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麻生大臣に86人の女性ジャーナリストらが発言撤回と謝罪を要求

岩崎眞美子|2018年6月6日12:07PM

記者会見に臨む林美子氏(右)と松元千枝氏。WiMNの最新情報は URL https://www.facebook.com/WiMNJapan/ で。(撮影/岩崎眞美子)

「ほとんどの女性記者は、取材の中でセクシュアル・ハラスメントを受けてきました。例外の人はまずいないのではないか」

5月15日、厚生労働省で行なわれた「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」設立記者会見で、代表世話人のジャーナリスト、林美子さんはそう訴えた。

「WiMN」は福田淳一・前財務事務次官のセクハラ問題をきっかけに結成された、新聞やテレビ、出版などの現場で働く女性たちのネットワークだ。テレビ朝日の女性記者の告発は大きな報道に繋がったが、その後もセクハラを構造的な問題として捉え直し、なくしていこうという動きはいまだ見られない。そのことに危機感を持った女性たちが集い、5月1日に結成した。15日までに31社86人(フリーランスを含む)が参加。今後もネットワークを拡大する予定だ。

【「仕事の一部」として強要】

同会は15日付で安倍晋三首相、麻生太郎財務大臣、野田聖子女性活躍担当相、テレビ朝日に対して要望書を提出。特に麻生大臣に対しては、度重なる被害者への二次被害的発言の撤回と謝罪を要求し、自らセクシュアル・ハラスメントの研修を受けるよう要望している。

ジャーナリストとして、社会で抑圧され、なかったことにされている被害者たちの「声にならない声」を取材してきたつもりだったが、セクハラに関しては、自分たち女性記者こそが「声なき声の当事者であった」と林氏。記者全体のうち女性記者はわずか2割、世界経済フォーラムが出したジェンダーギャップ指数では、日本は144カ国中114位である現状に触れ、法制度上は「平等」でも、現場では性差別的な権力構造が根強く、女性たちの人権、尊厳が守られていない現実を訴えた。

「取材先や所属する組織内でセクハラはまだ存在している。これまで、ジャーナリズムに携わる多くの女性たちが、恥ずかしさや、取材先の関係を心配してなかなか声を上げてこられなかった。私たちは今回の女性記者の告発に勇気づけられた。今こそ、セクシュアル・ハラスメントを含むありとあらゆる人権侵害をなくすときと決意を固めています」(林氏)

続いて同じく代表世話人の松元千枝氏が「WiMN」会員から集めたセクハラに関する「紙上リレートーク」を紹介した。

「長い記者生活の中でさまざまなセクハラに遭ってきましたがどれも誰にも打ち明けていません。会社では男性の同僚が、女は寝てネタが取れるからいい、と話し、男性の先輩たちには、私が気に入られれば仕事がしやすい、と言われてきた」(新聞・通信社勤務)

「駆け出しの支局員時代、初めて夜廻りに言った先の警察幹部に『車の中で聞こう』と言われ、助手席に座ったとたん抱きつかれキスをされそうに。県警キャップの男性記者に訴えたら『訴えた場合、相手も傷つくがおまえ自身も〈取材先を売るのか〉と警察に言われ傷つくことになる』と言われ断念した」(新聞・通信社勤務)

発言の多くが、女性記者たちがセクハラを「仕事の一部」として耐えることを強要され、誰にも相談できず、声を上げようとしても封じ込められてきたという現実を赤裸々に伝えるものだった。同ネットワークでは一部のメンバーを除き、参加メンバーの氏名や所属は公開されない。取材先でも社内でもセクハラがあり、それが問題であることすら意識共有ができない中で、組織に身を置きながらの告発は、現段階では不利益を被ることが避けられないからだ。

「これまで分断されてきた女性たちが、お互い支え合い、エンパワーしていく場として繋がっていきたい。安心な場所で率直に語り合える場を作り、問題意識を共有していくことが大切。これを第一歩として女性が働きやすい環境を作っていきたい」(松元氏)

メディアがまず自分たちの現場から、セクハラや人権侵害をなくすこと。そうでなければ社会の不正義を告発するジャーナリズムの根幹が崩れてしまう。その瀬戸際で踏みとどまるための重要な一歩が示された会見だった。

(岩崎眞美子・ライター、2018年5月25日号)

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