作物が子どもへの被害を助長しているかどうかだ。仮に助長しているならなんらかの対策が必要になるだろうし、助長していないならば規制は憲法で保障された「表現の自由」(二一条)を踏みにじる行為にほかならない。

        日本外務省が国際会議で出した公式声明の中身

 事実はどうなのだろうか。二〇〇八年一一月、ブラジルのリオデジャネイロで「第三回児童の性的搾取に反対する世界会議」が開かれた際、日本政府(外務省)は公式声明(ステートメント)を発表している。関係部分を引用しよう。

〈漫画、アニメ、ゲーム等ではしばしば児童を対象とした性描写が見られます。これは現実には存在しない、コンピューター等で作られた児童が対象ではありますが、児童を性の対象とする風潮を助長するという深刻な問題を生じさせるものであります。このような描写をどの様に規制するかが法規制上の論点となっています。また、インターネットに潜む危険から子どもたちを守るために、情報通信業界と協力し、官民が連携して対策を講じていく必要があります〉(外務省HP)

 この日本語は仮訳であり、本文は英語となっている。驚くべきことに〈深刻な問題を生じさせる〉にあたる部分は英文では〈it surely raises serious problems〉となっている(同HP)。

〈surely〉(確かに)という副詞まで使って強調しているからには、明確な根拠があるに違いない。そこで筆者は八月二〇日、岡田克也外相の記者会見で根拠を質問した。岡田外相は「突然で言われてもわかりませんので調べてみたいと思います」と後日の回答を約束した。

 時間的な余裕を考え、再質問は二週間後の九月三日に行なった。少し長くなるが、会見の概要を紹介する(なお文章量の制限上、質問は簡潔にしたが、岡田外相発言はできるだけ全発言に近くした)
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筆者 性の対象とする風潮を助長すると外務省は〇八年に述べられています。この科学的根拠についてお教えください。

岡田外相 科学的根拠といいますか、児童そのものの場合と、そういった漫画とかアニメという場合で直接の被害者というのは児童そのものの場合と比べて存在しないという違いは確かにあります。ただ、そういった児童ポルノという意識を蔓延させるという効果においては、実際のものであっても、あるいは漫画、アニメといったものであっても、それは変わらないということだと思います。したがって、そういった状況を助長しないという意味においては、そういったものについても含めて、議論の対象にしていくという考え方を述べたものであります。

筆者 私が聞いているのは、変わらないという科学的な根拠です。たとえば社会学者の宮台真司さんは、もともとそういった趣向がある人に引き金を引くようなことはあり得るけれども、それを助長することはついに証明できていないと言います。また最近の研究では、実際の犯罪にいかないで代替措置としてそれで満足してしまい、禁止した国の方がかえって犯罪率が上がるというデータもあります。

岡田外相 学者の中でさまざまな議論があると思いますので、ここでそういった科学的根拠について証明しろと言われても、それはなかなか簡単なことではありません。しかし、実物だからだめでアニメーションだからいいというのは、私個人的には非常に考えにくいことだと思っております。違う意見もあると思いますが、しかもこれは表現の自由に関わる話ではありますけれども、私にはその違いが大きくあるとは思いません。

AP通信記者 「アニメだからいいとは個人的には考えにくいと思う」というご発言がありましたが、それでは、大臣は、こういった描写はよくない、反対である、禁止すべきであるという個人的なお考えをお持ちなのでしょうか。

岡田外相 そういうことは、私は何も語っておりません。それは、まさしくこれから議論していく話であります。ただ、被害者が直接いない、いるの違いはもちろんありますが、しかしアニメや漫画の描写も、特に最近はいろいろな技術の発展によって、本物か、あるいは人工的につくり出されたものなのかということの差もほとんどなくなってきておりますので、そこできちんと分けるという考え方は、私はよく納得できないのです。それが社会的に及ぼす影響という観点から見たら同じではないかと、あるいはかなり近いのではないかと、そういう気が私はしています。

