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沖縄県知事選にらみ政治的な駆け引きが加速

2018年5月1日5:13PM

オール沖縄で翁長雄志知事を支援する企業のかりゆしグループが4月3日、「オール沖縄会議」からの脱会を表明した。3月13日に共同代表を正式に辞任した金秀グループの呉屋守將会長に続く脱会は、今後の沖縄の動向にどんな影響を与えるのか。

かりゆしグループと金秀グループは保守・経済界の主要企業、「オール沖縄」の顔としてこれまで同会議の主要な構成幹事団体として活動を共にしてきたが、県民投票の実施方法をめぐる意見の不一致や、名護市長選挙での大敗の責任を取る形で相次いで同会議から脱会した。両グループが脱会に至った一番の要因は県民投票とされる。しかし、それぞれのグループでもその実施方法や考え方には大きな隔たりがある。

金秀グループの呉屋会長は「県民が署名を集め県民主体で実施することで反対の民意が再び示される。埋め立て承認撤回の公益性の根拠になる」と主張。一方、かりゆしグループと沖縄県議会の与党「会派おきなわ」は知事が先頭に立ち知事発議で行なう県民投票の実施を提案。与党3会派(社民・沖縄社会大衆党・結連合会派、会派おきなわ、共産党会派)がまとまり県議会で知事へ伝える時期を探ってきたが、3会派内でも意見は割れ、結論が出せていない。

また、連合沖縄や自治労といった「オール沖縄会議」の構成団体は過去に県民投票を実施した経験から慎重論を展開。県民投票を行なうことで生じるリスクよりも、数々の違法工事を強行する政府に条件を突きつけ、知事が「撤回」を行なうことが重要だと訴えている。同会議事務局は撤回の時期については政治的な判断になる可能性が高いとして、知事に全てを委ねる考え方を示している。

【「知事を支える」変わらず】

そんななか、翁長知事の膵臓に腫瘍が見つかったというニュースが飛び込んだ。4月10日、知事が浦添市内の病院で記者会見し明らかになった。県内外では翁長氏の去就など、秋に予定される知事選への影響を注視する動きが広がったが、複数の与党県議は、「2期目への出馬が既定路線。県民投票を巡っては意見が分かれているのが実情だが、知事を支えていくという思いはどの立場であっても決して変わらない」と語りオール沖縄の体制の再構築に奔走する。

一方、自民党側も天王山である沖縄県知事選挙へ向けて候補者選考の動きを加速させている。1月下旬、医療・福祉界からは県医師会副会長の玉城信光氏(69歳)を推す声があがった。2月中旬、県医師会は7支部(北部・中部・浦添・那覇・南部・宮古・八重山)の代表を集め、知事選へ意欲を示している玉城氏の投票を行なった。結果は3対4で否決。会長の安里哲好氏らは玉城氏の出馬を抑制する動きを見せていた。

また、県内で大手流通企業グループを率いる安里繁信氏(48歳)も立候補に動き出した。事実上の後援会組織となる「新しい沖縄を創る会」を2月26日に立ち上げ、同日浦添市で、3月16日には糸満市、22日宜野湾市、23日宮古島市で集会を開いた。

この動きを警戒・察知したのが自民党県連だった。3月31日に那覇市内のホテルで知事選候補者準備会を立ち上げた。選考委員には、仲井眞弘多前知事、チーム沖縄と称し翁長知事とは袂を分かつ島袋俊夫うるま市長や下地敏彦宮古島市長をはじめ自民党県連に所属する県議や国会議員らが名を連ねた。さらに、石嶺傅一郎沖縄電力会長や安里哲好県医師会会長、國場幸一國場組会長なども選考委員に加わった。

準備会終了後の記者会見で翁長政俊自民党県連副会長(県議)は、「次の委員会までには、選考基準をしっかりつくりたいと思っています。当選可能な人、人格高潔で能力の高い方、さらには、県民に幅広い支持の得られる方。こういうことが基本的な基準になっていく」と語り具体的な人選作業に入ったことをアピールした。

11月の天王山、県知事選挙に向けた各方面の動きが加速している。

(本誌取材班、2018年4月20日号)

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