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名古屋城「忠実復元」にエレベーターは不要?
河村市長の決断は

井澤宏明|2018年5月22日12:55PM

5月1日、来場者でにぎわう名古屋城天守。車いすやベビーカーも目立った。(撮影/井澤宏明)

金のシャチホコで知られる名古屋城。戦後復興の象徴として約60年前に再建された鉄筋鉄骨コンクリート造の現天守は石垣調査のため、5月7日から入場禁止になった。2022年末の「木造復元」に向けて来年3月から取り壊しを始める予定だが、今頃になって新天守にエレベーターを設置するか否かを巡り論争が起こっている。

ことの発端は昨年11月、「史実に忠実な復元」のため、市がエレベーターを設置しない方針を示したこと。これに障がい者団体などが反発し、市は再検討を始めた。

4月24日には、初めての有識者会議が開かれ、市は、(1)エレベーターを設置せず新技術を開発(2)天守内部に3階(最上階は5階)までの4人乗り小エレベーターを設置――などの検討結果を示した。

福祉や工学の専門家からは「4人乗りではとてもじゃないけど問題」「避難時はエレベーターしかない」などエレベーターの設置を当然視する声が多く上がった。一方、建築専門家から「階段昇降車いす設備で対応できると思う」という意見が出され、福祉専門家があきれた表情をする場面もあった。

天守からの景観を体感できるVR(仮想現実)技術の活用を市が検討していることについては、「VRでいいのなら、(新天守を)造らなくていい」と疑問も示された。

「県重度障害者の生活をよくする会」の近藤佑次さん(32歳)はオブザーバーで参加。車いすから発言し、「新しく建てる建物が今より使いづらくなるのはおかしい。公共の事業なのですべての人が利用できるべきだと思う」と訴えた。

河村たかし市長は閉会時、「技術関係の人にエレベーターに代わるものができるかお願いしとる」と述べ、設置に否定的な考えをにじませた。市長はこれまでも、「ボランティアに背負子を持って上がってもらったら」とバリアフリーに消極的な発言を繰り返してきた。市は5月中に結論を出すという。

(井澤宏明・ジャーナリスト、2018年5月11日号)

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