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「反菅」で鳩山・小沢グループ結集

鳩山前首相の演説に拍手で応える小沢前幹事長(右端、撮影/横田一)

 一九日、長野・軽井沢で鳩山由紀夫前首相のグループの研修会が開かれた。小沢一郎前幹事長を含む約一五〇人の国会議員が参加し、民主党代表選への小沢氏擁立に向けた決起集会のような様相を呈した。小沢氏の立候補を求める声が次々と上がり、同氏が懇親会会場を後にする時には鳩山前首相の側近中山義活前首相補佐官が「小沢先生をシュプレヒコールで送り出した方が気合が入る」と言い出し、参加者が「気合だ!気合だ!」と連呼。小沢氏が「互いに力を合わせて一生懸命頑張り、国民の期待に応えるようにやりましょう」と応える場面もあった。

 懇親会前の講演会(約一二〇人が参加)でも、鳩山派と小沢派が反菅で結束しようという“予兆” はあった。鳩山氏が講師として招いたのは、普天間基地の辺野古移設反対論者の佐藤優氏。「日本の外交政策について」と題した講演の中で、鳩山政権崩壊の主原因となった普天間問題について鳩山前首相の取り組みを高く評価。「鳩山前首相が抑止力を勉強してわかったと言ったのは、官僚がどういう論理で抑止力を使うのかということがわかったということ」と解説しつつ、「仲間内では沖縄の人たちは『鳩山さんはいい人だ、沖縄のためを思って一生懸命やった』と言っている。沖縄の過重負担を目に見えるようにした鳩山氏の役割は歴史の中で正当に評価されると思う。それをどう発展させていくかが政治家の課題だ」「抑止力を維持しながら海兵隊が沖縄から出ていくシナリオを考えるべき」とも指摘した。

 その一方、辺野古見直しの気配すらない菅政権に対しては「最小不幸社会はできることを着実にやっていくという官僚的発想」「今の民主党は “第二官僚党”のようになっている」などと批判。「官僚対政治家」の権力闘争についても次のように説明した。

「政権交代後、今この瞬間も官僚階級と政治家との権力闘争が続いている」「官僚は『国民は無知蒙昧の有象無象の集団である』と思い、『有象無象から選ばれた無知蒙昧のエキスのような国会議員の言うことを聞いていたら国家は崩壊する』と本気で考えている」「普天間問題は、官僚が決めたことを鳩山前首相が政治主導で変えようとして霞ヶ関が猛反発、包囲網が敷かれて辞任に追い込まれた」

 こんな対立の構図「官僚的な菅政権対官僚が決めたことを変えようとする政治主導派」が浮き彫りになった。佐藤氏の講演は、官僚の傀儡と化したような菅首相を打倒、政治主導を目指すべきと研修会参加者に訴えたようにみえるのだ。

 鳩山派中堅で「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」会長の川内博史衆議院国交委員長も「小沢氏に出馬をしてほしい」と待望論を口にした。川内氏は小沢前幹事長と面談し、「普天間問題は代表選の争点になる」との見方で一致。代表選告示直前の二六日と二七日、議連メンバーや福島みずほ党首ら約二〇人と沖縄を訪問、国外移設派で沖縄知事選への立候補を表明した伊波洋一宜野湾市長や稲嶺進名護市長と面談、辺野古移設を決めた日米共同声明の見直しをアピールする予定だ。なお、この議連の前会長は鳩山氏。国外・県外移設を目指した鳩山氏を引き継ぐ形で会長となった川内氏は、県内移設をこう批判している。「辺野古移設問題は防衛省と外務省の “官僚利権”。米国の威を借りて巨大基地建設を進めることで予算や権益がついてくる」「米国側の資料や米軍関係者への聞き取り調査により、普天間の主力ヘリ部隊を含め、大半の部隊がグアムに移転し、沖縄に残るのは三〇〇〇人程度の一時的な駐留部隊ということが判明。数千億円から一兆円以上かけて辺野古沖に巨大基地を作る必要はない」。

 この沖縄視察には小沢前幹事長の支援を受けた三宅雪子議員や福田衣里子議員、田中美絵子議員らも参加予定。普天間問題が代表選の争点となり、「菅首相は官僚傀儡政権。財務官僚だけでなく、外務・防衛官僚の言いなりでもある」といった見方が広がれば、政治主導に原点回帰するために、小沢氏を擁立しようという動きが加速する可能性は十分にあるだろう。

