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女性初の国会議員・佐藤きよ子さん逝去 
困窮者に寄り添い続けた生涯

粟野仁雄|2019年3月15日12:23PM

佐藤きよ子さん。(2016年7月、兵庫県宝塚市の自宅で。撮影/粟野仁雄)

戦後、女性初の国会議員の一人となり、唯一存命だった佐藤きよ子さんが昨年10月26日に老衰のため亡くなっていたことがわかった。享年99。1919年に大阪市に生まれ、喫茶店経営やアパート経営などをしていた。46年4月、26歳の時に実施された戦後初の衆院選で「食糧の確保と1人3畳の住まい」の公約を掲げて大阪1区から立候補、当選した。女性参政権が初めて認められたこの選挙では39人の女性が当選したが、佐藤さんは翌年の衆院選で落選した。

朝日新聞社のカメラマンと結婚し、兵庫県西宮市に居を構えていた60年代、「違法マンション」で陽光が遮られたため裁判を起こし話題になった。この戦いで「日照権」の概念が確立され、佐藤さんは「日照権おばさん」として有名になった。また、大阪市西成区の釜ヶ崎でホームレスの支援活動などを行ない、武庫川(兵庫県)でもホームレスに毛布を配っていた。

夫が亡くなってからは宝塚市の自宅で一人暮らしだった。

議員時代は現行憲法作成の勉強会に参加した。女性議員団でD・マッカーサー連合国軍最高司令官を訪問した時は、彼の手を握り「飢えている子どもたちを助けてください」と訴えた。

2016年7月に筆者が取材訪問した際、「我ながら大胆でしたが、マッカーサーは威張り散らしていた日本の軍人とは違い紳士でした。戦争も勝てるわけないと思った」と回顧した。商才がありアパート経営で今なら億単位の金を20代で稼いだ。「大金の使い道もわからず、別の世界に飛び込みたくなった時に選挙があった。大阪では女がちっとも立候補しないから立候補したのよ。私が一番若く、珍しさもあってか当選した」などと快活に語った。そして「女の政治家が増えないと駄目。男は権力欲ばかりですぐ戦争になってしまう」と力説していた。著書に『日本初の女性国会議員 きよ子・95歳の人生奮闘記』(14年 宝塚出版)などがある。合掌。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2019年3月1日号)

 

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