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「政治解決」を受け国労闘争団合宿開催

 一九八七年のJR発足時に組合差別で不採用となった国労組合員を原告とする四つの裁判の原告団は四月一二日、正式に政府の解決案を受け入れた。この「解決」では、約二〇〇億円の和解金・訴訟費用・団体加算金の支払いが約束されたが、最も重要視してきた「雇用」については未解決であり、「政府が努力する」にとどまっている。
 そこで現段階の認識を共有し、今後の闘いについて確認するために六月一二日~一三日、国労の原告団北海道協議会は約一〇〇人を集め音威子府で合宿を開催した。
 国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長は「雇用が獲得できていない現状は道半ばの五〇点」としながらも、「いまの政治状況では一定の成果だ」と総括。加藤晋介主任弁護人は、「企画・中曽根康弘+監督・瀬島龍三による{総評と国労皆殺し}のシナリオに対抗し金字塔を打ち立てたとはいえないが、瀕死の状況から反撃に転じ最後に一矢報いた闘いだった」と振り返った。
 家族会からは「最終解決後はこの貴重な経験を生かし、少しでもみなさんに返していきたいとおもっています。そのためにも、もう少しだけみなさんのお力添えをお願いします」との訴えがあった。
 残る「雇用」についてJR各社は渋っているが、JRが旧国鉄を引き継いだ会社であることは明白だ。道義的立場からも採用要請に積極的に応えるべきだろう。

(糟谷廣一郎・本誌総合企画室)

元海兵隊員が語った本音 「沖縄は自分たちが分捕ったという意識」

 普天間基地代替施設への反対運動を一四年間続けている地元住民団体・ヘリ基地いらない二見以北一〇区の会は一七日、「元海兵隊員がホンネで語る」講演会を開催した。名護市二見以北一〇区は米海兵隊キャンプ・シュワブに隣接し、実弾演習の機関銃音が日常的に聞こえ、実戦さながらの装備を施した米軍車両が往き来する。基地のフェンス向こう側の素顔を知りたいと、日本人で初めて米海兵隊に入隊し、四年間勤務した高梨公利さんを迎え、八〇人余の住民と一問一答で話した。
 広島市出身で被爆三世でもある高梨さんは、米国を見返してやりたい思いから、日本国籍のまま米国の永住権を取り二三歳で入隊したという。陸上自衛隊で二年間勤務したこともある彼は、日本の自衛隊と米海兵隊との違いを「アマとプロ」と表現した。「海兵隊の新兵訓練は、上官の命令に機械的に従う人間を作るもの。自分の意思を持つことは許されない」。
 一九九五年、高梨さんはキャンプ・シュワブに半年間配属された。それは、米海兵隊員による少女暴行事件が起こり、米軍基地に反対する沖縄の島ぐるみ闘争が展開された頃だ。他の隊員の受け止め方は「多くの事件の一つ」でしかなかったが、高梨さんは怒りに震えた。「歓迎されていると思い込んでいる兵隊に、嫌われていることを解らせないといけない」「沖縄に海兵隊がいるのは戦略的な理由ではなく、沖縄は自分たちが分捕った島だという意識と、日本政府の思いやり予算ゆえだ」と彼は語った。高梨さんは一四日から一七日、県内四大学と沖縄市でも講演した。

(浦島悦子・フリーライター)