(横田一・ジャーナリスト)

【緊急掲載】覚せい剤疑惑で問われる芸術と社会への姿勢

 覚せい剤を隠し持っていたとして、現代音楽作曲家で国立音楽大学准教授の夏田昌和さん(42歳)が警視庁池袋署に現行犯逮捕されていたと8月23日、新聞などが一斉に報じた。夏田さんの長年の友人である、伊東乾さんから事件を機に考えるべき事について緊急寄稿いただいた。内容の緊急性から早急に公開したほうが良いと判断し、ネット公開する。(編集部)
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 作曲家・指揮者の夏田昌和君が覚せい剤取締り法違反の容疑で逮捕されたとの報に接し、大変に驚いている。夏田君は20年来の友人であり、私が第1回を受賞した出光音楽賞の第2回受賞者でもある。個人的には、その作品や演奏が常に気になる、同世代の音楽上の仲間と思う数少ない、国際的に第一級の音楽家だ。

 クラシック音楽の世界は、実力不足のまま売り出される若者がすぐに潰れる悪循環を繰り返し易い。そんな中で夏田君は、まごうことなき本物の音楽家で、本来は間違いなく将来を嘱望されるホープの一人である。

 現在東京を離れており、入ってくる情報も限られているため、今回の容疑そのものについては、ここで何も言うことが出来ない。正確な事を知る機会があればまた別にとも思うが、いまここでどうしても述べたいのは、再発防止など少し別の論点である。

     想起したオウム真理教事件

 夏田君の件が報道された8月23日の週には、ウエブなどを通じて知り得ただけでも2回、彼の作品が演奏される機会がある。近い所では、それらへの影響を案じている。音楽会の主催者や演奏団体などが、彼の作品演奏を「自粛」するのではないか、と懸念しているものだ。

 刑事事件にあっては、逮捕された直後はあくまで「容疑者」であって罪科は確定していない。それが決定されるのは裁判の場で、判決以前は「推定無罪」が国際的に現代司法の大前提になる。メディアを通じて断片的に報道を見る限りでは、事の真偽はまったく分からない。少なくとも一個人としては、友人の事であり、何かの間違いであってほしい、冤罪の可能性はないのか、といった考えに意識が向かう。

 これは15年前、オウム真理教・地下鉄サリン事件ののち、大学・大学院の同級生、豊田亨君(2009年11月死刑確定)が身柄を拘束された直後にも、祈るような気持ちで思った。正直、間違いであってほしい。8月23日の朝もそれと同じような意識が脳裏をよぎった。 

 この前夏田君と言葉を交わしたのは半年ほど前、とある演奏会で彼の邦楽器のための作品が初演された折だった。独自の調律に基づく静謐な、そして図抜けて秀逸な音楽が今も耳に残っている。

 彼の作品は客観的に見て高い価値を持つ。また裁判によって容疑事実が確定するまでは、被疑者は被疑者であって罪科は決まっていない。そういう状況の中、予定されている作品演奏に影響が出るような事を私は憂慮する。いま演奏が予定されているものの中には、オーケストラのような大編成の作品もあると聞く。奏者たちは数週間~数日前からパート譜をさらって、練習初日に備えている。音楽作品の演奏というプロフェッショナルの仕事として、きちんとした準備がなされている筈だ。そして何より重要なことは、音楽作品の価値と刑事事件の容疑とは、基本的に別の話だという事実だ。

     芸術と社会的責任

 ある演奏会で一つの作曲作品の演奏を決定する上で本質的に重要なのは、作品自体の音楽的な価値である筈だし、そうでなければならない。いま取り沙汰されているような容疑は、本質的に音楽の内容とは一切関係がない。少なくとも私が知る限り、鋭敏な耳と感覚、それに精緻な思考で組み立てられた夏田君の音楽には、薬物がどうこう、といったゴシップで左右される要素はほとんど存在しない。

 主催者が、芸術の観点からこの作品に演奏の価値がある、と判断したのであれば、そしてその判断に責任を負うのであれば、あくまで彼の作品をきちんと演奏するべきだと私は思う。容疑者として逮捕された、騒ぎになった、それでは自粛しよう、といった正体不明の状況は一番いけないと私は考える。

