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「慰安婦」報道めぐる植村裁判でMICが意見書 最高裁での見直し求める

佐藤和雄|2020年6月15日4:53PM

【判例に基づき見直しを】

声明はまた、札幌高裁が、資料などから十分に推認できる場合は、本人への取材や確認を必ずしも必要としないとの判断を下した点を次のように問題視する。

「捏造の有無においては、本人の認識が大切な要素。にもかかわらず、植村氏に確認する取材の申し込みすらせず、一方的に『捏造』と断じるコラムや論文が、取材を尽くして執筆したものといえるかは非常に疑問だ。上告審では、『確実な資料や根拠に基づき真実だと信じることが必要』とされてきた『真実相当性』に関するこれまでの最高裁判例に基づいた判断の見直しが必要だ」

さらに、札幌高裁が金学順さんの証言を「単なる慰安婦が名乗り出たにすぎないというのであれば、報道価値が半減する」と判決文で述べていることについて「歴史的事実や女性の人権に対する裁判所の認識の歪みも表れている」と指摘した。

「戦後、長い苦しみの時間を生き抜き、勇気と決意をもって名乗り出た女性を『単なる慰安婦』と貶め、過去の戦時性暴力の問題に向き合わない姿は、現代の性暴力に無理解な司法判断にもつながっている。国内外のすべての女性への侮辱であり、著しい人権侵害だ」と厳しく非難している。そのうえで「一連の司法判断の構図を放置していたら、今後の性暴力被害の告発やその報道にも深刻な影響が出かねない。最高裁において真摯な判断の見直しが行われることを強く求める」と結んでいる。

5月22日、東京都内で取材に応じた南議長は「性暴力被害者や近隣諸国の女性に対する蔑視が象徴的に表れているのが、札幌高裁の『単なる慰安婦』という表現。『人権問題』である『慰安婦』問題を、『国益』や『日韓問題』の枠組みでしか捉えていない裁判官の人権意識の希薄さがあらわれています。こうした差別の構造を許しては、動き出した日本の#MeToo運動やその報道にも悪影響を及ぼすと考え、指摘しました」と語った。

司法と政権の関係が問われる中、最高裁は政権への忖度なしに判断を見直すことができるのか。

(佐藤和雄・ジャーナリスト、2020年5月29日号)

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