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「ストップ・リニア!訴訟」、原告の7割に「適格」認めず 
東京地裁が中間判決

井澤宏明|2021年1月13日3:40PM

中間判決を受け、東京地裁前で「不当判決」の旗を掲げる原告弁護団ら。(撮影/井澤宏明)

リニア中央新幹線の事業認可取り消しを求めて沿線の住民ら781人が国を相手取り起こした「ストップ・リニア!訴訟」の中間判決が12月1日、東京地方裁判所で言い渡された。古田孝夫裁判長(市原義孝裁判長代読)は、原告の約7割に当たる532人について裁判を起こす資格「原告適格」を認めず訴えを却下、残りの249人の原告適格を認めた。532人は11日、東京高裁に控訴した。

原告は全員に共通する原告適格として安全な輸送の提供を受ける利益、南アルプスや自分たちが住む地域の自然環境保全を求める権利を主張していたが、判決は「輸送役務提供契約を結ぶまでは、乗客になる可能性は抽象的」「どのような侵害なら良好な自然環境が毀損されたといえるか客観的に明らかにするのは困難」と否定した。

さらに、工事予定地に土地や建物などの権利を持つ原告の適格も「認可によって直ちに権利が制限されるわけではない」と否定した。

一方、リニア工事やリニア走行による大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下、日照阻害などの被害を受ける恐れのある原告については「健康に被害が生じ、生命・身体に危害が及ぼされる恐れがある」として、環境影響評価の対象となった水源の水を利用している地域などの範囲の適格を認めた。

原告弁護団が呆れるのは、工事の発生土を巡る判断だ。判決は、JR東海の環境影響評価書では発生土運搬車両のルートなどが明らかにされていなかったとし、「被害を受ける恐れがある地域に住んでいるか否かを認定する目安を欠く」ことを理由に適格を否定した。

原告団長の川村晃生・慶應義塾大学名誉教授は記者会見で「南アルプスがどういう被害を受けるか、乗客の安全性が守られるのか、立証しようとした矢先に、そういう問題では裁判は維持させないと答えを突き付けられた。極めて不当な判決だ」と怒りを露わにした。

(井澤宏明・ジャーナリスト、2020年12月18日号)

 

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