「断固上映を」劇場関係者駆けつけ 映画『ザ・コーヴ』シンポ開催

「朝八時頃、私はまだ寝ていましたが玄関をどんどんと叩く音がするんです。起きた時にはすでに家中が囲まれている状態でした」 
 映画『ザ・コーヴ』の配給元であるアンプラグド社の加藤武史社長は、自宅に右派系団体が押し寄せてきた時のことをこう話す。
 二一日、東京弁護士会館で行なわれた映画『ザ・コーヴ』シンポジウム(主催・東京弁護士会、第二東京弁護士会)には、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、崔洋一氏(映画監督)、石坂啓氏(漫画家、本誌編集委員)などに加え映画『靖国』の時にも上映を取りやめず、今回も「断固上映」を訴える劇場関係者が駆けつけた。
 加藤氏が「個人の自宅にまで押しかけ抗議行動することが {表現の自由} の範疇に収まるのか疑問」と投げかけると、飛び入りで参加した鈴木邦男氏(作家、一水会顧問)は「自宅にまで押しかけることは街宣の域を出ている。テロだ」と喝破した。
 一方、田原氏は映画について「不愉快な映画。でも面白い」と感想を述べ、さらに「こういうシンポジウムに右翼を呼んで討論がしたい。彼らも表現の場がほしい」と右派系団体の抗議行動にも一定の理解を示した。
 しかし、名古屋シネマテークの平野勇治氏は「地方に行けば非常に少ない人数のスタッフで運営している。ちょっとしたトラブルで上映中の映画に悪影響が出る」と地方劇場のおかれた窮状を訴えた。鈴木氏も「弱い者いじめだ。そういう映画館に対して頑張ってくださいというのは無責任。私たちが直接映画館に行って彼らを守るべき」と声を荒らげた。
 映画の内容について「事実に反する箇所がある」との質問に崔氏は「映画なんてそもそも嘘っぱち。正確さを求めるなら黒澤明も批判しなければならなくなる」とした一方で「西洋人のしぶとさが出ている」と作り手側にある側面にも言及した。
 他にも「私たちの仕事は見る側に判断を委ねるもの」(神谷雅子・京都シネマ代表)、「恐怖感もあるが、スタッフが『靖国』の時の経験を活かして、冷静な対応をしている」(長澤純・フォーラムネットワーク)などの意見も出た。

(野中大樹・編集部)

選挙入場券の世帯一括送付に反対 「有権者一人ひとりに」仙台市に要望

 宮城県仙台市では、七月に行なわれる第二二回参議院議員選挙から入場券(投票について日時や場所を示す案内はがき)の送付形式を、これまでの有権者一人ひとりに対しハガキで入場券を郵送する方式から、圧着式封書により、世帯主あてに世帯分をまとめて送付する方式に変更することを決定した。
 これに対し六月一一日、市内のNPO法人「イコールネット仙台」、「リプロネットみやぎ」など三〇団体が、従来通り入場券を個人ごとに送付することを求め、「参議院議員選挙 投票所入場券の配付方法について要望書」を市選挙管理委員会委員長宛に提出した。
 次回選挙の入場券送付方法の変更を明らかにした六月一日付の仙台市広報によれば、圧着式の封書を開くと中に世帯内の有権者の入場券が印刷されており、それを一人分ずつ切り離して入場券にすると説明している。
 入場券送付方式の変更について、市民団体などからは、①個人の人権としての参政権の保障という点で、世帯主とそうでない人との差別が生じることになる、②「個」を基本とする男女共同参画社会基本法の理念をはずれるものである、などの声があがっている。
 要望に対し、仙台市選挙管理委員会は、
「二〇〇九年一二月に総務省から事務連絡があった。世帯ごとの配付は国が行財政刷新会議で決めたとの方針であるし、他の政令指定都市の多くは世帯での送付をしている。世帯ごとの郵送によって仙台市は九〇〇万円の経費節減が認められる。(今回についてはシステム変更で一〇〇〇万円ほど費用がかかったので、経費節減については次回以降となる)また、仙台市では早い段階で国民投票用のコンピュータシステムへの変更作業を行ない、選挙人名簿についても同様に変更をしたので他政令指定都市よりも世帯単位への移行を早めに行なうことができた」
 と、当初は変更についてはしかたがないという対応だった。
 世帯単位の一括送付となった場合、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者などが家から出ている時、従来の個人宛ならば一人だけ転送可能だったものが、世帯ごとでは、一部だけ転送することができなくなる。
 さらに世帯主宛では世帯主が開封するまでは他の世帯員が入場券を受け取ることが困難になる可能性がある。また、「二〇歳を迎えた有権者が、初めて自分宛に個別の入場券が届くことによって、自分が大人になったことを自覚し、投票につながった」との例もあるなど、世帯主一括送付についての問題はさまざまだ。
 そもそも昨年一二月に総務省からの通達が来た時点で、入場券を受け取る市民や関係する市の部局に変更の是非について問うことをしなかったのは問題である。仙台市には、参政権という個人の持つ権利を尊重する市としての姿勢を示すことを要望する。
 最後に仙台市選挙管理事務局長からは「世帯でくくることに対して想定外の指摘、たとえばDV被害の当事者と通信の秘密の問題などに影響があるのではないかということについてなど、今回は日程が迫っているので間に合わないが、ご意見を聞きながら変えられるところはやっていく。また、入場券がなくても投票できるという広報をしっかりやりたい」との発言があった。
 要望書提出後には、賛同団体のメンバーらによって仙台市市民局・男女共同参画課で要望についての報告がされた。
 六月開催の仙台市議会でも、これまでの個人宛送付にするよう複数の議員が質問をしている。参議院議員選挙公示後、入場券が実際に送付されることになれば、市民から疑問や抗議の声があがることも考えられる。仙台市には早急な対応が求められる。
  なお、全国の政令指定都市では札幌、川崎、京都、広島、北九州、福岡の六都市については個人あてハガキで送付し、それ以外は世帯ごとの送付となっている(二〇一〇年五月現在・仙台市調べ)。

