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豪雨被害の熊本県球磨川流域 
ダム是非での分断避けたい

岩本太郎|2020年8月5日5:26PM

濁流となった球磨川が集落を直撃した。(撮影/村山嘉昭)

7月4日未明以降、九州南部を中心に生じた豪雨災害は、その後各地に拡大。中部地方の岐阜県や長野県でも大規模土砂災害などを引き起こし、降り始めから約10日を経た本号の校了日(14日)時点でも収束していない。線状降水帯と称される雨雲の列が日本列島上空に停滞し続けていることから、異例とも言うべき長期・広範囲の水害が、なおコロナ禍に慄く日本社会を直撃した格好となった。NHKによると、13日現在で熊本県(64人)を中心に、福岡や大分、長崎、愛媛、静岡、長野などで72人が死亡し、13人が行方不明となっている。

フォトグラファーの村山嘉昭さんは支援活動と取材の双方を担うべく5日には熊本県南部、球磨川流域の被災地に入った。食料品などの物資を避難所などに運ぶかたわら、被災地の実態を捉えた写真入りのレポートを連日SNSなどを通じて発信している。

豪雨被害に見舞われた球磨川流域は、かつて支流の一つ・川辺川のダム建設問題をめぐって揺れたことでも知られる。もともと流域の農地への灌漑や、発電などの多目的利用を前提に国が構想した同ダムは、後に利水利用への疑問や、事業を進めようとした行政側から地元住民への悪質な対応(漁業権の収用申請において漁民から提出された同意書を捏造)などの指摘が続出。やがて建設目的が主に洪水対策などの治水に絞られたものの、最終的には熊本県の蒲島郁夫知事の「ダムによらない治水」、当時の民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」の方針を受け、2009年9月には同ダム建設の中止が決定した。

今回の水害を受け、ウェブ上を中心にさっそく「ダム建設中止が災害を招いた」と言わんばかりの言説が溢れた。これに対し蒲島知事は「ダムなき治水」が実現できなかったことの反省を述べつつ、今後もダム建設計画の復活はないとの方針を表明した。他方、球磨川の市房ダムが豪雨中の4日の緊急放流を寸前回避した背景には2年前に試験導入した「予備放流」の実施による効果もあったと同県では説明。市房ダムの緊急放流があれば被害はさらに拡大したはず、1965年に流域を襲った大水害時の同ダム放流が被害の増大を招いたとされることの反省も活きたのでは、との指摘も聞かれる。ダム建設問題は流域の人々に大きな断絶を招いたが、一帯が再び大水害に見舞われ復旧が急務の今、地元の人々をさらに追い込むような無責任な言説は慎むべきだ。

(岩本太郎・編集部、2020年7月17日・24日合併号)

 

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