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「未来は自分で決めたい」
緊急避妊薬の薬局購入実現求む

宮本有紀|2021年10月21日7:57PM

厚労省の検討会議に参考人として出席した「#緊急避妊薬を薬局で市民プロジェクト」の共同代表3人。左から遠見才希子氏、染矢明日香氏、福田和子氏(提供/染矢明日香)。

避妊の失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬は、早く飲むほど効果がある。産婦人科医の遠見才希子氏によれば、24時間以内の服用なら阻止率は95%、72時間経過すると58%になるという。海外では薬局や自動販売機で安価に入手できるが日本では処方箋が必要なうえ薬剤師の面前での服用が要求されるなど緊急時に間に合わない問題があり、処方箋なしでも薬局で購入できる「OTC(オーバー・ザ・カウンター)化」が求められている。

2017年の厚生労働省の検討会で緊急避妊薬のOTC化が議論されたが、有識者の反対が多く導入は見送り。しかしその後、必要性を訴える署名が集まったこともあり、10月4日、OTC化導入を議論する同省の検討会が4年ぶりに再開された。

それに先立つ「世界避妊デー」の9月26日、「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」と国際協力NGOジョイセフが開催した「未来は自分で決めたい!SRHRトークイベント」でもこの問題が話題に。SRHRとは、自分の性や身体について自ら選択・決定し、人生を主体的に設計するために必要なセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)のこと。ジョイセフの統計では現在、世界で2億人以上の女性が必要な避妊を受けられず、世界の妊娠の43%は計画外の妊娠という。望まぬ妊娠を防ぎ「未来を自分で決める」ためには確実で安全な避妊が不可欠だ。

「未来は自分で決めたい!SRHRトークイベント」で話すパネリストたち。(提供/ジョイセフ)

国連の統計によると海外では経口避妊薬の低用量ピルの使用が多く、子宮に装着する避妊具など多様な避妊方法も採用されているが、日本の避妊方法は主に男性用コンドーム。女性が主体的に避妊できないうえ避妊に失敗する例もあり、日本こそ緊急避妊薬の普及が必要なはず。しかし17年の検討会では「性感染症が増える」「若い女性が性に関して知識がない状況で責任がもてない」「転売など悪用されるかもしれない」などのOTC化への懸念が表明された。

市民プロジェクト共同代表でもある前出の遠見医師は「この議論と否決理由が、驚くほど科学的根拠に基づかないものだった。SRHRの視点が乏しい議論の中で国の方針が決まることに危機感を持った」と話す。実際、WHO(世界保健機関)ファクトシートには緊急避妊薬レボノルゲストレルについて「多くの国で市販薬または処方箋なしでの使用が承認されています。研究結果で、若い女性も成人女性も、ラベル表示と説明書を容易に理解出来ることが実証されています。10代を含む若い女性が、一度に複数の緊急避妊薬を供給された場合でも、日常的な避妊法の代わりに緊急避妊薬を繰り返し使用するということはありませんでした」「緊急避妊薬へのアクセスを容易にしても、性的もしくは妊娠のリスクのある行為は増加しないことが示されています」とあり、懸念が当たらないことを示している。

また17年の検討会は12人中女性が1人、1人が40代であとは50代以上という構成で、若者の声は反映されていない。30歳以下の若者を対象としたジョイセフのプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」の櫻井彩乃代表は「『緊急避妊薬も選べない』『なんでSRHRもない国で、将来子どもを産んでね、頑張って働いてねって言われなきゃならないのかわからない』『この国に希望が持てない』などと若者は言っていて、その声をなぜ聞かないのか」と指摘。「内閣府男女共同参画局は議論にユースを入れる動きになっている。緊急避妊薬の議論をしている厚労省も意思決定の場にユースを参画させていくことが、私たちがほしい未来を描くために重要なこと」と訴えた。

10月4日の検討会には遠見氏ら市民プロジェクト共同代表3人も参考人として出席し、「決めるのは医師ではなく女性であり、医師こそリプロダクティブライツを学び直す必要がある」などの意見を表明したという。次回の会議は22年2月の予定だ。

(宮本有紀・編集部、2021年10月15日号)

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