(樋口典子・別姓を考える会)

菅・枝野新体制で臨む参院選 小沢氏が企む9月のシナリオ

「九月に行なわれる民主党の代表選で、小沢さんは逆襲してくるかもしれないな」
 波乱に富んだ第一七四通常国会がようやく閉会したその翌日、民主党のある中堅議員が筆者にこう漏らした。
 二日の鳩山由紀夫前首相の突然の辞任によって、菅直人氏が新代表に選任され、総理大臣として組閣した。小沢氏に代わって党務を仕切る幹事長には枝野幸男氏、首相の補佐役である官房長官には仙谷由人氏が任命された。いずれも「反小沢の急先鋒」として知られている。
 仙谷氏は二〇〇七年一一月の大連立騒動の時、両院議員総会で小沢氏に直接辞任を迫ったことがある。また枝野氏は一九九三年に日本新党から立候補して初当選したものの、小沢氏に近づく細川護煕氏を批判して同党を離党。新党さきがけから民主党に参加して、小沢氏ら自由党が民主党に合流後も政治的に小沢氏と対峙してきた。
「仙谷さんの官房長官就任はまだいい。問題は枝野だ。ヤツが党を牛耳り、次期参院選挙を仕切るなんて許せない」
 こう述べるのは一新会に所属するある議員だが、彼らの枝野氏に対するアレルギーは極めて強いようだ。それは枝野氏が両院議員総会で幹事長に指名された時に、一新会所属の議員たちからの拍手が皆無だったという事実からもうかがえる。
 幹事長辞任以来、小沢氏自身は表舞台から姿を隠している。枝野氏から求められた新旧幹事長の引き継ぎもわずか三分ですませ、後は「悠々自適の生活を送っている」という情報がある。
「小沢さんは釣りが好きだ。きっと別荘のある勝浦あたりで、船を出して楽しんでいるのではないかと思う」
 そう話すのは小沢氏に近い民主党関係者だ。実際、小沢氏は一七日には都内のホテルで資金集めのパーティーを開いたが、この時も
「私も一兵卒になった。(菅首相から)『静かにしておれ』と言われているので、静かにしている。参院選では私流にひなびた田舎の山奥や海岸をまわり、支持をいただきたい」
 と、自身が表舞台に出ないことを宣言している。だが小沢氏は政治的影響力をなくしたわけではない。
 たとえば一二日には小沢氏は和歌山県に入り、連合和歌山の村上正次会長と面談。民主党への選挙支援を要請している。和歌山は小沢氏の元側近の二階俊博元運輸相の地元で、次期参院選で改選を迎える現職は自民党所属の鶴保庸介氏。鶴保氏は小沢氏の元秘書だが、たとえ、かつては自分に献身的に仕えてくれた相手であっても、今が敵ならばそれは敵。これは小沢流の政治哲学といえる。
 外に対して排他的な組織は、往往にして内部の結束力が固い。小沢氏を取り巻く一新会はその典型例といえるだろう。
「われわれは次期参院選まではおとなしくしているつもりだ。野党があんな体たらくでは、民主党が勝つことはまず間違いない。問題はその後に開かれる臨時国会だ」
 一新会に所属するある議員が筆者にその「方策」をそっと耳打ちしてくれた。
「たとえば一新会に所属する議員が、所属する委員会の理事を一斉に辞任する。そうなれば委員会はたちゆかなくなり、立法府は機能しなくなる。一種の国会ジャックだ」
 国会を人質にとられたなら、菅政権は身動きできなくなる。こうして八月に「政変」を起こして政権を弱体化させ、そのまま九月の代表選になだれ込むという算段なのだ。
「次期参院選が終われば、少なくとも今後二年間は国政の選挙はない。その間におそらく、大規模な政界再編が起きるだろう。その中心になるのは間違いなく小沢一郎だ。九月の民主党代表選は、その前哨戦になるわけだ」(同議員)
 となれば、いよいよ「小沢一郎首相」の誕生か。秋の政局はますます混迷を深めていく。

