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小池晃・日本共産党書記局長に聞く 
野党による連合政権

小池晃×中島岳志|2021年10月28日5:14PM

表2

【新しいスタンスをとる連合政権】

中島 野党の政権交代には、連立が必須だと私は思っています。旧民主党系の人が連立についてわかっていないのではないかと思うことは、日本は小選挙区比例代表並立制で、共産党や公明党が一定数議席数をとる前提になっているので、連立政治が不可避であるということです。二大政党制というのはこの選挙制度では生まれえない。とすると、穏健な多党制による連立というのが必然であるということです。

小池 日本ではこれまで、政策の一致点では協力するけれども、お互いの違いは認めあうという、ヨーロッパで行なわれてきたような政権協力の経験はなかったと思うんです。

こうした中で、9月30 日には、日本共産党と立憲民主党の党首会談が行なわれ、政権協力で合意しました。両党が確認したのは、「『新政権』において、市民連合と合意した政策を着実に推進するために協力する」「その際、日本共産党は、合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外からの協力とする」というものなどです(表2「立憲民主党・日本共産党の党首会談での合意内容」参照)。「限定的な閣外協力」とはいっても、市民連合との共通政策は、決して部分的なものではなく、約9年間の『安倍・菅政治』をチェンジする要となる政策がしっかり盛り込まれており、これが実現すれば、いままでとはまったく違う政治状況が生まれると思います。

私たちは、合意した政策の実現のために、「新政権」を全力で支えていきます。政策を実行しようとすると、さまざまな妨害や抵抗も起こるでしょうから、市民の皆さんとも力を合わせて乗り越えていきたい。合意した政策以外の課題については、党として独自に判断しますが、協力できるものは最大限協力していきます。共産党として、積極的提案もしていきたい。「新政権」には、こういうスタンスでのぞみたいと思っています。

もちろん、これまでも繰り返し表明してきたように、政権の中に意見や立場の違う問題を持ち込むことはせず、あくまで政党間の一致点で活動します。同時に共産党としての独自政策、たとえば、日米安保条約第一〇条に基づく米国への通告で安保条約をなくして「日米友好条約」に切り替えるといった立場は堅持します。

それぞれは別の党ですから、独自の政策を持つのは当然です。違いがあってもお互いにリスペクトして、一致点でしっかり協力するという「多様性の中の統一」こそが、一番強い力を発揮する。これが、この間の共闘の6年で、私たちが学んだ大きな教訓です。そういう連合政権というのは、日本の政治史で初めての経験になるのではないかと思っています。

中島 哲学者カントが理念の二重性の問題として、統整的理念と構成的理念に分けて説明しています。統整的理念というのは人間が不完全である以上、そう簡単には到達しえないようなもので、常に人間に反省的思考を促す超越的な理念です。現代的に言えば、お花畑と言われてしまうけれども、しかし絶対平和というひとつの大きなスローガンで、この統整的理念があるがゆえに、軍縮やりましょう、そのために核兵器を何パーセント縮小しましょうといった構成的理念を掲げることができ、対話や合意形成が成り立っていく。構成的理念が成立するためには、統整的理念が成立していなければいけないというのが、二重性の問題です。私は共産党のスタンスがこれだと思います。立憲民主党やほかの野党とも構成的理念で合意し、十分一緒に歩んでいける政党になると思います。

小池 立憲民主党の枝野代表は、日本共産党について、「天皇制や日米同盟に対する考え方などでわれわれと明確に違っている部分がある」としながらも、「いまの日本の置かれている状況を前提とした当面、3年、5年、10年くらいにやらなければならないことについて相当な共通点がある」と語りました(昨年9月23日、日本外国特派員協会での会見)。今後10年やっていく共通点があるなら、十分に政権協力は可能です。同時にいまの「統整的理念」の話にあるように、共産党としての独自の主張を貫くこと自体が、当面する課題でのたたかいを発展させるとともに、自民党政治のゆがみをただす展望を明らかにする役割を果たすのではないか。たとえば、「沖縄辺野古での新基地建設を中止する」が、野党の共通政策には入っていますが、実行しようとすれば、日米安保体制の現状を絶対視する勢力とぶつからざるを得ない。その際に、日米関係の根本的転換の道を示す共産党の立場が、解決の展望を示すことになるのではないか。ですから、僕らが独自の主張――中島さんの言う「統整的理念」を掲げることは、決して当面の協力関係に障害を持ち込むことにはならない。逆に困難を前向きに解決していくためのひとつの力になるのではないでしょうか。

中島 第一党が立憲民主党という政府が成り立つとするならば、共産党の存在というのは外交カードになると思うんです。自分たちで内閣を一緒に組んでいる共産党がこれについてはイエスと言いませんよとして、相手政府に迫ることができますし、重要なメッセージになる。

そこで野党共闘ということなのですが、すぐに衆議院選挙があるので、選挙の戦術を野党共闘からどのように考えますか。

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