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石牟礼道子さん追悼の夕べ
『苦海浄土』語り、『椿の海の記』演じる

薄井崇友|2018年4月3日12:43PM

『椿の海の記』の冒頭を演じる井上弘久さん。「転形劇場」の沈黙劇『水の駅』で世界を魅了した演技が原点にある。(撮影/薄井崇友)

東日本大震災と福島第一原発事故があった3月11日は、水俣病を描いた小説『苦海浄土』の作家で、先月10日に亡くなった石牟礼道子さん(本誌初代編集委員)の誕生日でもある。この日、東京の早稲田大学小野記念講堂で追悼「石牟礼道子の宇宙」が開催。多くの人が死を惜しみ、石牟礼文学を語りあった。

主催は藤原書店、共催に早稲田大学會津八一記念博物館。

会場は、17時半の開場まもなく満席になり、18時に黙祷、主催・共催者の挨拶で開会し、能楽師で人間国宝の梅若実さんの音声メッセージに続き、石牟礼さんの3作品を次の役者が上演した。

先ず浄瑠璃芝居『六道御前―西南役伝説より』を三味線と尺八などの楽曲で金子あいさんが舞い、次に童話で絵本にもなっている『水はみどろの宮』を詩劇で新井純さん・坪井美香さんが演じた。そして石牟礼さんの幼少期を描いた小説『椿の海の記』を、叙述も会話も全てをセリフで表現する朗読演劇で井上弘久さんが演じた。これらは一部(予告編)で「石牟礼道子の宇宙」を舞台空間で表現を広げ、4月以降それぞれに上演する。

続いて、作家の田口ランディさんが和装の喪服で登壇した。

「ものものしい事に成らないように書いておりました。静かに静かに、桜の花びら一枚一枚を、紙の上に置いていくような気持ちで綴っておりました」

『苦海浄土』を執筆したときの石牟礼さんの言葉を紹介し「それを聞いたとき、私は打ちのめされる思いでした」と声を震わせ、そして22歳のときの石牟礼作品との出会いに遡って話した。

第2部は石牟礼作品の朗読に始まり、最首悟(社会学者)、鎌田慧(ルポライター)、金大偉(映画監督)、赤坂真理(作家)、町田康(作家)の各氏が、追悼の言葉を語る。

最後に作家の高橋源一郎さんが「死んでいないと思う。石牟礼さんは世界のあらゆるモノと繋がる萃点だ。ページを開けば森の思想があり、そこに石牟礼さんはいていつでも会える。死んでいない」と講演し、21時に閉会。参加者からは「私も石牟礼さんの本は言葉の森だと思う」、「水俣の言葉が翻訳の壁だった。本当はノーベル文学賞だ」との声も。

1月に水俣を訪ね、石牟礼さんに『椿の海の記』の上演報告をした井上さんは

「コンクリートで覆われた校庭の話をしたんです。すると『コンクリートで蓋をされ土の中から出てこれない生き物たちが可哀相』と仰るんです」

と石牟礼さんのさまざまな生き物への想いを話し、そして「石牟礼さんの世界をまだ知らない人もいます。私の表現で少しでも伝えたい」と楽屋取材で話してくれた。

(薄井崇友・フォトグラファー、2018年3月23日号)

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