 今週、夏田君はある音楽賞の審査員も務める事になっていたと聞く。当日はピンチヒッターが出るのだろうが、すでに印刷物なども準備されている筈だし、場内のすべての人が、この事件を考えない訳がない。ここで、中途半端にゴシップとして考えるのではなく、それこそ真摯に正面から考えなければならない問題がある筈だ。

 もし、亡くなった作曲家の武満徹さんがここに居られて、芸術監督として自分の責任で彼の作品演奏を決定していたなら、容疑者としての身柄の拘束とは別の問題として、自分の芸術的判断への責任を全うするだろうと私は思う。というよりも、社会的に取り沙汰される事柄と音楽との間に、きっちりと線を引くことこそ、芸術監督者にもっとも強く求めら得る仕事だというべきだろう。

 ここはむしろ関係者全員が芸術への姿勢を問われていると考えるべきだ。少なくとも本人を知る私としては、正直言って報道を見ただけで、ああそうですか、と信じる気には到底なれない。仮にそれが事実であったなら、本当に残念でならない。

 一般に芸術的な判断は客観化は難しく、それが嵩じてつまらない権威主義などの風潮を生みやすい。そんな中にあって夏田君は自他ともに実力を認める紛れもない真打ちの音楽家で、また理論家としても淀みなく、国際的な場でも価値判断の根拠を明確に語ることが出来る稀有な芸術人の一人と思う。重ねて、もし容疑内容が事実であるとするならば、これほど無念なことはない。

     「再発防止」に真剣な取り組みを!

 報道にもある通り、夏田君は優れた作曲家=指揮者であるとともに国立音楽大学准教授として後進の指導にも責任を負っている。友人であると同時に、まさに筆者自身と完全に重なる専門であり、大学教員という現在の立場も正に同じであることからも真剣に考えない訳に行かない。

 もし、報道されるような容疑が事実であれば、到底許される事ではない。何よりも、大学教員として若い未来ある人たちを指導する立場にある身である。国立音楽大学当局も、学内での薬物使用の有無などについて「警察の捜査の進展を見極めた上、必要であれば調査委員会の設置も検討する」との事だが、庄野進・同大学長以下長年存じ上げる方が少なくなく、心中いかばかりかとお察しして言葉もない。教育組織としてこのような事態の再発防止に、徹底して取り組まれることと思う。

 容疑者が大学教授職ということで、すでにネット上などではさまざまな憶測、流言飛語がとび交っているようだ。夏田君には過不足ない事実を明らかにし、もし事実であるのなら、このような「あってはならないこと」の再発防止に夏田君自身がきちんと向き合う必要があると思う。

 と同時に、夏田君という音楽家が如何に稀有な才能であるか知る一人として、この優れた人物のこれからを私は何よりも惜しむ。さまざまな動きがあると想像されるが、作曲家として指揮者として、夏田昌和は二人いない。彼が自身の足で再び立ち、歩み始める日を待ちながら、関係各位の定見ある判断と、建設的な行動とりわけ再発防止への取り組みに期待したい。問われているのは、芸術と社会の未来に対する姿勢であり、責任を意識した行動であると思う。

(伊東乾・作曲家=指揮者、東京大学准教授)

エイベックス松浦社長が訴えた人気ブロガー山本一郎氏の発言

  エイベックス・グループ・ホールディングス(株)と同社の松浦勝人社長が人気ブロガーの山本一郎氏に対して『日経新聞』朝刊への謝罪広告掲載、同社と松浦氏へ損害賠償五〇万円ずつの支払いを求めた訴訟の第一回口頭弁論が七月二二日、東京地裁で開かれた。

 NHKが放送記念日の三月二二日に放映したメディア特番に対し、ネット・メディア界の有名人がツッコミを入れるという番組が「ニコニコ動画」と「ユーストリーム」で配信された。出演者は、津田大介、堀江貴文、上杉隆、小飼弾、山本の各氏。そして飛び入りでニワンゴ会長の川上量生氏が参加した。これを偶然視聴していた松浦氏が、放送中に知人である川上氏の携帯に電話したところ、電話越しに山本氏が「シャブ野郎」と連呼したのだ。

 事態はツイッター上に飛び火。松浦氏が「面識もないのにいきなり『しゃ“◯野郎』はひどいなあぁ。完璧、名誉毀損成立かなぁ……」「あれは、うちの法務と広報に任せて僕たちは……普通にしてましょ」とつぶやくと、山本氏が謝罪の言葉をつぶやいた。

