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高橋伸彰|2019年5月14日5:14PM

戦後日本におけるGDP(国内総生産)の推移をたどると、敗戦後の焼け野原から戦前の水準に復帰するまで10年を要した。復興期を経て高度成長期に入ると10%近い成長率でGDPは拡大を続けたが、1970年代に入ると公害や貿易摩擦などの問題が顕在化、73年末に第1次石油危機が勃発し、翌74年には戦後初めてのマイナス成長を経験した。

それでも70年代半ばから80年代にかけては平均約4%と、先進諸国の中では最も高い成長を遂げた。バブルの最中の87年にはドルベースでアメリカの一人当たりGDPを追い抜き、バブルが崩壊した後も大規模な景気対策に支えられGDPは拡大したが、97年以降は一転して停滞、名目GDPの水準は2016年に至るまで約20年間も97年の水準を超えられなかった。

経済成長とはGDPの拡大に過ぎず、一国の生産活動の水準を表すGDPは必ずしも国民生活の豊かさを示す指標ではない。ただ、「もはや戦後ではない」のフレーズで有名な1956年の『経済白書』を契機に経済成長が人口に膾炙されて以来、多くの国民は統計的な意味や制約に関する正確な知識を持たないまま「成長という言葉の持つイメージに直感的に反応し、それで計られる日本経済の規模拡大を、まるでわが子の背丈を測る柱のキズのように」眺めていたと、日本経済史が専門の武田晴人(『高度成長』岩波新書、2008年)は言う。

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