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【憲法を求める人々】中川智子

佐高信|2018年5月27日7:00AM

 4月19日、女人禁制の見直しを求める要望書を持って日本相撲協会を訪ねた中川を迎えたのは、広報部長の芝田山だった。元横綱の大乃国である。

芝田山はおみやげに有名な長命寺の桜餅を渡したが、中川は、
「親方は“柏餅”を下さって、とても優しかった」
と感想を述べ、彼をガッカリさせたらしい。

しかし、そうした早とちりはともかく、中川の行動力は抜群である。ちょうど20年前に出た中川の半生記『びっくり』(現代書館)を読むと、目を見張る。

学生時代、好きで好きでたまらなかった男性に、
「おまえは無鉄砲だからな。こわいもの知らずだから心配だよ」
と言われた突進力は、大学祭の実行委員になってフル回転する。

アンケートをとったら、講演を聞きたい人の1位が小林秀雄で、大江健三郎、三島由紀夫と続いた。それで中川は小林に手紙を書く。返事が来て「講演の依頼あまりに多く、とてもお引受けできませぬ。義理人情でのっぴきならぬものの他すべてお断りしている次第。悪しからずご了承され度く 小林秀雄」とあった。

大江に電話したら、本人が出て、中川は焦った。講演をお願いしたいと言うと、女子大は恥ずかしくて嫌だと断られた。怖いのだという。

いろいろ断られて寺山修司に電話をすると、天井桟敷の劇団員が出て、寺山が「一度会ってみて」と言っているとのこと。それで出かけて、広い部屋で向き合い、中川は突然、寺山に尋ねた。

「寺山さん、思想って何ですか?」

その答がとても説得力があり、講演は引き受けてもらえた。

「君とゆっくり話がしたいから、近いうちにもう一度来て下さい」
と言われて、また訪ねた中川は、
「君のそばに座っていると、それだけでポカポカ温かくなるね。心も体も安らげる。あなたは、その存在自体が、人を幸せにする不思議な力を持っているから、それを大切にするといいよ」
と、いまも中川の“宝物”となっている言葉をもらった。

20歳で船会社に就職した中川は女性差別甚だしい現実に直面し、組合運動にのめり込んで、女性だけの試用期間の撤廃や賃金格差の是正に取り組む。

それからの恋物語等をたどっていると、それだけで終ってしまうので、ミニ幼稚園経営、学校給食改善運動、震災被災者救援活動、そして乾燥糸コンニャク販売会社設立を経て、土井(たか子)チルドレンの1人として国会議員となったところまで飛ぶ。この時代に私は彼女と知り合い、選挙の応援にも行った。

その後、落選とか、いろいろあって、さすがに落ち込んでいた彼女を宝塚市長に立候補するよう、2日がかりで口説いたのが元国立市長の上原公子である。

中川から推薦を求められた時、私は、応援するのはいいけど、当選したら大変だな、と思った。行政の実務経験がないことを心配したのだが、上原がついていれば、それは杞憂である。実際、上原は中川にピッタリとくっついて現在も伴走している。

2期目だったかと思うが、選挙前の集会に来てと中川に頼まれて行ったら、弁士は野中広務と私だった。「こわいもの知らず」で野中と親しくなり、こうした集会にも引っ張り出す中川に、改めて私はビックリした。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、2018年5月11日号。画/いわほり けん)

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