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受刑者の更生過程描くドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』来春公開

小宮純一|2019年10月29日12:52PM

『プリズン・サークル』特別試写会後に行われたシンポジウム。(撮影/小宮純一)

PFI(Private Finance Initiative)刑務所と呼ばれる施設が日本国内には4カ所ある。施設の設計・建築や運営の一部を、法務省が民間事業者に委託する形で運営されている刑務所。その一つ、島根あさひ社会復帰促進センター(島根県浜田市、2008年10月開設)で行なわれている更生プログラムに参加した4人の若い受刑者の変化を追った長編ドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』(坂上香監督、136分)が完成した。2020年1月中旬に東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開後、全国で順次公開される。

この更生プログラムは「TC(セラピューティック・コミュニティ、Therapeutic Community=回復共同体)」と呼ばれる。映画『プリズン・サークル』は自主製作作品。撮影取材許可を得るまでに6年、実際の撮影には2年をかけ、同TCプログラムを受けた受刑者の回復プロセスと変化を丁寧に追った。

「島根あさひ」は比較的犯罪傾向が進んでいないとされる男性受刑者2000人が対象の刑事施設だが、日本の刑務所にカメラが入るのはきわめて異例だ。撮影中、坂上さんらは被写体となった受刑者4人とあいさつすることさえ禁じられた。編集には2年を要し、10年越しで完成が待たれていた。

【治療の主体は受刑者自身】

TCは英国の精神病院で始まり、1960年代以降に米国や欧州へと広がった。依存症などの問題をあくまで「症状」と捉え、犯罪行為につながる思考や感情、背景にある価値観などに照準を当てていく「認知行動療法」を取り入れ、自分の加害行為の責任を引き受ける力を養う「修復的司法」の考え方を主軸としている。治療の主体はさまざまな問題を抱える当事者=受刑者本人だ。

TCプログラム参加を希望する受刑者は、専門スタッフの面接や診断評価(アセスメント)を経て、許可を受けた30~40人ほどがユニットを組む。受講生として寝食や作業を共にしながら週12時間程度のプログラムを受ける。

ユニットが共同体としてお互いに影響を与え合うリハビリに挑み、徹底した語り合いと人間関係の新しい構築によって受講生たちは学んでいく。

映画に登場する4人の受刑者はなりすまし詐欺、窃盗、傷害致死、おやじ狩りなどで服役している。親からの虐待や貧困など、自分に起きた過去の辛く悲しい事実の断片を、自分の言葉で語り、自分のストーリーとして紡ぐ作業は苦しく辛い。封印してきた自分の感情を言葉にしていく作業でもある。

それに挑もうとする受刑者とサポートする専門スタッフのドキュメントは観る者にも「では自分はどうか」という自己との対話を迫る。辛い記憶の部分はアニメーション作家・若見ありさ氏の砂絵アニメーションで効果的に描いた。

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