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多摩大学祭に装甲車? 
市民の要請で自衛隊の参加中止

永野厚男|2018年12月5日10:29AM

都教委が2014年2月、田無工業高校生に江東区内で実施した〝防災〞訓練。(撮影/永野厚男)

「平和都市宣言の街である東京都多摩市に位置する大学の学園祭に、自衛隊がブースを出し、装甲車も来るのは取りやめて頂きたい」。多摩市民らが11月1日、緊急要請行動したのを受け、大学当局は11月3日朝、代表者に「自衛隊は中止します」と連絡してきた。

私立多摩大学は、「多摩祭に自衛隊がやってくる! 11/4(日)10:00~16:00」と題し、鉄兜・戦闘服の隊員が乗る機関銃付きの装甲車6輌が行進する写真を掲載したチラシを、10月下旬の『朝日新聞』等に折り込み宣伝した。

これに驚いた「戦争いらない多摩市民連合」の永井栄俊さんや「多摩市九条の会」など、同市在住の市民13人が11月1日、同大学の担当者の教授ら(以下、担当者)に抗議・要請行動を行なった。

冒頭、市民側が「安倍晋三首相の憲法改定発言で、自衛隊を巡る世論は大きく分断している。特に2015年、集団的自衛権行使の強行採決の際、国会前で10万人超の市民が抗議した事実は、海外でも報道。貴校は政治的中立を維持し、自衛隊の学園祭参加を取りやめること」など、要請文を読み上げた。

担当者は「装甲車1輌が来る」とし、その行進写真のチラシ掲載理由を「自衛隊のイメージを知ってもらいたくて。実際に来れば、装甲車を手で触ることができるし、実際の自衛隊を知って頂きたいというのが趣旨だ」と、自衛隊広報官のような説明をした。

市民側が「写真の隊員は鉄兜を被っている」と指摘すると、担当者は「これはヘルメットだ。道路を走っているとどこから石が飛んでくるか分からないから」と反論。

市民側が「大学前の道路を走っていて、石が飛んできますか? (弾が)飛んでくるのは戦場でしょう。この写真は戦場をイメージさせるもの。そのイメージを多摩市民に広報させようとしたのですね」と述べると、担当者は「高速道路を走っていると石が飛んでくる。いろいろな道路で石や何やらが飛んできて危ないので」と、正対しない回答に終始した。

この後、市民側が「平和についてきちんと教えているのですか。自衛隊は軍隊であり、戦争のためのものでしょう」と質すと、担当者は「自衛隊は平和のためのもの。皆さんとは思想が異なっている」と回答。

市民側が「平和を言うことが思想なのですか。一般に『思想』と言う時、特別なイデオロギーを指すことが多い。『平和』は憲法が明記しているものでしょう」と反論すると、担当者は「まるで脅迫されているようだ」と放言。これに対し、市民側が「脅迫というのは犯罪でしょう。そんなことをしているというのですか」と反論し、担当者が「撤回します」と述べる一幕もあった。

なお、4日に学園祭に行くと「抗議はご遠慮下さい」と貼紙が。市民は「嫌がらせでは」と語る。

【都立高校でも自衛隊連携】

ところで東京都教育委員会は、(1)13年7月、都立田無工業高校のラグビー部等の男子生徒34人対象に陸上自衛隊朝霞駐屯地で、(2)14年2月、同校2年生全員対象(参加率は82%との報道あり)に江東区の都の施設で、(3)14年11月、都立大島高校2年生全員対象(参加者は全35人中16人)に同武山駐屯地で、迷彩服の自衛隊員を“指導者”とする2泊3日の宿泊訓練を実施した(宿泊・食事代、交通費等はすべて税金)。都教委は“防災”と称しているが、(1)(3)は行進訓練や早朝5時の非常呼集等、軍事色の濃い訓練も強行した。

また今年度、都教委は“募集”する文書に“希望”を出した都立立川国際中等教育学校等5校に、自衛隊員が来て防災講話を実施すると、6月14日に決定している。

これらは都教委が「校長権限を強化=職員会議を実質形骸化」し、疑問視する教職員がいても、権限を握る官僚の施策を強行させる上意下達の学校組織にしたのが元凶。

多摩大のケースも同様、リベラルな寺島実郎学長がいても、一部権限を握る担当者らが一時、自衛隊参加を進めていた、と言えよう。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、2018年11月23日号)

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