 そして約四カ月後、“つぶやき” は”弁論” となった。約一万人のユーザーが視聴するなか毀損された名誉に対し損害賠償せよ、というのがその主張だ。

 エイベックスと薬と言えば、同事務所に所属していた押尾学被告の事件が記憶に新しい。事件では、元社員のマネージャーも逮捕されている。また松浦氏本人にも薬疑惑が囁かれたことがあり、五年ほど前には右翼が街宣をかけたこともあった。これを踏まえ山本氏も、「世の評価を口にしたまで。ましてや会社については何も触れてはいない。飲酒が前提の放送で、泥酔して不適切な発言をしてしまったが、ツイッターで謝意は伝わっているはず」と、当惑の色を隠さない。「根拠のない疑惑」という同社の主張からは、薬に敏感になっている様子が窺える。

 同社は、昨期連結決算で営業利益約一四%減。本業のCDの売り上げが不調だが、松浦氏の役員報酬は二億四九〇〇万円と、大盤振る舞い。自らのブログでの謝罪を和解案として提示する山本氏に対し、どう出るかが注目される。

(横関寿寛・ジャーナリスト)

自衛隊内性的暴行事件で勝訴――女性自衛官への性暴力認める

「勝訴判決」に支援者らは歓喜した。(提供/女性自衛官人権裁判支援の会)

 七月二九日午後、札幌地裁大法廷は、原告の好きなオレンジ色を身につけた人々で満席になり、法廷の外は中に入りきれない人であふれていた。現職自衛官が提訴した性暴力に関する国家賠償請求事件に対する橋詰均裁判長の判断を聞こうとする人たちだった。

 判決は、深夜勤務時間内に飲酒の上に起こした性暴力を「合意の上のこと」とする加害者の主張は「信用できない」、「階級の上下関係を利用し、周囲から隔絶された部屋で女性の抵抗を抑圧した」と認定。事件後、普段と違う原告の行動を不審に思い、話を聞いた上司らの対応については、被害を受けた側に立った適切な保護・援助の措置を取らなかったこと、それどころか被害を訴えた原告を退職に追い込もうとしたことを違法な処遇と明確に判断した。

 加害者の性暴力に対する損害賠償を二〇〇万円、監督者として義務を尽くさなかった上司らの過ちに対する慰謝料を三〇〇万円と認定(八〇万円は弁護士費用)した。

 判決は、被害者の供述の一部に変遷や不合理と思われる点があっても、「性的暴行の被害を思い出すことへの心理的抵抗が極めて強いこと」「共感をもって注意深く言い分に耳を傾けないと、客観的事実と異なる説明や最も恥ずかしいと思っている事実を伏せた説明をしてしまうことはままある」「原告への対応は、もっぱら男性上司や男性警務隊員によって行なわれており、原告が性的暴行を冷静に思い出したり、記憶を言葉で説明することができなかった可能性が高い」と指摘。また、自衛隊組織の特性を「隊内の規律統制維持のため隊員相互間の序列が一般社会とは比較にならないほど厳格で、上命下服の意識が徹底した組織」だとして、原告が「上位者である加害者に逆らうことができない心境に陥ることが不自然ではない」とした。

 また、職場には、(1)被害者が心身の被害を回復できるよう配慮すべき義務(被害配慮義務)、(2)加害行為によって当事者の勤務環境が不快となる状態を改善する義務(環境調整義務)、(3)被害を訴える側がしばしば職場の厄介者として疎んじられさまざまな不利益を受けることがあるので、そのような不利益の発生を防止すべき義務(不利益防止義務)を負う、と事後の配慮義務について積極的かつ具体的な判断基準を示して、それに対する違反があったと認定した。

 慰謝料を被害事実とその後の対応に分けて判断し、しかも後者により多くの金額を認めた判決は、性暴力被害の実態が事件そのものにとどまらず、その後の対応がさらに重大な問題を引き起こすことや所属する組織の責任の重大さを示しており、賠償水準の引き上げにもつながる画期的判断となった。

 勝訴を確信し「絶対泣かない」と言っていた原告だったが、途中から嗚咽をこらえきれず、涙は傍聴席にも伝播し、閉廷後、大きな拍手が鳴りやまなかった。

 航空自衛隊通信基地という一般社会から隔絶した一八〇人のコミュニティ。その内、女性はたった五人、しかも二〇歳(当時)の原告が最年長という集団内部で起こされた事件だった。

