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李政美さん2

小室等|2018年8月15日12:05PM

在日コリアン二世の李政美さんの国籍は北朝鮮だったが、現在は韓国。一九六三年、彼女の母上は北朝鮮に住む身内に会いたい思いが募り、北朝鮮に行く手続き上、韓国籍を取得したのだが、そのとき六歳だったちょんみさん(名を単独で発音するときはリエゾンせずにちょんみとなる)もついでに韓国籍に変更したのだそうだ。現在ではご家族全員韓国籍に。

そうそう、ご家族。僕がよく知っているのは、上のお姉さん。腕のいい気功整体師で、僕の音楽活動五〇周年ライブのとき、楽屋で腰痛の応急施術をしていただき助けられた。下のお姉さんは、一時期東京・葛飾区立石で韓国家庭料理店を開いていた。料理の腕はたしかで、永六輔さんもお気に入りだった。たしかキムチ作りは現在も継続、これが実に美味しい。

ちょんみさんは高校まで朝鮮学校に通う。日常に日本人との必要な接触はあるが、情の通う日本人との付き合いはほとんどなかったという。そのせいかどうかはわからないが、日本人との関係で、特筆するほどの嫌な思いを体験したことはないそうだ。

朝鮮学校で民族楽器の部活に夢中になりながらも一方で、民族教育という環境の中、自分はミッシェル・ポルナレフが好きなのに、その手の音楽に接するのは歓迎されなかったりすることに違和感を持ちはじめてもいたそうだ。

日本との付き合いで嫌な思いが少なかったとちょんみさんは言っていたが、在日の宿命として嫌な思いがなかったはずはない。チマチョゴリの制服を着て学校の行き帰り、日本人から差別的な声を浴びせられること等々は、在日みんなの日常的共通体験だ。辛淑玉さんは傷つきボロボロになって今ドイツに避難していると、ちょんみさんは友を気遣う。

二〇一七年一月二日に放送されたMXテレビの「ニュース女子」沖縄問題で、どこかの大学の特任教授氏が、「『ニュース女子』で共演した私だから言える!」とネットで自説を述べている。

「『のりこえねっと』は、米軍基地反対運動を行っているが、もし沖縄に基地がなくなれば、おそらく1年もかからないうちに中国に占領されるだろう。ちなみに、この団体の中心人物は在日外国人である」というくだり。妙なことにそのことに係る説明は前後どこにも一切なし。つまり在日外国人ということに暗黙の了解事項があるのだから説明不要、ということ?これヘイトスピーチだよね。

“中心人物辛淑玉さん”を、ちょんみさんを、在日の人々を、悪意を持って傷つけていることに、特任教授氏は気づいていない。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年7月13日号)

(編注)本文冒頭の「国籍は北朝鮮」について、小室等さんは8月24日号で、補足説明しています。https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2018/09/17/komuro-26/

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