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コロナ禍での「卒業式総括集会」 
異様な「国歌斉唱」の実態

永尾俊彦|2021年4月16日5:28PM

3月31日の「卒業式総括集会」で紹介される東京「君が代」裁判5次訴訟原告ら。(撮影/永尾俊彦)

今年の「卒業式総括集会」が3月31日に東京都内で開かれた。卒業式や入学式等での「君が代」斉唱の際に起立やピアノ伴奏をしなかったことを理由に東京都教育委員会から懲戒処分を受けた都立学校の教員らによる「被処分者の会」などの主催で、77人が参加した。

最初に川村佐和さん(都立美原高校教員)が今年の卒業式について「不起立や不伴奏は現時点で把握できておらず、処分された教職員がいなかったのは3回目」と報告。特徴を以下のように述べた。

(1)都教委は昨年末、都立学校長に今春の卒・入学式について「通知」を行ない、感染症対策のため「歌唱は行なわない」が式次第に「国歌斉唱」と記載。歌唱入りCDを起立して聞くよう指示。「校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる」としていた。

(2)「通知」は式次第の実施例まで示し、送辞・答辞は短縮。生徒表彰や卒業生の歌はなく、最も感動的な部分が簡略化、削除された。

(3)今年2月には「国歌斉唱に当たっては式典会場の指示された席で、国旗に向かって起立すること」という職務命令が出された。

(4)ただ起立して国歌を聞くのみの「国歌斉唱」は、例年にも増して異様なものだった。

そのうえで、川村さんは「卒業式は国歌斉唱のためにあるのですか。生徒のための式を取り戻したい」と述べた。

コロナ禍で迎えた昨年の卒業式では「国歌斉唱」が全都立学校で強行された。今年は斉唱をやめたのは昨年の間違いを反省したからなのか。都教育庁の久保田聡・主任指導主事(現都立五日市高校校長)は後日、筆者の取材に対して「昨年はどういう感染症か分からなかったので……」と釈明。実際には歌わないのに式次第に「国歌斉唱」と書かせるのはおかしくないかとの問いには「CDを流すことで『国歌斉唱』を形として行なうということです」。さらに筆者が「国歌斉唱」したとみなすということかと質すと「まあ、そういうことになりますね」と認めた。

この点について「被処分者の会」事務局長の近藤徹さん(元都立葛西南高校教員)は「私は野球部の顧問でしたが、歌わないのに起立させるというのは、試合でピッチャーが投げないのに打席で素振りしろというような笑い話。教職員や生徒を従わせることが自己目的化しちゃってる。そんな都立学校でいいのか、到底都民の納得を得られません」と批判した。

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