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刑法性犯罪規定改正へ一歩
刑法見直す検討会設置決定
被害当事者も検討委員に

小川たまか|2020年4月28日8:36PM

3月31日、性犯罪に関する刑法のさらなる見直しに向けた検討会の設置と、検討委員の発表が法務省から行なわれた。検討委員は、前回(2017年改正時)の12人から5人増えて17人。まず注目したいのは、性被害の当事者である山本潤さんが検討委員に入ったことだ。被害当事者団体らは「私たちのことを私たち抜きで決めないでほしいのです」と、当事者の検討委員入りを切望していた。

発表に合わせて行なわれた記者クラブの会見で森まさこ法務大臣は、山本さんの選出理由を聞かれ、自身の被害だけでなく多数の人の被害体験を知見として持っていることや冷静な議論ができることなどを挙げたという。性暴力被害対応看護師(SANE)の資格に加え、当事者団体である一般社団法人spring代表理事としての活動が評価された様子だ。

相次いだ性暴力事件無罪判決を受け、法務省に2020年の刑法見直しの要望書を渡す山本潤さんら(向かって左)一般社団法人springのメンバー。19年5月13日。(撮影/宮本有紀)

また、被害者側の視点を持つ識者の数も増えた。前回、被害者側からの意見を述べたのは12人中2人。今回は、臨床心理士の齋藤梓さんが前回に引き続き選ばれたほか、性被害者心理の第一人者と言われる小西聖子精神科医、被害者支援弁護士である上谷さくら弁護士も委員となった。法務省から発表された資料の委員名簿には今回初めて「被害者心理・被害者支援等関係者」という枠が設けられている。被害当事者が加わり、臨床や法律の視点からも心強いメンバーが揃った。しかし一方で、当然ながら改正に反対する立場の検討委員もいる。

弁護士4名中、小島妙子弁護士は日弁連の両性の平等に関する委員会メンバーだが、残る2人はバランスを取って改正反対派の刑事弁護人が選ばれている。特に宮田桂子弁護士は前回改正後もメディア露出が多く、反対派の急先鋒だ。

3月23日付『沖縄タイムス』で宮田弁護士はインタビューに答え、被害当事者団体などが求める「不同意性交等罪」の新設案に対し「冤罪を発生させる危険がある」とし「刑事裁判での被害者救済には限界がある」とも語っている。これ自体は反対派として珍しい意見ではないが、今年の1月に発行された日弁連刑事弁護センターニュースの中では、業界紙とあって口さがない。「政治家が『悪い奴をやっつけろ』と言って人気をとろうとする、即ち大衆迎合の手段として刑事法が使われるようになった」と断じている。さらに、無罪推定などを挙げ「法律家の常識を日弁連が分かりやすく説明し、国民にとって『当たり前のこと』にする必要がある」とも書く。

ちなみに無罪判決が相次いだ19年3月頃、SNS上では判決に疑問を呈した一般人を「オナニーしたいだけの人達」「壊れた物体(人間もどき)たちが性犯罪無罪に怒っている状況」「冤罪扇動」などと感情的な言葉でバッシングした弁護士たちがいた。
国家による拘束力を最低限に抑えたいという刑事弁護人の使命感も理解するが、国民に説諭する立場と自認するのであれば、まず同業者が一般人を煽ったことを認め、品位や信頼の回復に努めてほしいとも思う。

刑法学者については、座長の井田良中央大学教授は昨年末の論文「性犯罪処罰規定における暴行・脅迫要件をめぐって」の中で、さらなる改正議論の必要についてある程度の理解を示している。中立的立場ではあるが改正支持派からも「柔軟で広く意見を聞いてくださる印象」と信頼が厚い。また、刑法学者7名中4名が1970年代生まれと、前回検討委員よりも全体的に若返った印象だ。
被害関係者や実務家は全員が女性。意思決定の場における女性割合が低いと言われる中、意識的に女性の割合を増やしたと考えられる。裁判所・警察庁・検察庁すべての機関から女性が選ばれたことについて「感慨深い」と感想を漏らす関係者もいた。
(小川たまか・ライター、20年4月17日号)

【検討会のメンバー】
【座長】
井田良(中央大学教授)
【委員】
◆被害者心理・被害者支援等関係者
小西聖子(武蔵野大学教授・精神科医師)
齋藤梓(目白大学専任講師・臨床心理士・被害者支援都民センター相談員)
山本潤(性暴力被害者支援看護師・一般社団法人Spring代表)
◆刑事法研究者
木村光江(首都大学東京教授)
佐藤陽子(北海道大学准教授)
橋爪隆(東京大学教授)
和田俊憲(慶應義塾大学教授)
池田公博(京都大学教授)
川出敏裕(東京大学教授)
◆実務家
金杉美和(弁護士・京都弁護士会)
上谷さくら(弁護士・第一東京弁護士会)
小島妙子(弁護士・仙台弁護士会)
中川綾子(大阪地方裁判所部総括判事)
羽石千代(警察庁刑事局刑事企画課刑事指導室長)
宮田桂子(弁護士・第一東京弁護士会)
渡邊ゆり(東京高等検察庁検事)

 

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