 在職のまま裁判を起こし、その後前代未聞の更新拒否により退職を余儀なくされた二四歳の原告は、報告会で「素晴らしい判決でとても嬉しい。未だ誰も歩いたことのない道を歩くのは大変なことです。立ち止まりそうになった時には、ここにいる弁護団や支援する会を始め、多くの人たちがいたからこそ、今日の判決を迎えることができました。自衛隊においても人権が保障される方向に大きく変わってほしいと願っています。私を支えてくれた人たちに最上級の感謝を伝えたいと思います」と話した。

「裁判官は現場に足を運び、原告の気持ちになって事件を想像し、血の通った判断をしてくれた。司法に、まだ正義と希望があったと感じた」とは、代理人の一人、秀嶋ゆかり弁護士の言葉。

 支援者たちは、国側が控訴しないよう、菅直人総理大臣、北澤俊美防衛大臣、千葉景子法務大臣に対し、八月一二日の控訴期限までに多くの人たちが働きかけることを求めている。

(丹羽雅代・アジア女性資料センター)

※編集部注)国側は控訴を断念、8月12日に判決が確定した。

鈴木邦男、梁石日、佐高信らが“乱闘寸前”トークバトル!

 のちに”慰安婦”となる朝鮮人女性の波乱に満ちた生涯を描いた梁石日さんの小説『めぐりくる春』の刊行を記念したトークイベント「フィクションで表現する『慰安婦』の真実」が6日、東京都・阿佐ヶ谷の「阿佐ヶ谷ロフト」で行なわれた。

 出演は作者の梁さんをはじめ、『戦場の「慰安婦」』などの著者がある西野瑠美子さん(VAWW-NETジャパン共同代表)、鈴木邦男さん(「一水会」顧問)、朴慶南さん(作家)。司会は佐高信・『週刊金曜日』編集委員(評論家)がつとめた。

 メディアでは「タブー」の存在であり続ける”慰安婦”。その”慰安婦”をベストセラー作家・梁石日さんが正面から題材にした小説とあって関心も高く、約50人がつめかけた。

 まず鈴木さんが「衝撃を受けました。梁さんは男性なのに、よく主人公・淳花をはじめ”慰安婦”たちの心理が描けるな、と。”慰安婦”についての証言集はほかにも出ているけれども、この小説の方がリアリティがある。梁さんの文章のうまさで一気に読ませる。すばらしい小説です」と絶賛。

 しかし、西野さん、朴さんが小説の大半を占める過激な性描写について「抵抗感は否定できない」と発言したことで、鈴木さん、会場も含め、議論は白熱。「そこを作者の梁さんは『あえて』踏み込んだはず。その勇気を評価すべきで、否定的に言うのはおかしいのでは」(鈴木さん)など、反発する意見も出た。

 西野さん、朴さんは「そこは誤解。会場の方にも私たちの言う『抵抗感』のニュアンスがうまく伝わっていない」として、「主人公たちが『もし私だったら』という気持ちでずっと読んだ。他人事と思っては読めなかった、ということです。感情移入してつらかった。その意味での抵抗感」(朴さん)、「梁さんだから書けた小説。表現されたことに対する抵抗感ではない。慰安婦に何がなされたのか。梁さんの小説にその生々しさを感じたからこその怒り、つまり抵抗感です」(西野)と反論。”慰安婦”問題をどう考えるかの難しさを浮き彫りにする、白熱の議論となった。

 作者の梁さんは、「私は男ですから、男性の目線で書かれた小説であることは事実。どなたか女性がこの小説を書ければよかったのですが(笑)。西野さん、朴さんの指摘は謙虚にうけとめたい。ただ、現場で日本軍兵士と『性具』にされた”慰安婦”の間で何が起きていたのか。その描写は徹底して『具体的』に書かないとだめなんです。読者には『抵抗感』はあるでしょう。でも、小説は、そこまでやるべきなんです」と話した。

 なお、このイベントは「ニコニコ生放送」でネット中継され、約9000人が視聴し、5万件を超える書き込みが寄せられた。しかし、大半は「証拠を出せ!」「おまえらこそ恥だ!」など、”慰安婦”の存在自体を否定するもの。司会の佐高『週刊金曜日』編集委員は、「この人たちには『見たくないものを見る強靱さ』がないのではないか」と切り捨てた。

