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石垣市長選、自衛隊配備めぐり三つ巴の構図か “保守”も分裂(週刊金曜日取材班)

週刊金曜日取材班|2018年3月2日8:32PM

3月11日投開票の沖縄・石垣市長選挙は、防衛省が計画する陸上自衛隊配備を次期市長が受け入れるか否かが最大の争点とされる。3月4日の告示がせまるなか、配備に前向きな“保守”は内部分裂の状態にある。現場で今なにが起きているのか。

石垣市長3期目を目指す中山義隆氏。(撮影/取材班)

石垣島は2014年に現職の中山義隆市長=今回の選挙では自民、公明、日本維新の会の各党が推薦=が2期目の当選を果たして以降、“保守地盤”と呼ばれてきた。とくに2期目の“横暴”な中山市政には批判が高まっており、これが市長選にどう響くかが注目されている。

「中山市政を刷新する」

現状を刷新するとして昨年末に立候補を表明したのは、前石垣市議の宮良操(みやら・みさお)氏=社民、沖縄社会大衆、共産、自由の各党推薦=だ。農家出身で市職員を18年、市議を5期20年務めた。「中山市長による石垣市政は“末期状態”。民主政治が崩壊することへの危機感と怒りから、立候補を決意した」と宮良氏は話す。

前石垣市議の宮良操氏。(撮影/取材班)

中山氏への怒りが高まっている理由のひとつは、カネの問題だ。とくに、選挙期間中など不自然な時期(14年)に東京都内で、さらに15年には沖縄県那覇市内で高級マンションの一室を“購入”していること(昨年6月23日号で詳報http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2017/07/11/news-4/)や、保有株に関する報告が不明瞭であることなどが判明し、野党市議らは昨年6月議会から本格的な追及を強めている。だが中山氏は要領を得ない答弁で話題をそらすことなどに終始し、その姿は安倍首相の国会答弁を彷彿とさせる。

市議会では“野次”を飛ばす一幕もあった。昨年12月定例市議会では、中山氏の15年度住民税(市・県民税)に対する課税の不備や未払いの疑惑が提起されたが(中山氏側は「適正に課税、納税されている」と主張)、その際に中山氏は、ある野党市議を指して「税の説明をしてもわからない」と揶揄し、別の野党市議らを嘲笑するような発言も続けて顰蹙(ひんしゅく)を買った。

さらに16年に出回った“わいせつ”写真では、自民党支持者や女性層からの反感も買った。写真には、台湾の宴席で上半身裸の女性と抱き合う中山氏の姿が……。同氏は会見で市議時代(07年)のことだと釈明したが、「市長の器か」との声が自民党支持者からも出た。

このほか16年には、申し込みが5人未満の郊外の幼稚園を休園させるとして、市立幼稚園管理規則を一部改正した市教育委員会への批判も強まった。結局、昨年の市議会で規則改正の保留が決まった。

「自衛隊配備問題」で高まる中山氏への不満

そして、自衛隊配備問題だ。防衛省が15年11月、陸自配備を正式に石垣市へ打診すると、中山市長は16年に事実上の“受け入れ”を表明した。候補地は島のほぼ中心部に位置する平得大俣地区(ひらえおおまた、市有地含む)だと発表され、候補地に近接する四つの集落は「断固反対」を訴えた。上質な農地は潰され、信仰対象の於茂登(おもと)岳や名蔵ダムへの影響も不明だからだ。民家や農地と近接する敷地内には弾薬庫4棟や射撃場なども予定され、住民は高い危険にさらされる。ある証言によると、「以前、防衛省から住民説明会を開きたいと電話での打診が複数人にありました。こちら側としては正式に文書で連絡してほしいとの旨を伝えたが、音沙汰なしです」という。

中山氏を取材した一部英語圏メディアの記事によると、同氏は今年3月を「最終期限」ととらえており、市長選後の市議会で駐屯地建設の賛成動議を通過させようとしている。しかし、中山氏は一連の記事内容について市民には一切公表していない。

“保守派”分裂と自衛隊配備の根本問題

前沖縄県議の砂川利勝氏。(同氏ホームページより)

このなか“保守派”が分裂し、前自民党県議の砂川利勝(すながわ・としかつ)氏が今年1月24日、立候補を表明した。一部報道によると、砂川氏は現在の候補地を変更する方向で調整しているという。農家出身で市議を4期16年、その後県議を務めた人物だ。中山市政に対する不満のほか、もともと与党である市議2人を含む計4人が昨年9月、中山氏に対しゴルフ場建設用に市有地を貸し付けるよう脅迫したとして職務強要の容疑で逮捕・起訴された事件(12月議会で市議の一人は起訴内容を否認)も、立候補の要因の一つとみられている。逮捕された市議らは自衛隊配備について、陸自ではなく、海自配備を優先すべきだと公言していた。

