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伊藤詩織さん名誉毀損訴訟 
はすみとしこさんらに賠償命令

小川たまか|2021年12月21日12:49PM

 ツイッターへの悪質な書き込みやイラスト投稿で名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、漫画家のはすみとしこさんと医師、別の漫画家の3人に計770万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11月30日、東京地裁であり、小田正二裁判長は、はすみさんに88万円、はすみさんのツイートをリツイートした漫画家と医師の男性にそれぞれ11万円の支払いを命じた。

 訴訟の対象となったのは、はすみさんが2017年6月から2019年12月までに発信したツイートのうち5件。伊藤さんを思わせる女性のイラストに「枕営業大失敗!!」などの文字を載せた画像に「顔にこだわった!顔に!!まぁ、だいたいこんな感じじゃね?と理解w」とコメントをつけたものなどだ。

 伊藤さん側は、伊藤さんが元TBS記者の山口敬之さんから性的暴行があったと告発したことについて虚偽の内容であると示唆するもので、伊藤さんの社会的評価を著しく低下させたなどと主張。損害賠償のほか、ツイートの削除と謝罪広告の掲載を求めた。

 はすみさん側は、ツイートは論評であるなどと主張。ツイートに添付された画像計6点のうちの1点については、ディズニーアニメのキャラクターをモデルにしたもので伊藤さんではなく、残り5点についても「伊藤さんと同定できない」と主張していた。

 判決は、はすみさんのツイートは論評にはあたらず、画像については「原告と同定することが容易に可能であるというべきだ」と認定。5件のツイートのうち4件について伊藤さんの社会的評価を低下させ、「社会通念上許容される限度を超えた侮辱行為」と認めた。

 一方で、伊藤さんがラジオやテレビに出演し、自身の意見を広く発信できることや、はすみさんのツイッターのアカウントがすでに凍結されて閲覧できない状態になっていることなどを考慮し、謝罪広告の掲載は認めなかった。

【リツイートにも責任】

 男性2人は、いずれもはすみさんの画像付きツイートをリツイートしたが、イラストが伊藤さんだと認識していなかったなどと主張。

 しかし、判決は、イラストが伊藤さんだと認識していなかったという主張は採用できないとしたうえで、男性らのリツイートは、はすみさんのツイートに「賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当」「その内容について責任を負うべきである」などと述べ、不法行為責任を認めた。

 判決後の記者会見で、伊藤さんの代理人の山口元一弁護士は賠償額について「各ツイートについてそれぞれ100万円を請求したが、裁判所は全体として一つと考えたうえでの認定だった」と説明。「日本の名誉毀損裁判全般に関わるのでこの件だけ言っても始まらないが、もうちょっと多くてもいいんじゃないかと個人的には思う」と話した。

 伊藤さんは「(リツイートは)メガフォンで叫んでいるような行為。ポスターだったら剥がしてすむけれど、ネットではそれができない。発信する一人ひとりの人に、責任と認識を持っていただきたい」と話した。また、ネットでの誹謗中傷があるために現在SNSやメールを使うことができず、アシスタントが対応している状況を説明。「コミュニケーションを仕事とする者にとっては本当につらい状態」「私の表現の自由が奪われてしまっている。表現の自由は誰の自由を守っているのかということを一緒に考えてほしい」と語った。

 はすみさんは、インスタグラムで「まずは私の巻き添えに遭ってしまったA、B氏にとても申し訳なく思っています。判決に関するコメントは、判決文全てを読んでいないのでできませんが、判決を重く受け止めたいと思います。今後の色々はどうするかは考え中です」とコメントした。医師の男性は判決後も、判決を否定的に言及するツイートのリツイートを繰り返している。

(小川たまか・ライター、2021年12月10日号)

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