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ウィシュマさん死亡事件、殺人容疑で名古屋入管幹部ら刑事告訴

2021年11月22日8:55PM

11月9日、名古屋地検に告訴状を提出した後、取材に応じるポールニマさん(右から2人目)と代理人ら。(撮影/西中誠一郎)

 名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の施設に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が今年3月に死亡した問題で、ウィシュマさんの妹ポールニマさんと代理人弁護士らが11月9日、名古屋入管の当時の局長ら幹部職員と処遇担当だった看守責任者らについて、「被害者が死んでも構わない」という「未必の故意」があったとして、殺人容疑の告訴状を名古屋地検に提出した。

 告訴状の提出後、代理人の指宿昭一弁護士は「(8月に法務省出入国在留管理庁が公表した)『最終報告書』の記述だけでも、名古屋入管はウィシュマさんを救命する強い法的義務があったにもかかわらず、放置し続け見殺しにしたのは明らかなので、殺人罪で告訴した」と述べ、保護責任者遺棄致死容疑ではなく殺人容疑で告訴した理由を説明した。

 告訴状には、ウィシュマさんの死亡に至る経緯として(1)昨年8月に同居していた男性からの暴行の相談のために出頭した交番で、オーバーステイで逮捕され、翌日から名古屋入管で無期限収容が開始されたこと、(2)今年1月には支援者が身元引受人となり仮放免許可申請したが却下され、1月中旬以降、嘔吐、食欲不振、体のしびれ、吐血などの体調不良を訴え続け、(3)2月以降はトイレやシャワーにも介助が必要となり、面会室へも車椅子で移動し、支援者との面会中にも嘔吐を繰り返すようになったこと、(4)2月15日の尿検査の結果、「飢餓状態」をうかがわせる数値を示したにもかかわらず、治療も点滴も受けることができず、死亡2日前の3月4日に精神科を受診させられた以外、外部病院での診察が行なわれなかったこと、(5)2月下旬以降はベッドの上でも身動きがほとんど取れなくなり、床に転落して入管職員に助けを求めてもほぼ放置状態だった。さらにそれ以降の3月6日に死亡に至った状況が詳細に記されている。

 告訴状は、このような入管職員の対応は「人間を身体拘束する施設において勤務する職員の責任」として最低限の義務を果たしていない、と指摘。また、入管収容施設の「処遇規則」や、2018年3月に法務省入管局長が地方入管局長に発出した指示などにも著しく違反しており、「ここまで医療放置と収容継続が可能になったのは、被告訴人らに『被害者が死んでも構わない』という未必の故意があったからである」として、そうした行為が「殺人罪」(刑法199条)に該当する、と結論づけている。

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