考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

【タグ】

【南北首脳会談緊急企画】
金正恩・トランプ会談次第で
朝鮮半島は激変する

李東埼(リ トンギ)ジャーナリスト|2018年4月26日12:40PM

解決の機会潰したブッシュ

朝米核交渉は四半世紀を超えるが、その間に平和的解決のチャンスは少なくとも2回あった。それを潰したのは米国である。

1回目は1994年の朝米基本合意文(枠組み合意ともいう)である。クリントン政権が末期の2000年になってようやく約束通り国交樹立に手を付けようとしたが、次期大統領当選者のブッシュ・ジュニアが阻止した。ブッシュ政権は北朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」と呼び核先制攻撃の対象に指定。合意文を破棄した。

2回目の裏切りはブッシュ政権下の2005年、6者会談9・19共同声明の時である。共同声明発表直後にアメリカ財務省は北朝鮮にたいし金融制裁をくわえた。共同声明は霧散した。

問題は、なぜブッシュ政権が、自らサインした共同声明を破棄する行動に出たかである。ブッシュは、北朝鮮にたいして一方的な核放棄を強要し、思いのままに軍事侵攻できる条件をつくりたかった。ところが共同声明には、米国の不可侵誓約、北朝鮮の核平和利用権、軽水炉提供などが明記された。それが気にいらなかったのだ。

たび重なる裏切りにあって、北朝鮮はついに翌年2006年10月、初の核実験にふみきった。最近、米国は「これまで北朝鮮に騙されてきた」と言い張っているが、事実は右に述べたように正反対である。

金大中(キムデジュン)政権で統一部長官だった丁世鉉(チョンセヒョン)氏は「米国が合意した通り履行したなら、北韓は核を持たなかったであろう」と語っている(『新東亜』2017年9月号)。クリントン政権の時、平壌に飛んで朝米基本合意文締結のきっかけをつくったカーター元大統領も、合意違反者は米国だと言っている。

カギはトランプの力量か

日本のマスコミは朝鮮半島の非核化という言葉の意味を北朝鮮の非核化と解釈しているが、これは正しくない。それは文字通り全朝鮮半島から核をなくすという意味だ。朝鮮人民は米国の核脅威に、朝鮮戦争以来70年近くもさらされ続けてきた。侵略核こそが優先的な除去対象でなくてはならない。

北朝鮮政府は2016年7月6日、スポークスマン声明を発表し、その中で以下の5項目の原則的要求を提起した。

①南朝鮮(編集部注=「大韓民国」の意味)に持ち込んだ米国の核兵器をすべて公開すること
②南朝鮮からすべての核兵器と核基地を撤廃し、世界の面前で検証させること
③朝鮮半島とその周辺に随時展開する核攻撃手段を二度と持ち込まないことを保証すること
④いかなる場合も核で、または核が動員される戦争行為でわれわれを威嚇、恐喝したり、北朝鮮に対して核を使用したりしないことを確約すること
⑤南朝鮮で核の使用権を握っている米軍の撤退を宣布すること

声明は、「このような安全の保証が実際になされれば、我々もやはりそれに合致する措置をとることになり、朝鮮半島非核化実現で画期的な突破口が開かれるであろう」と述べている。

これまでと違って、力の優位を背景にした米国ではなく、核保有国どうしの首脳会談である。下から積み上げるのは大変だが、首脳同士が一括妥結すれば事はスムーズに運ぶ。

問題はトランプ大統領の政治的力量にかかっている。彼が朝鮮半島核問題を解決すればノーベル平和賞ものだ。
北朝鮮は核保有国だ。結局、米国は早晩、平和協定締結、国交樹立、在韓米軍撤退へと進まざるを得ない。朝鮮半島の平和はこうして確保される。

【タグ】

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

黒沼ユリ子の「おんじゅく日記」

ヴァイオリンの家から

黒沼ユリ子

発売日:2022/12/06

定価:1000円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