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全域「ブラックアウト」はなぜ起きた? 
露呈した北電インフラの脆弱性

平田剛士|2018年9月25日12:24PM

大半の街灯や信号が消えた国道12号(札幌-旭川間)を低速走行する車。9月6日午後7時半、滝川市内で。(撮影/平田剛士)

9月6日未明、北海道胆振地方東部を震源とするマグニチュード6・7の地震が発生。厚真町では最大震度7の揺れが広範な山崩れを引き起こし、山際の住民たちが巻き込まれた。また震度6弱を記録した千歳市や札幌市をはじめ、道央各地で建物や道路などが壊れた。

さらに本震から間もなく北海道全土で電力供給が途絶した。夜明けまで2時間を残し、広大な島が丸ごとブラックアウトした。

大停電の直接の原因は、厚真町の太平洋岸に建つ北海道電力・苫東厚真火力発電所(総出力165万キロワット)が激震で壊れたこと。同社などによれば、同発電所はそれまで道内需要の約半分をまかなっていたが、それが急にダウンしたために需給バランスが崩れ、残る他の6カ所の火力発電所や56カ所の水力発電所までもが巻き添えを食う形で無傷のまま一斉にストップしてしまった。

いったん止まった発電所の起動には手間がかかり、停電が解消され出したのは早い地域で同日午後から。同じ自治体内でも大きな時差が生じ、「残されたエリア」の住民を苛立たせた。定住者197万人に加え多くの観光客が滞在中だった札幌市内では、場所によっては最長で丸2日間停電が続き、水道・交通・通信などのインフラ障害を誘発して大混乱に陥った。

【再生エネ、活用できず】

一方、震源から200キロあまり、オホーツク海に面した紋別市(震度1~2)では、何とも不条理な状況が生じた。市街地に出力5万キロワットの新鋭の木質バイオマス発電所が建ち、他にもあちこち無数のソーラーパネルが日光を浴びていたのに、家庭はおろか基幹産業に重要な漁港冷蔵施設にすら電気が回って来なかったのだ(バイオマス発電所は携帯電話の臨時充電場所を提供)。市域の停電解消は7日深夜にずれ込んだ。

紋別にとどまらない。2011年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、北海道ではとりわけ過疎地で大型風力・太陽光・バイオマス発電所の建設が進んだ。資源エネルギー庁のまとめでは、昨年末現在の道内の再生可能エネルギー施設の導入容量は、「苫東厚真」と肩を並べる計138万キロワット。だがブラックアウトのさなか、これら施設は軒並み空転、あるいは停止していたとみられる。

大半は東京など道外資本による発電所で、FITの下での売電先はあくまで北海道電力。地場の自然資源から電気を大量生産しながら、それを地元に還元する考えや仕組みは、わずかにも備えられていなかった。

星だけがぎらつく大停電の夜空に、この国のエネルギー政策の酷薄さが映し出された。

(平田剛士・フリーランス記者、2018年9月14日号)

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