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日本で育ったクルド難民申請者、彼らの夢を誰がつぶしたのか

田中喜美子 日向史有|2021年9月9日11:58AM

対談 『東京クルド』日向史有監督×「牛久入管収容所問題を考える会」田中喜美子代表

幼少期から日本に住むクルド難民申請者の青年は入管には国に帰れと言われ続け、日本社会の中では見えない壁にぶつかり続ける。日常の中で起こる選別と排除を記録したドキュメンタリー映画『東京クルド』を制作した日向史有監督と、入管の収容問題に25年以上かかわってきた支援者の田中喜美子さんに話を聞いた。

田中喜美子さん(左)と日向史有さん。(撮影/スティーブン・マキンタヤ)

――『東京クルド』に出演したクルド人の若者オザン(撮影開始当時18歳)とラマザン(同19歳)のことは、それぞれの親への面会・支援活動を通して、田中さんは小さい頃からよく知っている。映画をどう観ましたか。

田中 私はまず監督にお礼が言いたいです。日本にクルド人の若者が存在していて、彼らがすごく逡巡し、苦労して夢をつかもうとする姿を5年かけて地道に追い、世に出してくれた。オザンが、芸能事務所に所属しようとした時に、仮放免(注1)で働くことは「法律に触れることだからできない」と言われ、帰って行くシーンは本当に悲しかったけど、これが現実だと思った。夢をつぶされていくことも含めて、よく撮ってくれた。

日向 ありがとうございます。オザンもラマザンも映画撮影時には、非正規滞在の仮放免。だけど、立場は「非正規」でも、精神性まではそのことに支配されたくない、と彼らは思っています。人の生きる価値において、在留資格の有無で、善良な人であるかないかが決まるわけではないのに、日本では正規滞在者が善良で、非正規滞在者が悪かのような言説がみられます。

国が使う「不法滞在者」などという言葉が、その象徴です。では、留学生が学費を払えなくなって非正規滞在になった瞬間、その人は善良な人から悪人になるのでしょうか。あり得ないですよね。

在留資格は、単に紙の問題。人間の価値とつながるものではない。

(注1)収容から一時的に解かれる措置、もしくは正規に在留する資格がない者に収容する代わりに与えられる措置。

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