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元『朝日』記者「慰安婦」報道訴訟 
「人権後進国」象徴する判決

徃住嘉文|2020年12月10日5:05PM

11月18日、札幌で記者会見する植村弁護団ら。植村氏も韓国からリモート参加。(撮影/徃住嘉文)

6年近い裁判で明らかになったのは日本軍「慰安婦」問題否定派の杜撰さと司法の後進性だった。最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は11月18日、元『朝日新聞』記者の植村隆氏(62歳)=『週刊金曜日』発行人=が国家基本問題研究所理事長・櫻井よしこ氏(75歳)らを名誉毀損で訴えた損害賠償請求訴訟の上告を棄却し、植村氏敗訴が確定した。

植村氏は1991年、韓国の金学順氏が「慰安婦」だったと匿名で明かした特ダネを書き、櫻井氏は2014年、「捏造記事」と『週刊新潮』などで批判。植村氏の長女を殺すという無名の脅迫状が送られるなど植村叩きが起きた。植村氏は15年「捏造はない」と、櫻井氏と出版社を札幌地裁に訴えた。

日本の判例は、表現の自由を尊重し、たとえ真実でなくても、書き手が真実と信じるに相当な理由があれば、名誉毀損を免責する。実際、一、二審は、櫻井氏が新聞などの資料から捏造と信じた相当性を認定した。最高裁も原判決に憲法解釈の誤りなど上告理由はない、と同調した。

だが審理を通じ櫻井氏は『産経新聞』や月刊『WiLL』に、金氏が親に40円で売られたと(対日請求の)訴状にあると書いたのは誤りと認め訂正した。元「慰安婦」を1人も取材せず、櫻井氏が1990年代「日本軍によって強制的に従軍慰安婦にさせられた女性たち」などと植村氏と同様の報道をしていたことも分かった。上告棄却後植村氏が「裁判内容では勝ったと思います」と述べたほどだ。

深刻なのは札幌地裁が「慰安婦とは(中略)公娼制度の下で戦地において売春に従事していた女性などの呼称」、札幌高裁が「単なる慰安婦が名乗り出たにすぎない」などと「慰安婦」への冒涜と読める判決文を書いたことだ。国際社会が「慰安婦」を戦時性暴力被害者としてとらえたのは90年代。30年を経てなお、人権後進国日本の実相が露わになる判決だった。

(徃住嘉文・報道人、2020年11月27日号)

 

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