(天城慶・政治ジャーナリスト)

JR東日本が発電再開へ 調整池扶壁部に亀裂も 安全性に問題なし!?

「信濃川発電所 発電再開のお知らせ」(以下「お知らせ」)というJR東日本旅客鉄道会社の告知広告が、六月一一日付『朝日新聞』など一三紙の朝刊に掲載された。しかし、これには看過し難い欠落がある。
 まず、今回のJR東日本に対する水利権の許可期間は、二〇一五年六月三〇日までの約五年間に限定されたが、これについて一言も触れられていないこと。信濃川の自然や生態系は、昨年三月までのJR東日本による大量取水で大きく破壊された。取水を再開するのであれば、同じ過ちを繰り返さないこと、すでに破壊してしまった河川環境の回復を図ること等が、JR東日本の責務となる。五年という短い許可期間の設定は、いわばJR東日本の本気度を見る保護観察期間。単なる精神論や努力目標に終わった場合は、六年後の水利権更新は行なわない旨をきちんと公に誓うべきところだろう。
 一方で粘り強く「水返せ」の活動を続けてきた市民は、五月二五日に「信濃川を愛するみんなの会」(樋熊清治会長)を立ち上げた。今回の許可内容では河川環境の回復は期待できないとし、今後の成り行きに目を光らせる。
 もうひとつの欠落は、発電施設等の安全確保について触れられていないこと。とりわけ三つある巨大な調整池は、中越地震で亀裂が走った。活断層地帯にあり地盤も軟弱、しかも階段状に二つ調整池が造られていることから、付近住民から不安の声が聞かれる。
 いまも山本山調整池の堰堤の一部になる扶壁部分には、接合部に大きな隙間が生じているし、他にも亀裂が目につく(左上写真)。国交省北陸地方整備局の技術者は、安全性に問題ない構造であり心配はないと説明するが、不安は残る。JR東日本は取材に対して、「地元や関係する皆さんと相談しながら進めています」と答えた。

(丸山昇・ジャーナリスト)

普天間移設で菅新首相に申し入れ 辺野古合意を全面撤回せよ!

