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「社会史・労働史」が欠落している産業遺産情報センター展示

植松青児|2020年11月5日6:12PM

先行研究や先行調査がまったく無視されている

そして議論を呼んでいるゾーン3に案内された。4面の壁のうちの1面に大写しで並ぶのは、朝鮮人ではなく、端島の日本人島民の顔写真である。「犠牲者を記憶にとどめる」という同センターの趣旨を考えれば、これはかなり異様な光景と言える。

実際、残りの3面にパネル展示されているのは、主には「端島では朝鮮人差別はなかった」という元島民の証言だった。先行研究や先行調査の成果や、その時に採取された証言は展示されていない。戦時中の高島・三池炭鉱についての展示もない。

本来なら、日中・アジア太平洋戦争、そして1939年からの強制労働動員計画の中で、鉄鋼・造船・石炭の各産業が朝鮮人・中国人に何を行ない、どのような犠牲を強いたのか、その全体像が説明されるべきではないか。

少なくとも、産業遺産に含まれる高島・端島・三池の各炭鉱に関する展示は不可欠のはずだ。3炭鉱ともに、採炭労働者の多くが朝鮮人に置きかえられ(注7)、それでも労働者不足を解消できず、中国からの捕虜や、「兎狩り」と言われる強制的方法で連行した中国人を強制労働させたこと(注8)などをきちんと紹介すべきだが、ここには展示されていない。

2007年「強制連行長崎訴訟」の長崎地裁判決では、高島・端島・崎戸の3炭鉱で働いた中国人元労働者に対する強制連行・強制労働の事実が認定されたが(注9)その事実も展示されていない。

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