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「黒い雨」裁判で原爆と原発のヒバクシャ共闘 
控訴撤回申し入れ

本田雅和|2020年10月23日7:27PM

【「核の平和利用」による「核被害者の分断」を許すな】

福島県田村市から東京に避難した熊本美弥子さん(77歳)は29日、厚労省の担当官に「原発も原爆も、膨大な核分裂物質を環境中にまき散らし、住民を生涯にわたって不安と健康被害に陥れる事実において変わりはない。科学的判断に基づかない国の政治判断による線引きで、被害者を差別し、賠償や援護策から切り捨て、救済を先延ばしするものだ」などと述べ、国主導の控訴を厳しく非難した。

一方、伊方原発運転停止広島裁判の原告の一人で被爆二世の森川聖詩さん(66歳)は、幼少時からの身体の傷の治りにくさなどに不安を覚えていることを話し、「福島からの避難者で同じ症状の人を何人も知っているが、それを言うと差別につながるとか言われる」と吐露。「国は原発を核の平和利用だとして、同じ核被害者を分断してきたが私たちは核兵器と原発のつながりを明らかにし、すべての核被害者の救済を目指してきた」と強調した。広島で3歳で被爆した上田紘治さん(78歳)も「核物質と人類は共存できないからこそ、広島と福島の当事者が一緒に訴えることの意味が重要だ」と訴えた。

被爆者と原発事故被災者の双方には、これまでずっと内部被曝を不可視化されてきたこと、低線量長期被曝の影響を無視した線引きによる分断などのほか、戦争と原発という「国策の犠牲者」としての共通性がある。

国策を原因とする健康被害の可能性を限りなく立証した今回の判決に対し、所管官庁の厚労省の加藤勝信大臣(当時)は「十分な科学的知見に基づいているとは言えない」と切り捨てた。新内閣の官房長官が、計412ページの判決全文を本当に読んだのなら、この記事で指摘した論点だけでも、「科学的に」反論してほしい。

(本田雅和・編集部、2020年10月9日号)

 

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