 普天間飛行場閉鎖に絡む日米共同声明の撤回要求を盛り込んだ「菅首相への緊急申し入れ」を行なうための記者会見が一一日、参議院議員会館で開かれた。
 主催は、五四の個人と団体が呼びかけた「2010安保連絡会」。同グループは昨年一二月八日に「鳩山首相への緊急提案」を提出。五六四人が賛同したが、そのポイントは、普天間飛行場の「移転」ではなく「閉鎖」を求めたことだった。閉鎖することが本質であり、移転は {方便} だからである。
 結果は、五月末の日米共同声明にあるように、「最低でも県外」という公約すら守られなかった。そこで今回、あらためて菅直人新首相に対して申し入れを行なう。内容は、辺野古移設の共同声明と閣議決定の全面撤回を求めるほか、鳩山政権誕生から共同声明発表までにどのような交渉がなされたのか。その具体的で詳細な事実関係の公開を要求することが特徴だ。今現在、これらが全く明らかにされていない。
 当日の会見で、呼びかけ人の一人、天野恵一氏は「敗戦前に本土攻撃のために建設されたのが普天間基地。それがそのまま不法占拠され続け、日本が受諾したポツダム宣言の占領規定にも違反する」と、当たり前のことが報道もされず、認識もされていないことを指摘。このような基本的な常識が伝わらず、ただ「移転」だの「抑止力」という単語が飛び交っているのが現状だ。さらに申し入れ文には、日米間のすべての密約の破棄を米国政府に要求することも盛り込まれている。主催者は一九日一三時から東京三宅坂の社会文化会館で集会を開き、終了後に首相官邸に、申し入れを行なう予定だ。
「2010安保連絡会」7http://
www.jca.apc.org/hananpojitsu/

(林克明・ジャーナリスト)

右派系団体の抗議で『ザ・コーヴ』上映自粛――「表現の自由守れ」と緊急上映会

憲法21条を読み上げるリック・オバリー氏。(撮影/ゆげたりえ)

「日本は憲法二一条で言論・表現の自由が保障されている」とリック・オバリー氏は、日本国憲法二一条が書かれたボードを手にしながら、観客五五〇人を前に主張した。映画『ザ・コーヴ』(初夏、全国順次ロードショー予定)のプロモーションのために来日したオバリー氏は、同映画の出演者であり、イルカ解放運動の世界的な活動家として有名な人物だ。

 九日、東京・なかのZERO小ホールで開催された「映画『ザ・コーヴ』上映とシンポジウム」(月刊『創』主催)には、映画を観ようと各地から六〇〇人近くが詰めかけた。当日券を求めて会場前には長蛇の列。中に入れず、帰った人も多くいたという。

『ザ・コーヴ』は、和歌山県太地町で行なわれているイルカ漁を舞台としたドキュメンタリー映画だ。本来であれば六月二六日から、東京ではシアターN渋谷とシネマート六本木で、大阪ではシネマート心斎橋で公開が予定されていた。しかし、右派系団体による映画館への度重なる抗議の電話や、街宣活動の予告があったことなどから六月上旬、映画館は相次いで上映中止を決定した。

 配給元であるアンプラグド社や同社の加藤武史社長の自宅近辺でも右派系団体が街宣・抗議活動を行なったため、東京地裁は団体に対して街宣・抗議活動を禁止する仮処分を四月に下したばかり。しかし、六月一二日には、上映が予定されている映画館・横浜ニューテアトルに対して右派系団体は街宣・抗議行動を実施している。

 九日のシンポジウムでは、篠田博之『創』編集長が「(上映中止を決めた)映画館は街宣行動を実際にされたわけではない。何月何日にかけるぞ!! と言われ自粛した。映画『靖国』の上映中止の時と全く同じ」と、二年前に起こった「表現の自由」をめぐる事件に触れ、「当時メディアは騒いだが、時間が経ってまた同じことが起こっているのは、メディアにも責任がある」とした。

 前日に映画の舞台となった和歌山県太地町で取材をしてきたというジャーナリストの綿井健陽さんは、「憲法二一条は誰が誰に対して言うものなのか。対国家権力に対してと、太地町の人々に言うのとでは違うのではないか。太地町の住民は映画を撮った人たちが言う『表現の自由』って何なんですか? と言っていた」と太地町住民の話を紹介し、住民の意見も聞くべきではないかとした。

