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東京五輪、お台場会場は大腸菌だらけ? 
トイレ簡易処理水を放流

永尾俊彦|2019年9月12日11:31AM

【レガシーになる水質改善策を】

これに対して、お台場を泳げる海にする活動を長年続けている港区の榎本茂区議(都民ファーストの会)は「都はお台場を普段は遊泳禁止にしています。東京湾は通常干満差が2メートルあり、スクリーンを三重にしてもすき間から汚濁物質や雑菌は入ります。一緒に研究している東京大学の鯉渕幸生准教授(水工学)も同意見です」と言う。

そもそも、東京湾岸にはタワーマンションなどがどんどん建設されているのに、下水処理場の処理能力が追いついていない。

加えて現在都内23区の下水道の約8割がトイレや台所などからの汚水と雨水を一緒に処理する合流式という問題もある。処理能力を超えた分は、下水処理場の浄化槽を通さず、塩素をまぜただけの「簡易処理水」として放流されるだけでなく、約700カ所の下水排水口から越流水として河川に直接放流される。お台場に近い芝浦水再生センター(港区)の場合、都の下水道局によれば、「簡易処理水」だけで2018年度で年間83日間放流、放流量は1500万立方メートル、東京ドーム12杯分以上にのぼる。都は、区部の合流式を分流式に改築するには、「総額で約10兆3000億円程度と想定」、改築に消極的だ。

榎本さんは、五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)になる水質改善策を提案している。お台場に近接する有明水再生センター(江東区)の高度処理水を圧力をかけて流して大腸菌の流入を抑え、硫化水素などの発生源のヘドロを浚渫、その上に砂をまく案だ。

だが、筆者の取材に、都は「榎本さんの提案は承知しているが、三重スクリーンは効果が出ています」と答えた。榎本さんは、小池知事に直接提案するつもりだ。

別のレガシーの提案もある。東京湾の干潟保全に取り組む「三番瀬を守る連絡会」の中山敏則代表世話人は「東京湾は天然の下水処理場である干潟に囲まれ、江戸前の海の幸に恵まれていました。が、埋め立てが進み、現在自然の干潟は三番瀬と盤洲干潟くらい。水質浄化力のある干潟や藻場を増やせばレガシーになります」と話した。

都も汚濁物を従来の2倍除去できる高速ろ化施設を来夏までに6カ所の水再生センターに導入するなどの対策をとってはいるが、水質が大幅に改善されるかは未知数だ。いずれにせよ本番をスクリーンに頼るのはその場しのぎだ。

(永尾俊彦・ルポライター、2019年8月30日号)

 

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