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東電株主代表訴訟、旧経営陣への被告尋問始まる 
「津波対策先送り」否定

小石勝朗|2021年6月18日8:45PM

武藤栄氏の尋問終了後に記者会見する原告と弁護団。(提供/小石勝朗)

福島第一原子力発電所の事故をめぐり、東京電力の勝俣恒久・元会長ら旧経営陣5人に対し、同社が被った22兆円の損害を個人の財産で賠償するよう、脱原発を訴える同社株主約50人が求めた株主代表訴訟で、被告本人への尋問が5月27日から東京地裁で始まった。

この日は武藤栄・元副社長が出廷。約2時間にわたり被告側弁護士による主尋問が行なわれた。

原告側の主張では、武藤氏は原子力・立地本部副本部長だった2008年6月、同原発に高さ15・7メートルの津波が襲来する可能性があるとの試算を担当者から報告され、具体的な津波対策の立案を求めた。しかし7月末に一転、電力業界と関係が深い土木学会に再評価を依頼するよう指示し、対策を先送りしたとされる。

武藤氏は尋問で、6月の報告の時は試算の前提だった、政府機関による長期評価(地震予測)の「根拠や信頼性を議論しただけで、対策の話までたどり着かなかった」と答弁。「試算していること自体を知らず、何かを決められる状況ではなかった」と強調した。

7月の指示についても「長期評価の根拠が分からず、社外の専門家の意見を聴くべきだと考えた。『依頼するなら土木学会』と担当者が言い、私も自然で合理的なやり方だと思った」と述べた。ただちに対策工事をしたり原子炉を止めたりする必要があるとの説明は2回とも「一切なかった」とし、「対策先送り」を否定した。

その後、原発で津波による事故が起きたが「あれ以外のやり方は取り得なかった」と釈明した。

尋問終了後、原告弁護団の河合弘之団長は「メールやメモで明らかになった内容を否定している。部下の報告に真摯に対応しない人物が原発の運転を管理していたと思うと恐ろしい」と語った。今後、原告側による武藤氏への反対尋問、他の被告4人の尋問とともに、裁判官が10月に初めて原発敷地内を視察することも決まった。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2021年6月4日号)

 

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