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有権者の望みは社会保障と福祉

佐藤甲一|2019年8月17日7:00AM

 せめて政権に謙虚さのかけらでもあるならば、二つのことに気がついてほしいものだ。一つは、憲法改正は今や国民の喫緊の関心事ではないということだ。どの世論調査を見ても争点としては1桁台の数字でしかない。憲法改正は3分の2を失った時点で棚にしまい、国民の最も求める課題解決に専念すべきだろう。

もう一つは、その有権者が求めるものを正しく見極めることだ。有権者が望むのはすでに景気回復すなわちアべノミクスの貫徹ではない。一番は年金などの社会保障、二番は子育て・教育などの未来に向けた社会福祉だ。安倍政権下では企業向けのアベノミクスと安全保障問題が最優先課題とされ、個人の生活が後回しにされてきた結果である。

企業を中心とした日本経済全体が上向きになれば、個人の所得も上がり、年金財政も豊かになる、とされてきた説明はもはや信じるに足りないことが、有権者にはわかっている。冒頭で記した熱気のなさは、自民党内における自浄能力の欠如が権力の私物化を生み、与党内に変革の兆しが生まれないことや野党内抗争が繰り返され、6年の歳月をかけても政権担当能力の欠如が続いていることへの有権者の見切りの現れではないのか。

期日前投票の動きなどを見ると、投票率が50%を切るのではないか、という観測も出始めている。生活を脅かされていると有権者が感じたとき、安倍政権、そして自民党政権のみならず、野党にどのような「鉄槌」が下されるのか、参院選挙の注目はむしろ投票率そのものなのではないか。

(さとう こういち・ジャーナリスト。2019年7月19日号)

【編注】2019参院選の投票率は選挙区48・80%、比例代表48・79%。選挙区では前回16年の54・70%を下回り、1995年の44・52%に次ぐ低さだった。

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