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高プロ、ただ働き青天井の恐れ

浜矩子|2018年6月14日7:15PM

日本の常識、世界の非常識。この言い方がよく出てくる。当たりの場合もあるが、はずれの場合もある。当たりの場合はいいが、はずれの時に妙に焦ると危険だ。はずれを当たりと思い込んで(あるいは思い込まされて)、行ないを改めてしまうと、後で泣くことになる。

今、二つの面でこの問題が発生しかけていると思う。その一が「働き方改革」なるものを巡って。その二が「消える現金」というテーマに関して。

政府が「働き方改革」と称している構想の中に、「高度プロフェッショナル制度」というのがある。ご承知の通りだ。働いた時間の長さではなく、成果に対して報酬を支払う。専門職で年収が高い人を対象に、この方式を導入しようというのが、その趣旨である。脱時間給制という表現も使われる。

このやり方は、いまや、世界の常識だといわれる。日本で、この方式になぜ異が唱えられるのかわからない。日本には、世界の当たり前が通用しない。時代遅れだ。これだからダメなのだ。この種の論評をよく見かける。

これはおかしいと筆者は思う。なぜ、世界の常識が日本の常識にならないのか。まずは、それを考えるところから始めるべきだろう。日本の常識が非常識だと即座に決めつけるのは、短絡だ。そもそも、世界の常識が非常識な場合もある。日本に、世界の常識を非常識化してしまう環境要因が存在する場合もある。

脱時間給制に関しては、後者の問題がある。日本においては、脱時間給制が「専門職で年収が高い」とはいえない人々に対しても、拡大適用されていく恐れがある。それを回避するための体制や風土が十分に整っているとはいえない。下手をすれば、ブラック企業によるただ働き青天井化の手段になりかねない。この辺の不安が残る中で、脱時間給をゴリ押しすることこそ、非常識極まりない。

「消える現金」問題についても、大いに注意を要する。日本は現金大国だといわれる。これが世界の常識に反するのだという。世界は、いまやどんどん現金離れしている。紙幣や硬貨は、世界の街中から消えゆきつつある。中国でも、韓国でも。スウェーデンでも。電子マネーやクレジットカードが幅広く使われているし、いわゆる「仮想通貨」(筆者的にいえば仮装通貨)を使った電子決済も増えている。いつまでも、お財布に現金を入れて持ち歩いている日本人は、世界の常識に取り残されていく。そんな論調が、これまた多い。

だが、一寸先は闇の今の世の中、手元に現金を置いておきたいと考える日本人の感覚は、とてもまっとうだ。銀行におカネを預けておいても、まともな金利はつかなくなって久しい。ひょっとすると、マイナス金利をつけられてしまう日がくるかもしれない。政府が借金を踏み倒したら、そのおかげで潰れる銀行が出てくるかもしれない。こんな不安が頭の中をよぎる時、人々が現金志向を強めるのは、実にもっともだ。

世界の常識論には、簡単に丸め込まれない。それが常識ある人間の対応だ。

(はま のりこ・エコノミスト。2018年6月1日号)

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