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玉城沖縄県知事、訪米で国務省などの高官と面談

横田一|2018年12月14日12:11PM

11月14日、国務省・国防総省の高官と面談する玉城デニー沖縄県知事。(右・提供/沖縄県)

11月11日から16日まで訪米をした玉城デニー沖縄県知事は現地時間14日10時半から、ワシントンで国務省のマーク・ナッパー国務次官補代理と国防総省のポール・ボスティ日本部長代行と面談。しかしその終了後、国務省は「.普天間代替施設(辺野古新基地)建設の約束は揺るぎない」との声明を報道関係者に発表。父が海兵隊員の玉城知事が県知事選で示された民意をアメリカ政府に伝えても、「辺野古が唯一」という日本政府と同じ主張が繰り返された。

玉城知事はこの面談で、新基地予定地の軟弱地盤問題を説明した上で、「『辺野古が唯一』と言っている限りデッドロック(行き詰まり)だ」という警告を発していた。

「『これから先、(軟弱地盤を強化するための)地盤改良などがあった時は知事の許可を求めないといけない。その許可を出すのは知事自身なので、この工事にはまだまだ完成までに時間がかかることは十分に予測される』と言っておいたが、国務省や国防総省からはコメントはなかった」(玉城知事)

日米両政府への批判が噴出する事態が予測される近未来図を玉城知事は示したともいえる。マヨネーズにもたとえられる軟弱地盤上に土砂投入をしても〝欠陥基地〟にしかならない可能性が高い。米軍の使用に耐えるようにするためには新たな地盤改良が不可欠だが、現行計画からの設計変更を伴うので知事の許可が必要(玉城知事は不許可の方針)。

だからこそ玉城知事は、日米両政府に対して「辺野古が唯一」の方針を撤回して沖縄県と対話することを呼びかけたのだ。そうしない限り、「莫大な予算(税金)を投じて美しい海を破壊した挙句、普天間代替施設として機能しない埋立地を作るのか!」といった疑問や怒りの声が日米両国民に広がることを警告したともいえる。

名護市議会で軟弱地盤問題について何度も質問をしている東恩納琢磨市議は、こう話す。

「防衛省は新基地予定地の地質調査をしており、想定以上の軟弱地盤であることに気がついているのは間違いないが、アメリカ側に正確に伝えているのかは疑問でした。今回、玉城知事がアメリカ政府の担当者に軟弱地盤問題を説明したのはおそらく初めてのことで、非常に意味があったと思います」

沖縄の地元記者もこう話す。

「これまで『日本政府が軟弱地盤問題についてアメリカ側にきちんと説明をした』と聞いたことはない。今回、玉城知事から初めて事の重大さを知らされたのではないか。国務省や国防総省の中で『軟弱地盤問題について検証する必要があるのではないか』との疑心暗鬼が芽生えても不思議ではない」

【再訪米の可能性も】

しかも玉城知事は同日午後、民主党のメイジー・ヒロノ上院議員とデイビッド・プライス下院議員とも面談をした。中でもプライス下院議員からは「議会対策で協力する」という発言が出た。

最後の総括的な囲み取材で玉城知事は「(米国議会で辺野古問題が取り上げられる)可能性は十分あると思います」と語り、今後の日米野党連携が具体化することを期待した。

ただしメインイベントになると見られた「海兵隊関係者との面談」は実現しなかった。このことについて玉城知事は「残念」と悔やみつつ、「海兵隊関係者との面談が実現した場合、『私は海兵隊員の息子です』と伝えたい」とも語り、再度の訪米の可能性を否定しなかった。海兵隊関係者との面談が実現すれば、使用する米軍側に軟弱地盤問題を説明する貴重な機会になるのは言うまでもない。

再訪米は、来年2月に実施される県民投票の結果をアメリカ側に伝える機会にもなる。玉城知事は、「(県民投票後に)できれば訪米したいが、レターでの報告になるかはこれから検討していきたい」と再訪米の可能性を示唆した。

準備不足が心配された今回の訪米であったが、沖縄の民意を無視する日米両政府に対して、日米の野党連携で追及する取っ掛りを作るなど成果をあげた。今後の玉城知事の動きが注目される。

(横田一・フリージャーナリスト、2018年11月30日号)

 

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