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【スクープ】死因不明の“福島病”を生み出してはならない
「急性心筋梗塞ワースト1」で福島県が放った奇策

明石昇二郎|2019年5月25日4:56PM

福島県の公式サイトに掲載されている「福島県急性心筋梗塞死亡実態調査【概要版】」。

「独自調査」では、モニカ基準で判定するほかに、県立医大の医師などからなる「調査員」による評価も同時に実施している。この調査員評価によると、急性心筋梗塞および急性心筋梗塞の疑いと評価された人は260人のうち108人おり、41人だけを急性心筋梗塞および急性心筋梗塞の可能性ありとしたモニカ基準とは数字が合わない。急性心筋梗塞ではないとした数字(疑いを含む)にしても、調査員評価では126人だったのに対し、モニカ基準では42人と、大きくずれている。

これでは、「モニカ基準」「調査員評価」「人口動態統計」のどれが現実に一番即した数字なのか判断できず、説得力も大変乏しい。

つまり福島県の「独自調査」報告は、同県の急性心筋梗塞による死者数を“真偽不明”にしようとするものでしかなかった。こんなやり方がまかり通ってしまうと、福島県が「急性心筋梗塞ワースト1」ではなくなるのと引き換えに、死因不明の風土病――水俣病に倣って言えば福島病――を生み出すことにもなりかねない。

ちなみに水俣病では、病因物質がメチル水銀であると特定されるまでに10年近くの年月がかかっている。メチル水銀説に対し、腐った魚を食べたことが原因だとする「腐敗アミン説」などの異説を唱える学者が次々と現れ、原因が特定されるのを邪魔したからだ。結果、病名はメチル水銀中毒ではなく、地域の名前が付けられることになっていた。福島がそうならないためにも、さっさと「急性心筋梗塞ワースト1」の原因を特定すべきなのだ。そもそも、特定できなければ有効な対策の取りようもない。

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