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NHKまで踊らされた
熊本地震「地盤リスク」説

明石昇二郎|2019年5月1日4:05PM

Nスペの放送後、益城町の家屋倒壊被害は「地盤」が決めたのであり、町内を通る活断層の影響など考えなくても説明がつく――とする風評が生まれてしまったのだ。

だが、地盤によって地震動が増幅されることは、熊本地震によって初めて判明した事実ではなく、地震研究のイロハである。従って「新たな脅威」と言うには無理がある。にもかかわらず、こうした言説を学会の場で主張する研究者まで現れた。

その根拠は、
「観測された強い揺れの波形は、他の地点のデータを表層地盤の分だけ増幅させる計算結果と完全に一致するから(それ以外の影響を考える必要はない)」

納屋(上)と消防小屋(下)。(益城町「平成28年熊本地震」震災遺構リストより)

というものだ。いわば「悪さするのは地盤だけであり、活断層は大丈夫」説の登場である。

この騒ぎに拍車をかけたのが国土交通省だ。Nスペの放送直前の17年3月、国交省都市局市街地整備課が出した「熊本地震からの益城町の市街地復興に向けた安全対策のあり方等に関する最終報告」の中で、
「活断層のズレが主要因と考えられる建築物の倒壊は認められなかった」
とする見解を示したのだ。

しかし、益城町の「震災遺構」になっているものの中には、ずれた断層の上に建っていて破壊された消防小屋や、活断層の真上にあった納屋が隣の自宅に倒れかかった状態のものもある(写真参照)。国交省の報告は、現実に目をつぶった的外れの主張と言うほかない。

NHKの看板番組による「地盤リスク」報道と、国交省の「最終報告」が相乗効果で生み出していたのは、
“活断層の直上やごく近い場所であっても危なくない”
という、世間の誤解でしかなかった。

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