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東京・新宿の小学校で指導要領違反 
道徳研究で「◎○△」評価

永野厚男|2019年3月6日10:14AM

国立教育政策研究所の研究協議会でも道徳の評価は主テーマになった。2月7日、
文科省内で。(撮影/永野厚男)

文部科学省国立教育政策研究所実践研究協力校であり、東京都教育委員会道徳教育推進拠点校でもあった新宿区立落合第一小学校(表迫信行校長)は1月25日、道徳研究発表会を開催した。

参加者に配布した『研究紀要』は児童ごとの一覧表で、ア「自己を見つめる」、イ「物事を多面的・多角的に考えている」など3観点別に、◎○△印の評価を記入している旨、明記している。

アの“評価基準”は、△=自分事として考えることが難しかった、○=これまでの自分の経験やそのときの感じ方、考え方と照らし合わせることができた、◎が「照らし合わせ」の後に「ながら、さらに考えを深めることができた」と続ける。イの△は「一面的な見方をしていた」だ。

この“評価”について筆者の取材に、伊東毅武蔵野美術大学教授と池田賢市中央大学教授は(1)記号での仕分けは文科省小学校学習指導要領「特別の教科 道徳」の「数値などによる評価は行わないものとする」との規定に反し「問題だ」、(2)親切・自立など内容項目ごとの評価例掲載は「大くくりなまとまりを踏まえた評価とする」と明記した2016年7月の同省通知違反、と語る。

発表会を参観した市民らは1月31日、これら“評価”の調査と是正を求める請願を新宿区教育委員会に提出し、統括指導主事らと面談。同教委は落合一小への聞き取りを実施し、2月1・4・12日、市民側に以下、回答した。

(1)「◎○△」印は担任が児童を継続して把握し易いように伝える象徴的な印だが補助簿にはこの印は記さず記述式で書いている、(2)「……難しかった」等マイナスの文言を補助簿に記述するか否かは担任判断だが、それを通知表にそのまま転記することはしていない、(3)今後小中学校とも校長会で、指導要領等にある通り「数値などによる評価」をやってはいけない旨周知する、(4)請願は酒井敏男教育長に供覧し決裁を取り教育委員にも定例会前の時間に報告する。

戦前、某尋常高等小学校の修身科は「我が国体の他国に優れた点如何。皇大神宮を私どもが尊崇するわけ」など思想を問う試験を実施。通信簿に“甲乙丙……評価”を行なっていた。こういう過ちを繰り返してはならない。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年2月22日号)

 

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