        あえて認めた外相の率直さと残る問題点

 質問から二週間たっても、岡田外相は科学的な根拠を示すことができなかった。日本政府として国際的な会議で行なった公式声明について、科学的根拠がないことをあえて認めた岡田外相の率直さについて正直評価したいと思う。これも政権交代の成果かもしれない。

 会見の内容が伝わると、ツイッター上などでは岡田発言への賛否のほか、外務官僚を批判するつぶやきが飛び交った。

〈「surely」という安易な単語挿入等のせいで、我が国の大臣と我が国が恥をかいたことにも憤りを感じます。まともな人権外交をするためにも、この関係の外交処理や対応は、どうなっているのかもいち国民として気になります〉(九月四日、@pinknausagi)

 表現規制問題に詳しい山口貴士弁護士はこう指摘する。

「リオデジャネイロでの会議を受けて〈児童の性的搾取を防止・根絶するためのリオデジャネイロ宣言および行動への呼びかけ〉が発表されました。この宣言を、表現規制派は創作物規制の根拠をつくる戦略の一環として位置づけています」

 表現規制派は国際的な問題視を規制の根拠として語ることがある。その根拠のひとつが、このリオ宣言や日本外務省の公式声明だが、岡田外相発言によって、公式声明は科学的根拠がない外務官僚の”作文”であることがはっきりしたといえるのではないだろうか。

 前出の山口弁護士はこう続ける。

「岡田外相は、技術の進歩によって本物か創作物かの区別がつきにくいと述べています。取り締まる側の便宜だけを重視したロジックであり、外務官僚のレクチャーの内容を明らかにする発言です。反面、明確に創作物とわかるアニメやゲームの規制根拠はないことを事実上認める発言とも言えます」

 岡田外相の発言だけで規制推進側の根拠が根本から崩れたと断言できないかもしれない。だが、規制派官僚のいい加減さが浮かび上がったことは間違いないだろう。

(編集部 伊田浩之)

死刑廃止求める市民団体、千葉法相と面会

 死刑廃止を求めるNGO・市民団体は九月六日、法務省を訪れ、千葉景子法務大臣と面会。死刑執行の即時停止、死刑確定者の処遇や死刑制度における現実の情報公開、また、死刑廃止に向けた公的な議論の場を設置することなどを求めた。

 面会時間は四〇分ほど。面会後の記者会見でアムネスティ・インターナショナル日本の天野理さん(死刑廃止担当)は、「思ったよりも長くお話し頂けた」と話すが、七月二八日の千葉法相による突然の「死刑」執行後、こんな形で要請せざるを得なかったことに落胆した様子を見せた。

「千葉さんはもともと(死刑廃止に向けて)一緒にやってきた方。なぜ死刑を廃止する必要があるのかについては、説明する必要がない」(藤田真利子・アムネスティ・インターナショナル日本理事長)という信頼感の一方で、「二人の人間(確定死刑囚)を殺さないと、国民的議論を喚起できないのか」(「死刑廃止を求める市民の声」の井上澄夫さん)という批判の声も。

 野党時代には共に活動したという千葉法相への思いは、複雑だ。

 八月二七日には、東京拘置所の「刑場」が報道機関に公開され、法務省内での死刑制度に関する勉強会も開かれている。面会で(法相交代後も)死刑についての議論を終わりにしてはならない、と語ったという千葉法相。だが、藤田さんは「死刑を廃止にすればそれで終わりになる。死刑廃止に向けた議論を進めてほしい」と話した。

(ゆげたりえ・編集部)

NHK、影山日出夫氏の自殺で噂される官房機密費との関係

NHK内部では機密費疑惑がささやかれているが……。(撮影/本誌メディア取材班)

 

 NHK(日本放送協会)の看板討論番組「日曜討論」の司会役などとして知られていたNHK解説委員室の影山日出夫副委員長が五六歳という若さで死去したのは、八月一二日午後のことだった。既に伝えられている通り、自殺によるものだ。

