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進次郎氏初入閣、ポスト安倍の権力闘争激化

鈴木哲夫|2019年10月10日10:13AM

【不発に終わった「二階降ろし」】

実は安倍首相は今回の人事で勝負に出ようとしたがそれに失敗したという舞台裏がある。それは何と骨格の一角の二階俊博幹事長の交代だ。そもそも良好な関係に見える首相と二階氏の関係には常に微妙な距離感があったという。首相側近の一人が経緯を明かした。

「二階氏は、党内きっての実力者。安倍首相は好き勝手にやられては困るから幹事長に就けてウィンウィンの関係をキープしてきた。しかし、4選を狙うにしてもそうでないにしてもそろそろ退陣後のキングメーカーへの道筋も考えなければならず、自分の意を汲む後継者を育てたい。一番手は岸田文雄氏(政調会長)、二番手は加藤勝信氏(今回厚労相)などを幹事長にしてそれをやろうとしていた」

ところが9月11日の党役員会前に行なわれた10分間の安倍・二階会談の場で交代を匂わした安倍首相に二階氏が切り返したという。

「二階氏は、本当に自分が辞めていいんだなという趣旨のことを言ったようだ。あとは改憲なども含めどうなっても知らないということだ」(同側近)

さらには二階氏と信頼関係の厚い公明党による首相への直接的な「二階氏留任」の働きかけもあったとの証言もある。今や参議院で自民党は単独過半数はないし、公明党の協力なくしては通常の法案すら通らないし改憲も進まない。公明党の意向は無視できず、幹事長交代を断念したというわけだ。

人事構想の柱を潰された安倍首相も黙ってはいない。二階氏以外の党役員人事にそれは表れている。自らの側近である下村博文選対委員長、稲田朋美幹事長代行、政調会長に禅譲狙いで安倍シンパの岸田政調会長、盟友の麻生太郎副総理の麻生派から鈴木俊一総務会長など、二階氏を取り囲むようにして孤立化させている。

二階氏は菅義偉官房長官と近いとされる。「維新問題なども裏で連携をとっている」(菅氏周辺)ほど。菅氏はポスト安倍の存在感を高め、今回進次郎氏の入閣を主導するなど政局のキーマンだ。安倍首相周辺には「二階・菅連合で政権運営や政局で仕切られる危険性がある」と警戒の声が上がっている。

待ったなしの年金・医療・介護など社会保障、日韓関係、データ改竄など緩んでいる霞ヶ関のガバナンス改革など政策課題は待ったなしだが、新体制は新たな権力闘争を内包した不安定さを抱えている。

(鈴木哲夫・ジャーナリスト、2019年9月20日号)

 

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