(『週刊金曜日』編集部)

熊本県が水俣病認定棄却の女性、大阪地裁が認定を命じる

環境省の椎葉・特殊疾病対策室長(右)に要望書を渡す田中弁護士。(撮影/奥田みのり)

 大阪地方裁判所は一六日、熊本県が水俣病だと認定しなかった原告女性について、国の水俣病の基準(一九七七年判断条件)には医学的な証拠がないとし、女性を水俣病と認定するよう命じた。原告の代理人である田中泰雄弁護士らは二〇日、環境省に、判断条件の見直しと、控訴の断念を申し入れたが二二日、熊本県は控訴した。

 判決は、七七年判断条件の複数の病状の組み合わせを否定し、四肢末端の感覚障害のみでも水俣病であることを認める内容。現行の基準では認定されない人を対象に、特措法による未認定患者の救済を進めている環境省にとって、判決は大きな打撃だ。基準が見直されれば、特措法より補償の手厚い認定申請に人が流れ、計画通りに救済が進まない可能性があるからだ。

 二〇日、国と県は、代理人との話し合いを午後に控えるなか、控訴の意向を午前中に発表した。田中弁護士らに控訴の理由や、国の基準が否定されたことについて意見を求められると、椎葉茂樹・特殊疾病対策室長は、「これまでの上級審の判断と異なるため」と何度も繰り返した。急いで控訴を決めたことについては、「(特措法による)救済を進めてほしいという声もあり、そうした人に安心してもらえるよう、早く控訴を決定した」と説明した。

 申し入れに同行した支援者からは、鳩山由紀夫前首相が五月に国の責任を謝罪した姿勢からすれば、控訴は理解しがたいという意見があった。

 裁判で、国・県・チッソの責任を係争中の水俣病被害者互助会の事務局・谷洋一氏は、「本来なら政権が変わった今こそ、幅広い救済を認めるよう環境省を変えるチャンスだった。控訴は、怒りを通りこして残念としかいいようがない」と環境省の姿勢を振返った。

(奥田みのり・ライター)

新「ゆうパック」大遅配で、検証なし「正常化宣言」に“怒”の声

 郵便事業会社(鍋倉真一社長)は一五日、新「ゆうパック」の遅配が収束したという「正常化宣言」を出した。同時に遅配の原因を次のように述べた。「現在 検証を行なっているところですが、本社を始め全体として準備が不充分な面があった」。しかし、会社はいまだに検証結果を明らかにしてはいない。

 しかし、これを額面通り受け取る郵政関係者は少ない。都内の統括支店の社員は「(遅配収束は)単にゆうパックが少なくなったにすぎない。お中元のピークがすぎたことと相次ぐ遅配で客離れが起きているからだ。年末繁忙になると同じことが起きかねない」と不安を募らせる。

 「ペリカン便」を「ゆうパック」に吸収・統合した“ゆうパック維新” は華々しくスタートするはずであった。ところが三五万個におよぶ膨大な数の遅配を生み出し、苦情が日本列島を駆け巡った。

 労働現場はパニック状態を引き起こした。全国の統括支店・ターミナルではトラックが構内に入れず、道路をふさぐ。荷物を降ろそうにも処理施設は狭く、人員も足りない。見る見るうちに荷物は山積みとなり、どこから手をつけていいのか、茫然自失の状態だったという。

 管理者は「早くやれ」と尻をたたくだけ。集配支店には通常の三倍もの数日遅れの荷物が到着する。 だが、保冷容器、端末機、車両がなく、配達の しようがない。滞留が続く。現場労働者は休日返上、長時間労働が当たり前、休憩・休息はおろか食事をとるヒマもなく区分・配達作業に追い立てられた。

 「ペリカン便」の吸収によって一日あたりの荷物量が一・七倍に増加すると郵便事業会社は想定していた。「ゆうパック」と「ペリカン便」を併せた 統括支店は一二三拠点だったはずが、統括支店はわずか一拠点多いだけの七〇拠点(五三カ所が一挙に削減された)。労働者の数もわずかに増やしたにすぎず、 むしろ熟練労働者は減らされていた。

 またJPエクスプレス(ペリカン便)から移ってきた契約社員は最低賃金すれすれの時給七五〇円。委託者は委託料を半減され、朝早くから夜遅くまで酷使されている。辞めていかざるをえないのだ。