 NHKなどによれば、影山副委員長は一一日夕、東京都渋谷区神南に位置するNHK放送センター西館八階のトイレ内で、ネクタイを使って首を吊っているところを同僚らに発見された。職場の机上に遺書のようなメモが置かれており、これを不審に思った同僚らが局内を捜索、ぐったりと倒れていた影山副委員長を見つけて病院に搬送したという。

 NHK関係者によれば、影山副委員長が自殺の直前に書き残したとみられるものの中には、こんな文言が綴られていた。

「頭と心のタンクが空っぽになった」

     都内寺院での葬儀に職員を大量動員

 影山副委員長は早稲田大を卒業後、一九七六年にNHKへ入局した。福岡放送局を経て八二年から報道局の政治部記者として活躍し、首相官邸や自民党の清和会担当などを歴任。その後は平日早朝の看板番組「おはよう日本」の編集責任者なども務め、二〇〇〇年からは政治担当の解説委員として「日曜討論」の司会などを担当し、〇八年から解説委員室の副委員長に就いていた。

 そんな影山副委員長の自殺理由は不明だが、あるNHK報道局記者は「影山さんは少し前から、非常に重い鬱病に苦しんでいたようです」と語り、各週刊誌の報道などでも「病気説」が最有力視されている。ただ、自殺の真相をめぐっては最近、当のNHK局内でこれとは全く異なる”真の理由”がもっともらしく流布されている、という。NHKの中堅幹部がこう打ち明ける。

「局の上層部は影山さんが病気を苦に自殺したという線で押し通したい意向のようで、都内の寺院で行なわれた葬儀も報道局や政治部が集合をかけ、社葬並みの職員を大量動員しました。しかし、病気を苦にした人間が職場内で、それも勤務時間の真っ最中に自殺を図るというのは少し不自然ではないでしょうか。そのせいもあり、局内では『別の理由』が自殺の真相なのではないかと指摘されているんです」

 NHK局内で囁かれている解説副委員長自殺の「別の理由」とは何か。同じ中堅幹部が続ける。

「官房機密費問題です」

     司会が自民党寄りだったとくすぶる批判

「国の事務または事業を円滑に遂行するため機動的に使用する経費」。表向きはそう説明されている官房機密費の正式名称は、「内閣官房報償費」である。本誌読者ならご存じかもしれないが、時の官房長官の判断で支出され、ここ数年の規模は年間約一四億円。使途に関する記録を残す必要はなく、会計検査院のチェックも及ばない。

 本来は国内外での極秘の情報収集や、海外で日本人が巻き込まれた事件の水面下交渉などに使うのが主な目的と位置づけられているものの、自民党政権下では国会対策やメディア対策のために幅広くバラまかれてきたのは周知の事実となりつつある。

 特に小渕恵三政権下の一九九八年七月から翌九九年一〇月まで官房副長官を務めた野中広務氏が最近、幾人かの政治評論家に一〇〇万円単位の機密費を配っていたと暴露し、大きな波紋を呼び起こした。この問題は本誌五月一四日号の本欄でも詳述しているが、野中氏は具体的な政治評論家の名を明かさなかったものの、過去には著名評論家の実名を列挙した官邸秘密文書が流出したこともあり、新聞やテレビといった大手メディアの政治記者も官房機密費の”恩恵”を被っていたのではないか、という疑惑が拡散している。

 そして、この官房機密費を影山解説副委員長も受け取っていたのではないか、という噂がNHK内部で駆け巡っているのだという。前出のNHK中堅幹部が言う。

「政権交代を間近に控えていた二年ほど前から影山さんが官房機密費を受け取っていたのではないか、と言われているんです。与野党の有力政治家を招く『日曜討論』での影山さんの司会ぶりは、どう考えても自民党側に偏っていたし、政権交代直前の『日曜討論』は酷かったという声は当時から局内に燻っている。ところが民主党政権が発足し、この事実が週刊誌などで報じられるような事態になれば深刻な打撃を受けると恐れをなしたNHK経営陣が、健康問題を理由として影山さんに退職を迫っていた、と噂されています」