砂川氏の立候補表明に先立つ今年1月22日、中山氏は事務所開きをし、宮古島の下地敏彦(しもじ・としひこ)市長も参加した。「砂川氏の立候補を見越し、市長選の結果を左右する石垣の宮古島出身者へのアピールをした」と、ある自民党関係者はみる。砂川氏は宮古島から石垣に移住した人々のコミュニティに基盤をおいており、立候補すれば未知数の“宮古島票”が砂川氏を支えるとみられているのだ。「同氏は葉たばこ業界を中心に人望もあつい」(別の自民党関係者)という。農家出身であるゆえ、農地への自衛隊配備計画には消極的というのも立候補を後押しする要因とみられる。

ただし、すべての「宮古島票」が、中山・砂川両氏のいずれかに流れるとは限らない。同島出身のある女性は、「どんなに結束力が強くても、個人の思想・信条を尊重するのが大前提でないといけない」とし、「戦争などを背景に、故郷から各地への移住を強いられた人は少なくありません。私たちを受け入れた石垣島への恩を返したい。戦争につながることには何としても抗う、そう考えて行動する人たちも多い」と強調した。

駐屯地の候補地の代替案に浮上している「サッカーパークあかんま」は複数のダムに隣接し、水源が汚染されれば市民生活に被害が出ると懸念されている。(撮影/取材班)

また、「平得大俣への配備の白紙撤回」を掲げる砂川氏に対し、「本気なら、なぜ計画が浮上した時点で抗議しなかったのか」と、疑問を投げかける住民もいる。根本的に、たとえ候補地を変更しても依然として問題は残るのだ。代替案の一つとして現在浮上している「サッカーパークあかんま」は、サッカー女子日本代表やJ1のクラブも合宿地として利用している。同施設を挟む東西付近には「底原(そこばる)ダム」や「真栄里(まえざと)ダム」もある。有事に軍事基地が攻撃されたり、平時でも施設から汚染物質などが流出したりすれば、石垣島が壊滅的な被害を受ける危険に変わりはない。

前出の宮良氏は、「地元の意向を無視する形で配備を進めると、将来に禍根を残す。沖縄戦の歴史を踏まえるべきだ」と語気を強める。「(自衛隊配備は)国の専権事項」と中山市が発言していることには、「まったく違う。地方自治の課題であり、住民の声をくんで議会で決議していくもの」とした。

市議補欠選挙も三つ巴の攻防

候補地に近い嵩田地区で生まれ育った花谷史郎氏。写真は同氏のゴーヤ畑にて。(撮影/取材班)

今回は市長選と同時に市議補欠選挙(欠員2)が実施される。

砂川氏と歩調をあわせる会社代表の黒島孫昇(くろしま・そんしょう)氏は1月25日の立候補表明で、自衛隊配備計画について、「災害救助ならよいが、ミサイル基地はいらない」との見解を示した。一方、中山氏とセット戦術でいどむ社会福祉法人事務局長で高齢者福祉施設長の米盛初枝(よねもり・はつえ)氏は、2月9日の立候補表明で、同計画について「市長の考えに沿った形になる」との見解を示した。

こうしたなか、配備計画の撤回を求める4集落を代表する形で、花谷史郎氏(農家)が立候補を表明している。4集落は戦前・戦後を通じて台湾や四国、沖縄島などから移り住んだ人々が、農地を開拓した歴史をもつ。花谷氏は「住民を危険にさらす配備計画は、たとえどこであってもゆるされない」と強調。現行計画の平得大俣地区については、「先人が血と汗と涙をかけて拓いてきたんです。この地域は沖縄でのパイナップル栽培の発祥地であり、マンゴーやゴーヤ栽培などの基盤もなしてきた。近年では後継者が育ち、豊かな農村風景も自慢です。配備問題にかかわるなかで、行政の課題に直面しました。本来、市民の暮らしは自前の意志と努力で育むものです。私たちには未来を選ぶ権利と使命がある」と訴えた。

住民意思や生命の尊厳を踏みにじる国策はやがて破綻するだろう。島人の胆力は、正念場を迎える。

(『週刊金曜日』1月26日号に加筆修正)

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