 彼らは「やっている価値がない」「収入は激減した」と憤っている。しかもコスト削減のために「ゆうパック」と「ペリカン便」の物流システムを並 存させ、おざなりな研修は、現場の混乱に拍車をかけた。こうした会社のコスト削減・効率最優先が、かつてない大遅配をもたらした最大の要因だ。

 そもそも、お中元商戦の最繁忙期に統合すれば、大混乱が生じることは誰の目にも明らかだ。にもかかわらず、日本郵政・事業会社はこれを強行。 会社は「放っておけば毎月六〇億円の赤字」を挽回するために、お中元商品の受注で増収をはかれるとの思惑から、無謀なことを承知で統合を急いだと言われて いる。宅配部門を「早期に単年度黒字化」するどころか、社会的信用を失墜し、皮肉にも赤字を膨らましたといえよう。

 鍋倉社長は遅配したのは労働者の「不慣れ」と責任を転嫁し、連日の炎天下、利用者へのお詫びチラシの全戸配布を行なわせ、顧客を取り戻せとばかりに「ゆうパックをとってこい」との指示を出している。

 JP労組本部は今回の事態の調査・集約すら行なっていない。北海道内の集配支店の社員は「会社も会社なら、組合も組合だ。九〇〇億円の損失を生 んだJPエクスプレス失敗の責任に目をつぶり、そして今回の事態だ。俺たちに責任を押しつけるなんて許せない。会社の言いなりだけの組合も問題だ」と双方 に手厳しい。このように現場労働者が怒るのは当然ではなかろうか。

(三浦芳則・「郵政労働者のいのちと健康を守る人権ネット」代表)

朝日労組の”提言”に真価が問われる新聞労連(その2)

『朝日新聞』の組合員(社員)は、新自由主義と親和性が高いと言われているが……。(撮影/伊田浩之)

     エリート新聞と新自由主義との親和性

 今村・朝日新聞労組委員長は、次のように説明する。「提言だけを読むと誤解されるかもしれませんが、新聞労連の特化された議論の場に出すので、言わずもがなのことは触れませんでした。働く人を守ることも、新聞への信頼を回復し高めるための新研活動も、その重要性は当然共有されていると思っています。
新聞が持つ公共性・公益性をきちんと主張するためには、第三者的、専門的に分析していただくシンクタンクが必要だと思います。連合との距離感覚については取材と同じで、近づいても取り込まれないようにしなければならない。取り込まれれば記者失格です。いままで、同じ労働組合組織なのに、あまりにも遠すぎ、新聞業界のことが理解されていないのではないかという主張です」

 今村委員長の説明を聞きながら、提言が”善意”から出ていることは理解できた。では、なぜ前出のように新聞労連主流の考え方との距離はなぜ生じるのか。くだけた雰囲気になったとき、私は今井委員長におおよそ次のような話をした。

「『朝日新聞』の組合員(社員)は、新自由主義と親和性が高い人が多いのではないかと思っています。なぜかというと、子どものころから頑張って勉強して良い高校・良い大学に入り、賃金の高い大新聞社で働いている。自分は頑張ったから賃金が高くてもいいと無意識にせよ感じていると、仕事がない人は頑張らなかった人たちだという”自己責任論”に陥ってしまうのではないか。提言にしても、困っている仲間を助け合おうという連帯意識が薄れがちで、新聞産業をいかに守るかという視点に流れてしまうのではないでしょうか」

 朝日新聞労組内では事実、組合収入が先細りを続けるなかで、単組の活動費を上回るほどの新聞労連費を払っていながら「労連に加盟している意義が見えない」との不満が強まっているという。

     根本的な改革論議は今後へ繰り越し

 そもそもの発端は、新聞労連の豊秀一・中央執行委員長(当時)が昨年一二月一〇日に諮問機関「組織・財政問題検討委員会」を設置したことだった。議論のなかで、朝日新聞労組が今年四月二一日、提言を出した。提言には以前から朝日新聞労組が主張していた内容が含まれているという。同委員会は七月二一日、答申を豊委員長に提出した。

 答申では、朝日新聞労組の提言は一部採用された点もあるが、大枠として〈十分な議論ができなかった〉とした。提言後の委員会開催は二回だけだったので、時間不足は当然だったかもしれない。繰り返しになるが、新聞労連主流との距離感も影響したかもしれない。

