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福島原発集団訴訟、控訴審で初の「国に責任」認める判決

添田孝史|2020年10月23日7:20PM

判決後、「再び国を断罪」などの垂れ幕を掲げる原告ら。9月30日、仙台高裁で。(撮影/添田孝史)

東京電力福島第一原発事故で、住民が国や東電に損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決が9月30日にあった。仙台高裁(上田哲裁判長)は国と東電の責任を認め、原告3550人に総額約10億1000万円を支払うよう命じた。

国も被告となった集団訴訟ではこれまでの判決13件中、一審で7件が国の責任を認めたが6件は認めず、司法判断は割れていた。今回が初の高裁判決だったが、仙台高裁は明快に国に責任があると判断。一審の福島地裁は国の責任が東電の半分と評価したが、仙台高裁は東電と同等に重いとした。

東電に対しても、遅くとも2002年末頃までには高さ10メートルを超える津波を予見できたとし、事故を避けることもできたと判断した。「新たな防災対策を極力回避しあるいは先延ばしにしたいとの思惑のみが目立つものであった」とし、東電の責任は決して軽微ではなく、慰謝料の算定で考慮すべきとした。

そして賠償額も一審より増額した。これまでの裁判では〝加害者〟である国が定めた中間指針に賠償額が縛られた判決が多かった。仙台高裁はそれを超えた地域、金額を認めた。裁判の原告になった以外の被害者にも、大きな影響を与えそうだ。

【「規制当局の役割果たさず」と厳しく批判】

判決文で、国や東電の責任を判断している部分は、わかりやすく歯切れが良い。

たとえば02年の出来事について。同年7月、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、東北地方の太平洋沖で高い津波を引き起こす地震(津波地震)が、今後30年以内に20%程度の確率で発生すると予測した。

発表の5日後、旧原子力安全・保安院の担当者は、この津波地震が福島沖で発生した時の津波の高さを計算するよう東電に要求した。もしその時計算していれば、10メートルを超える数値がわかったはずだった。しかし、東電は「40分間ぐらい抵抗」(東電のメール)し、結局計算しないことに保安院は丸め込まれる。それにもかかわらず、国は「この時点における調査を十分行なった」と裁判で主張していた。

高裁判決は、「東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものといわざるを得ない」と厳しく批判している。

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