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「社会保障改革」高齢者医療負担増を中間報告に明記 
骨抜き「全世代型」実現加速

吉田啓志|2020年1月24日4:39PM

政府は昨年暮れ、「全世代型社会保障検討会議」の中間報告をまとめた。年齢に依らず経済力に応じて負担を求める「応能負担」を打ち出し、75歳以上の医療費の窓口負担割合(原則1割)について、一定程度所得がある人は2割に引き上げることなどを明記した。ただ、高齢者の反発を恐れ、年金や介護では踏み込むのを避けている。中間報告の実像は「全世代型」とはほど遠い。

中間報告がまとまった12月19日の同会議。挨拶に立った安倍晋三首相は「現役世代の負担上昇を抑えながら、すべての世代が安心できる制度を構築する」と述べ、所得や資産のある高齢者には一定の負担を求める姿勢を鮮明にした。

75歳以上の医療費の窓口負担割合は、現役並み所得(単身世帯で年収383万円以上)があれば現役と同じ3割負担で、全体の7%程度。中間報告は75歳以上に「2割」の新区分を設けるとしており、政府は早ければ2020年秋の臨時国会に関連法案を提出し、22年度から実施する意向だ。

18年度の医療費約43兆円のうち、75歳以上分は約16兆円を占める。ただ、医療制度の見直しに関し、厚生労働省は今年から審議会などで具体案の議論を始め、6月の最終報告に間に合わせる考えだった。ところが財政再建にメドをつけたい財務省と、社会保障制度改革の「実績」を欲した首相の思惑が合致し、あっさりと覆った。

「応能負担の原則は医療も同じだ。20年の通常国会には医療を含めた全世代型の社会保障改革関連法案を提出したい」

11月29日、首相は官邸執務室に加藤勝信厚労相を呼び、そう伝えた。しかし加藤氏は「いくら何でも通常国会は無理です」と異を唱えた。首相側近の加藤氏とはいえ、まだ省内で具体案を詰めていない段階では抵抗せざるを得なかった。それでも首相は引かず、最後には「医療を含める」と通告した。代わりに医療関連法案の提出時期は遅らせることで折り合った。

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