 新聞労連の中央執行委員を務める今村・朝日新聞労組委員長は、答申後の拡大中央執行委員会で次のように補足コメントを述べた。

「朝日労組としては一定議論がまとまった段階で出しましたが、当然、今後の議論の展開で、学ぶべき点は学び、取り入れるべき点は取り入れていくことは当然です。『四月二一日提言』から一歩も譲らぬとするものではありません。朝日労組は、今後の労連改革の議論の中でも、この提言を土台に話をしていくことになるでしょうが(中略)、自由闊達な議論の上で、様々な可能性が広がり、提言が柔軟にいかされていくことを期待します」

「ナショナルセンターとの関係再考は、『連合だけ』を望んでいるものではありません。(中略)ただし、繰り返しますが、関係を構築する団体の中では、『連合を重視して欲しい』といういことが提言で申し上げている重要な点です」

 提言と比べて柔らかな物腰に驚くが、今後について新聞労連の藤本勝也書記長は「答申を受けてどういった行動をとるかについては、今後議論を深めてゆきます」と話している。

 購読部数や広告収入の減少から、危機感が高まる新聞業界だが、労働組合こそその原点に基づいた議論を深めてほしいと思っている。

(伊田浩之・編集部)

朝日労組の”提言”に真価が問われる新聞労連(その1)

    連合への”ロビー活動”を勧める!?

 朝日新聞労組(今村建二委員長)が、日本新聞労働組合連合(豊秀一委員長、八六組合=新聞労連)に”改革”を提言し(以下、提言)、波紋を拡げている。ある新聞労連の関係者は「労連主流の考えと距離がありますし、詰問調の文章が反発を広げています。脱退をほのめかした”脅し”のようにも読めますからね」と話す。

 たしかに提言は、〈構造的危機に、労連が十分に対応し切れているかというと、残念ながら懐疑的にならざるを得ない〉〈今回の改革提言こそ、しっかりと実行に移していただかなければ、朝日労組内での労連への批判は抑えがたいものになる。そういった危機感を背景に提言していることをご理解の上、いずれも実行に移していただけると期待したい〉と指摘している。

 提言は三項目に分かれており、もっとも刺激的だったのは最初の項目だという。ここでは〈連合と産業政策を巡る意見交換の場を定期的に設け、新聞産業を守る有効な施策の実行を、労働界全体を巻き込む形で、世の中に訴えかける〉〈新聞労連自前のシンクタンクを立ち上げ、新聞産業を守る有効かつ具体的な施策の立案、提言をする〉としている。

 一読して「新聞産業で働く仲間を守る」ではなく、〈新聞産業を守る〉という経営者的視点が気になる。理由部分の要約はこうだ。「消費税増税、再販見直し、特殊指定見直しの政策が実行されると、新聞産業を取り巻く環境は一気に悪化するので、政策決定過程に携わる者への働きかけが重要になる。主要各政党の幹部とメディア政策担当者、各種団体との意見交換、協議は欠かせない。中でも、民主党の政策決定過程に大きな影響を及ぼす連合とは、定期的かつ計画的に協議を重ねていく場を設けることが必要」(全文は『週刊金曜日』ホームページ掲載)。これは、”ロビー活動”の勧めではないか。

 また、シンクタンクの必要性については要約、「新聞労連の取り組みでは新聞産業を守る抜本的提言のための分析、新聞産業の課題の検証、研究が出来ているとは言い難い。中堅・若手の研究者に一定の助成金を出し、本腰を入れて取り組んでもらった方が、より具体的な方向性が見出せるとともに、新聞産業を守る『応援団』の育成にもつながる」(同)としている。

 上智大学新聞学科の田島泰彦教授はこう指摘する。
「新聞業界のいまの苦境は、権力との癒着や硬直化した記者クラブ制度、押し紙問題など新聞経営者側の要因で読者の信頼を失った面があり、調査報道の復権など組合の立場からジャーナリズムのあり方をどう考えるかが問われています。提言にはその視点がなく、企業を残すのが前提に読めます。厳しい言い方ですが、(連合など)権力への影響力を強め、分け前を確保する発想にもみえます。
 民放労連が中心となったシンクタンク『メディア総研』は、私もメンバーですが、市民の立場にたったメディア、ジャーナリズムの研究とその普及を目指すのが目的で、目的のために放送のあり方に言及することはありますが、業界を守ることが目的ではありません」〈その2に続く〉

(伊田浩之・編集部)