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ジェンダー政策三つの発表
第5次男女共同参画基本計画の策定に向け
8月~9月に意見公募

斎藤文栄|2020年7月17日9:50PM

今年は男女共同参画基本計画が5年に一度策定される重要な年だが、内閣府による2019年実施の世論調査(下図参照)を見ても、男女平等が実現し、家事育児などのケアワークが正当に評価される社会になったとは言い難い。特に、政治分野で男性が優遇されていると思う割合は約8割で、衆議院議員の女性割合が約1割という現状からもジェンダー平等は大きな課題だ。そんな中、ジェンダー政策に関する大きな動きがあった。

2019年実施の世論調査で、男性が優遇されていると思うと答えたのは、(非常に、と、どちらかと言えばをあわせて)社会全体で約74%、政治の場では79%。育児・介護については経済的に評価しようと考える割合は7割以上あるが、それ以外の家事は社会的・経済的に評価する必要がないとする割合が44・5%と最も多い。

まず、6月11日に橋本聖子内閣府特命大臣(男女共同参画担当)が「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を発表。2020~22年度の3年間を「性犯罪・性暴力対策の集中強化期間」として、重大な人権侵害である性犯罪・性暴力のための取り組みを推進していくという。性暴力に取り組む市民社会の働きかけが、議員や政府を動かした成果である。画期的なのは、3年間という息の長い取り組みになっているという点だ。方針には、刑法の性犯罪規定のさらなる見直し、検察官への研修、被害者への切れ目ない支援、加害者の再犯防止施策のさらなる充実、学校教育やオンライン被害への対応など横断的な施策が盛り込まれている。

7月1日には「女性活躍加速のための重点方針2020」が発表された。先述の性暴力対策強化の他、非正規雇用やひとり親などの困難を抱える女性への支援、離婚後の子どもの養育費確保、生涯を通じた健康支援、男性の育児休業支援やUNWomen(国連女性機関)が進めるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を解消する施策などが盛り込まれている。

この重点方針は、15年以来、女性活躍を加速させる目的で、毎年6月を目処に、各府省の概算要求や制度改正に反映させるために決定されている。冒頭の通り、今年は、第5次男女共同参画基本計画の策定にあたるため、その議論も反映した内容となっているという。

7月2日には、第5次男女共同参画基本計画の策定に向けた「基本的な考え方」(骨子案)が発表された。基本計画の前段階としての重要な方針が書かれている。この後、骨子案を基に素案が作成され、パブリックコメント(意見公募)に付される予定だ。

また、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%とする数値目標」について2030年までの可能な限り早期」まで繰り延べするという報道もなされているが、「骨子案」では、今のところ検討中を示す「P(pending)」となっている。今後この数値目標がどうなるかは、パブコメによるところも大きいのではないだろうか。

2020年の現在、目標とはほど遠い現状なのは事実だが、達成年限を先送りにせざるを得ないのであれば、せめて5年以内に目標を定め、原因を分析し、その原因を基に、分野ごとに具体的な施策を導入すべきだろう。

8月~9月に、公聴会の開催やパブコメを実施し、男女共同参画会議から政府への答申を経て、年内を目処に閣議決定されるという。なお、「骨子案」は、7月2日の第5次基本計画策定専門調査会の資料として男女共同参画局のウェブサイトに掲載されている。http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/5th/list.html

(斎藤文栄・公益財団法人ジョイセフ アドボカシー・マネージャー、2020年7月17日・24日合併号)

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