 当日、会場では、当該の右派系団体からきたという男性が、『ザ・コーヴ』上映に反対するチラシを配っていたが、「抗議(表現)の自由は認められて当然。だから、映画をつぶせというチラシを撒くことは認めた。しかも、この会場のような絶対的なアウェイで撒くのはなかなか……。しかし、それと実際に実力行使で映画をつぶす、ということは違う」と篠田氏は指摘した。

 チラシには、「『ザ・コーヴ』は日本人に対する人種ハラスメント。映画に表現の自由を認めてはならない」などとして、「食肉加工センター(食肉処理場)」での牛を例に上げ、生き物を殺す神聖な仕事があって人間社会は成り立ってきたと主張。そして、この領域はどの国でも「アンタッチャブルな領域」と呼ばれているとして、イルカ漁でのイルカを殺す漁師の姿を撮影し公開することが「表現の自由」なのかと訴えている。

「今回の件は、議論を分けて考えるべき。映画上映の問題、イルカ漁・鯨漁の問題、ドキュメンタリー手法の問題が一緒くたに語られてしまっている。映画については、僕の周りでも賛否両論ある。しかし、それと映画上映の問題は別」と野中章弘アジアプレス代表は、言論・表現の自由については譲歩できないとした。 

 挨拶に立ったアンプラグドの加藤社長は「映画は映画館がないと見せる場がありません。是非、勇気をもって、この映画を上映する場を与えていただきたいと思っています」として、今後公開が予定されている映画館に対しての支援を呼びかけた。

(ゆげたりえ・編集部)

緊急院内集会開催、「今国会で民法改正の閣議決定を!」

 千葉景子法務大臣、福島みずほ男女共同参画担当大臣、という内閣で民法改正実現に期待が高まったものの、閣議決定に至らないまま福島氏罷免、社民党連立離脱となった直後の一日、衆議院第二議員会館内で緊急集会「今国会で民法改正の閣議決定を!」(mネット・民法改正情報ネットワーク主催)が開かれ、一〇七人が参加した。

 出席した議員らは、千葉大臣が「閣議決定に至らないことに責任を痛感している。申し訳ない。だが志を捨てたわけではなく今からでも実現をと思っている」、福島前大臣が「今年は民法改正、来年は個人通報制度を実現するつもりだったのに、実現できず申し訳ない。だがパワーアップしてこれからも頑張る」、小宮山洋子議員(民主)が「この国会でと期待された皆さんにはお詫びを申し上げる。この問題の優先順位が高いことが理解されないとすぐには実現しないが一歩一歩やっていく」、本多平直議員(民主)が「千葉さん、福島さん、枝野(幸男)さんが政権に入っている時に実現できていないことを申し訳なく思っている。だが党内勉強会では反対派の学者を論破するなど活動している。第二ラウンドで再チャレンジする」などと口々に詫びつつ実現に向け努力を続ける決意を表明した。

 また、辻惠議員(民主)が「小沢さんは別姓に理解があるが、親の心子知らずというか若い議員で反対が多い」、京野公子議員(民主)が「改姓反対派のメール攻撃はすごい。若い議員の中にはそれに影響される人もいる」と、価値観が揃わない党内情勢に言及。出席議員らの発言を聞いて「改正に反対の議員に話しに行くから誰のところに行ったらいいのか教えてほしい」と発言する市民団体もあった。仁比聡平議員(共産)が「女性差別撤廃委員会が民法改正を勧告している。タイムリミットがある課題と認識しないといけない」と指摘したように、二年以内(二〇一〇年夏まで)の改正が求められている。「もう待てない」という市民の声も複数紹介され、主催したmネットの坂本洋子共同代表が「千葉さんと福島さんには責任がある。ぜひ(参院選で当選して)戻ってきて実現してください」とエールを送ると、拍手が起こった。

(宮本有紀・編集部)

林眞須美さん「“死”が消えない」――和歌山カレー事件死刑確定から一年

林眞須美さんが収容されている大阪拘置所。この7月に立て替え工事が始まる予定。(撮影/片岡健)

