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袴田事件、東京高裁は再審認めず
弁護団「結論ありきの手抜き決定」

小石勝朗|2018年6月27日6:06PM

東京高裁の逆転決定を支援者に伝える弁護団のメンバー。(撮影/小石勝朗)

1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」で、死刑が確定した元プロボクサー袴田巖さん(82歳)の再審請求に対し、東京高裁(大島隆明裁判長、菊池則明裁判官、林欣寛裁判官)は6月11日、静岡地裁の再審開始決定を取り消し、請求を棄却する逆転決定を出した。袴田さんの弁護団は最高裁へ特別抗告する。

2014年の地裁決定は、再審開始の要件である「新規・明白な証拠」の一つとして本田克也・筑波大学教授(法医学)のDNA鑑定結果を認めたが、高裁ではその手法の有効性が争点になった。

高裁は決定で、唾液や皮脂などが混じった血痕から血液のDNAだけを取り出す本田氏の選択的抽出方法に対し、「科学的原理や有用性には深刻な疑問が存在している」と否定的見解を示し、地裁決定がこの手法を「過大評価している」と判断。犯行着衣とされた「5点の衣類」のシャツに付いた血痕のDNA型が袴田さんと一致しないとした本田氏の鑑定結果は「信用できない」と結論づけた。

地裁が指摘した「警察による証拠捏造の疑い」に対しても「具体的な根拠に乏しく、抽象的な可能性を言うに過ぎない」と退け、「袴田さんを犯人とした死刑判決の認定に合理的な疑いが生じていないことは明らか」と断じた。

ただ、地裁が出した死刑と拘置の執行停止については「袴田さんの年齢や生活状況、健康状態に照らすと、棄却決定が確定する前に取り消すのが相当であるとまでは言い難い」として覆さなかった。

西嶋勝彦・弁護団長は「本田氏の尋問の際に裁判所からの質問はほとんどなかった。結論ありきの手抜き決定で、到底承服できない」と非難。袴田さんの姉の秀子さん(85歳)は「大変残念な結果ですが、身柄拘束しないとのことで一安心しています。50年闘ってきたのですから、今後も頑張っていきます」と淡々と語った。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2018年6月15日号)

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