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原発事故から「最短潜伏期間」が過ぎ、
福島県で胃がんが「有意な多発」

2019年6月6日12:26PM

本誌2018年3月9日号掲載の「福島で胃がんが多発している」記事から1年。ついに「胃がん多発」と福島第一原発事故との因果関係が推定されるにいたった。

国立がん研究センターの役割は「集計」だけではないはずだ。(撮影/明石昇二郎)

米国のCDC(疾病管理予防センター)では、2001年9月の世界貿易センター事件(同時多発テロ事件)を受け、がんの最短潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency & Types or Categories of Cancer』(改訂: 15年1月6日。以下、「CDCレポート」)を公表している。これに掲載されている「がんの種類別最短潜伏期間」を短い順に示すと、

【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)
【小児がん(小児甲状腺がんを含む)】1年
【大人の甲状腺がん】2.5年
【肺がんを含むすべての固形がん】4年
【中皮腫】11年

となっている。

ただし、CDCレポートで検証したのは、世界貿易センターの崩落で発生した発がん性物質に暴露した人たちのがん罹患状況であり、福島第一原発事故で放射能に暴露した福島県民とは事情が異なる。この点は留意しておく必要がある。

『週刊金曜日』2018年10月5日号掲載の拙稿「福島県で増え続けるがん患者」で報告したとおり、12年から14年の3年にわたり、福島県で「統計的に有意な多発」が確認されているがんは、胃がんである。CDCレポートに従えば、その最短潜伏期間は「4年」ということになる。

このCDCレポートに基づいて考える限り、12年からの3年間の「多発」は、最短潜伏期間よりも早い時期に該当するため、福島第一原発事故が原因と考えるのは難しい、ということになる。

それだけに筆者は、CDCレポートが言う最短潜伏期間を経過した15年の「全国がん登録」(全国がん罹患モニタリング集計)データに着目していた。同データが国立がん研究センターのホームページで公開されたのは、2019年4月24日(水)のことである。

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