「四月の初めに眞須美に面会してきましたが、今は朝起きてから夜寝るまで、頭から “死” という言葉が消えることがない、と言っていました。面会中は明るく振る舞っていましたが、本当は相当しんどい状態なんやろうと思います」

 大阪拘置所に収容されている林眞須美さん(四八歳)の近況について、夫・健治さん(六五歳)はこう話す。

 一九九八年七月二五日、夏祭りのカレーにヒ素が混入され、六〇人以上が死傷した和歌山カレー事件。殺人などの罪に問われながら、一貫して無実を訴えた林眞須美さんが最高裁で上告棄却され、昨年五月一八日に死刑確定して一年になる。この間、眞須美さんや弁護団は同七月二二日に再審請求。その後も弁護団は現地調査などを重ね、支援者も地元和歌山でビラ配り、会報の発行など、再審無罪獲得に向け、精力的に活動している。

 だが一方、眞須美さん本人の境遇は死刑確定以降、ますます過酷なものになっているようだ。

 というのも、眞須美さんは死刑確定後、親族や弁護人以外との面会や手紙のやりとりが一切許されない状態に。死刑確定者の外部交通は法律上、親族のほか、「重大な利害に係る用務の処理のために面会が必要な者(例・弁護人)」や「心情の安定に資する者」などと許されるが、眞須美さんが拘置所側に繰り返し求めてきた支援者や友人との外部交通の許可はすべて退けられているという。

 しかも、健治さんによれば、眞須美さんは現在、「親族ともほとんど面会できていない状態」という。というのも、健治さんは昨秋に体調を崩し、実は今も療養中。和歌山市の自宅から大阪まで面会に訪ねるのは体力的に厳しく、四月の面会も約七カ月ぶりだった。さらに四人の子どもも、面会可能な平日は仕事や学校でなかなか時間がとれない現状なのだという。

「生きている時間の大半を狭い独房で過ごしている眞須美にとって、未決囚のころから面会や手紙など、外の人との交流は心の支えでした。今の状態では心が折れてしまわんか心配です」(健治さん)

 ただでさえ極限的な精神状態の死刑確定者がかくも絶望的に孤独な状態に置かれていれば、健治さんの心配も無理はないだろう。

 そんな状況のため、弁護団や支援者が現在、再審請求活動の中で重要視しているのが、大阪拘置所での眞須美さんの処遇の改善だ。

「東京拘置所では、死刑確定者にも二人、三人と許可されていた友人・知人との外部交通の枠が、昨年からさらに四人、五人へと拡大されています。それに比べると、死刑確定者に対する大阪拘置所の処遇改善は非常に遅れている。

 また、大阪拘置所は他と比べ、弁護人の接見も不自由。たとえば、他の拘置所は、死刑確定者でも弁護人は所員の立ち会いなしの接見が可能だし、接見時にパソコンも使えます。他では普通にできることが、大阪拘置所では認められないのです」(弁護団関係者)

 そう指摘される大阪拘置所は、死刑確定者の処遇等をどう定めているのか? 同拘置所に問うた。

 担当者はまず、死刑確定者の外部交通について、「一律ではなく、個別に判断しています」と説明。死刑確定者の弁護人接見に常に立ち会いがつく理由は「死刑確定者の心情の把握や身柄の保全の必要性が高いこと」などで、弁護人が接見時にパソコンを使えないのは「録音や撮影の機能があること」が理由という。回答を聞く限り、大阪拘置所側にも事情や考えがあるようだが、刑が執行されたら取り返しがつかないのが死刑確定者だ。その再審請求活動へのマイナスも指摘されるような処遇については、改善の余地がないか、せめて検討くらいされるべきだろう。

「眞須美は『再審で無罪をとるまで絶対死なへん』と言っていたが、その前に精神的にまいってもうたら話にならん。そうならんように私らが支えていかんと……私もおちおち寝込んでおれません」

 自分も療養中の身ながら、健治さんは気丈にこう言った。困難な状況の中、再審無罪を求める眞須美さんや関係者の闘いは続く。

(片岡健・ルポライター)