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消費税率引き上げ対応と安倍政権

鷲尾香一|2019年7月14日4:52PM

 今回の消費税率8%から10%への引き上げは、過去の消費税導入時、消費税率引き上げ時とは、大きな違いがある。それは、安倍首相の指示により決定した、消費税率引き上げ緩和措置だ。

10%への消費税率引き上げでは、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」については消費税を8%のまま据え置く「軽減税率」が導入される。このため、企業は消費税が「10%の品目」と「8%の品目」に分けて経理処理を行なわなければならない。

最近、コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジスターが新しいものに入れ替わっていることに気付いているだろうか。

コンビニやスーパーには、飲食料品とそれ以外の商品が混在して販売されている。顧客が購入するものも、飲食料品とそれ以外の商品が混ざっているため、会計を8%と10%の二つの消費税率で行なう必要があり、それに対応した「複数税率対応レジスター」への入れ替えが行なわれている。

対応が必要なのは会計だけではない。売上集計、商品の仕入れなどにも対応が必要なため、「受発注システム」や「経理処理システム」などの手直しが発生する。

加えて、クレジットカードやスマートフォンなどでキャッシュレス決済をした場合、引き上げられる消費税率2%分をポイントで還元し、その分を政府が補助するという仕組みが導入される。当然、企業はシステム対応が必要だ。

こうした点を考えると、企業にとって消費税率10%への引き上げ対応は、すでに“待ったなし”の状況になっている。

だが、米中の貿易戦争と相まって、世界経済には減速懸念が台頭している。米国は利上げ政策を凍結し、利下げを模索し始めている。最近永田町で強まっている“解散風”も消費税率引き上げと無関係とは言えまい。消費税率引き上げに対する判断を先送りにしている安倍政権の責任は重い。

萩生田幹事長代行が消費税率引き上げの判断を行なうといった6月調査の日銀短観は7月1日に発表される。それまで、安倍政権は判断を先送りするのだろうか。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2019年6月14日号)

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