 別のNHK報道局記者もこう打ち明ける。

「もちろん事実は定かではありませんが、影山さんは受け取った機密費で私腹を肥やしていたわけではなく、局上層部に”上納”していた、とも囁かれています。しかし、記者一本で生きてきた影山さんにとって、NHKを追われるのは死に等しい。だから、思い悩んだ末に”最後の抵抗”として局内で自殺を図ったのではないか、という噂がもっともらしく流れているんです」

     機密費問題の闇に斬り込むのがメディアの責務

 断っておくが、これはあくまでも噂に過ぎず、影山副委員長がNHK局内で自殺を図った真の理由は現時点で謎というしかない。ただ、こうした噂が流布されること自体――それも、当のNHK内部でもっともらしく流布されていること自体に、「公共放送」と位置づけられるNHKと日本の大メディアをめぐる深刻な病が潜んでいるように思える。

 前記した通り、野中広務氏の爆弾証言をきっかけとし、大手メディアの政治部記者たちも「背広代」などの名目で機密費の”恩恵”に浴していたのではないか、との疑惑が一部週刊誌などで伝えられている。また、新党大地の鈴木宗男代表は一部メディアに対し、一九九八年の沖縄県知事選挙に際して与党候補者を当選させるため三億円もの機密費が投入された、とも打ち明けている。

 政権与党が自らに有利な選挙結果を導き出す”実弾”として機密費を使っていたとするならば、信じ難いスキャンダルにほかならないが、新聞やテレビといった大手メディアは機密費の実態解明に乗り出す気配はない。また、メディア記者がどのような形であっても政権の秘密資金である官房機密費などを受け取っていたとするならば、ジャーナリズム組織としての信頼を根本から揺るがす深刻な事態に発展する。

 だとするならば、メディアは自ら積極的に機密費問題の闇へと切り込んでいくべきではないか。そして、万が一にも一部記者が機密費を受け取っていたとするならば、徹底した事実関係の公表と断固とした対応を取らねばならない。逆に機密費など受け取っていないとするなら、濡れ衣を晴らすためにも徹底調査が必要だろう。

 詰まるところ、影山副委員長の自殺理由をめぐって、NHK局内で「機密費授受」をめぐる噂が拡散してしまうのは、当のNHKをはじめとするメディアがそうした作業を怠っていることの証左ともいえるように思えてしまうのだ。

(本誌メディア取材班)

プルサーマル運転の停止を――住民ら九州電力を提訴

提訴にむけ佐賀地裁前で横断幕を掲げる原告や支援者ら。(提供/プルサーマル裁判の会)

「普通の暮らしがしたい!」

 環境権と人格権をかけ、佐賀県東松浦郡玄海町にある九州電力玄海原子力発電所(以下、玄海原発)周辺住民らの闘いが始まった。

 フランスのメロックス社製のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使用し、プルサーマルでの運転を開始した玄海原発三号機の差し止めを求めて九日、周辺住民ら一三〇人が九州電力を提訴した。

 佐賀地裁前には提訴一時間前から支援者ら一〇〇人以上が鹿児島・長崎からも駆けつけ、参加できなかった仲間の切なる思いを書いたプラカードと色とりどりの横断幕を持って立った。三日前には、佐藤雄平福島県知事がプルサーマルの受け入れを表明。原告らに憤りが広がる中での提訴となった。

 提訴後、原告団団長の石丸初美さんが「原発の安全性が一〇〇%でない以上、たとえわずかであれ、私たちは危険性を引き受けたくない。必ず子孫につけがくる。これは、大人の責任として気がついた人が声をあげた裁判」と力強く訴えると、参加者から大きな拍手がおくられ、しばらくの間鳴りやまなかった。

 高レベル放射性廃棄物最終処分場の受け入れを拒否し、“反核” の町長として知られる高知県の澤山保太郎東洋町長は、「良心的な裁判官ならプルサーマルがいかに酷い暴挙かが解るだろう。裁判官を動かすのは世論の力。裁判官も世論の動きを見ている」と述べた。

 第一回口頭弁論は一〇月に行なわれる予定。玄海原発MOX裁判の行方に注目を。

(小林栄子・プルサーマル裁判の会世話人)