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靖国神社で南京大虐殺抗議の香港人 
長期拘留の異常さ

中村富美子|2019年8月23日11:35AM

【抗議文をごみ扱いする外務省の非道】

笠原さんに続いて登壇したのは、この日の公判で弁護側証人となった2人。最初に田中宏さん(一橋大学名誉教授)が、自身の経験から、現地で虐殺の歴史がどう受け継がれ、記憶されているかを語った。

田中さんが初めて南京を訪れたのは、まだ国交もなかった1964年。揚子江を見下ろす高台で、現地ガイドから「あの川が真っ赤になったそうです。戦時中のことがあるので、一人では街を歩かないように」と注意されたという。

さらに、日中両国の歴史認識の違いを象徴する出来事として、敗戦40周年にあたる85年8月15日の中曽根康弘首相(当時)の靖国神社公式参拝を取り上げた。

日本政府は法的な問題をクリアすべく準備に1年かけたが、中国ではこの日に合わせ、南京大虐殺の記念館(侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館)と731部隊記念館(侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館)を開館すべく準備していた。後年、田中さんは現地の教員から、こうした記念館建造の背景には82年の「侵略」記述をめぐる教科書問題があると教えられたという。同年に、「歴史教科書」に関する宮澤喜一官房長官(当時)談話が発表され、事態はとりあえず収拾したが、外務省はその意味をまるでわかっていなかったことになる。

2人目の証人は、本誌でこの件を報道してきたジャーナリストの和仁廉夫さん。南京大虐殺の記念日に香港で長年行なわれてきたデモに対し、在香港日本国総領事館の対応が、第2次安倍内閣発足後に著しく後退したことを豊富な取材写真をもとに法廷で証言したと報告。従来は受領していた抗議文も拒否し、ごみとして処理するなど、安倍政権による戦後レジームの変更が、露骨に在外公館に表れていると警鐘をならした。また法廷では裁判官が証拠写真を見ようともせず、聞く態度のなかったことに憤りを見せた。

次回の第7回公判は8月28日。論告弁論と被告人の最終意見陳述で結審し、次々回の10月10日で判決となる見込み。

(中村富美子・ジャーナリスト、2019年8月2日号)

 

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