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「生活扶助費」引き下げのさまざまな悪影響(鷲尾香一)

昨年末、政府は2018年度予算において、生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費にあたる「生活扶助費」を引き下げる方針を打ち出した。

厚生労働省の推計では、受給世帯の3分の2を上回る67%が減額となる。65歳以上の単身世帯では76%が、子どものいる世帯でも43%が減額となる。

「生活扶助費」の支給水準は5年に一度見直されることになっている。その見直し基準は、生活保護を受けていない一般世帯で年収が下位10%の層(いわゆる低所得世帯)と生活費が均衡するように決められている。

厚労省が世帯類型ごとに低所得世帯と均衡する扶助額を算出したところ、特に多人数世帯や都市部の世帯で現在支給されている扶助額が、同じ類型の一般低所得世帯の支出より高かった。このため、「生活扶助費」が引き下げられることとなった。

しかし、ここには不思議なパラドックスが存在する。2007年の最低賃金法改正では、ワーキングプア解消を目指し最低賃金を決める基準として、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ことが明記された。

つまり、最低賃金を考える際には、生活保護の「生活扶助費」をベースとして最低賃金を決めているわけだ。となれば、生活扶助費が最低賃金を上回っているのであれば、「最低賃金の引き上げ」を行なうべきなのだ。

そうしないと、生活扶助費と最低賃金の相関関係を考えた場合、生活扶助費が引き下げられれば、事実上、最低賃金は上がらなくなる可能性が高い。最悪、最低賃金が下がる可能性すらある。

生活保護受給額の引き下げは、様々なところに悪影響を及ぼす可能性がある。たとえば、各自治体などが低所得世帯を対象に行なっている就学支援などは生活保護受給額を基準に決められているケースが多い。生活保護受給額が引き下げられれば、援助の基準も引き下げられる可能性があり、低所得世帯が支援を受けられなくなる。

日本では、生活保護に対する風当たりが強い。「働かざる者食うべからず」という国民性が根付いているため、生活保護は、「白い眼で見られる」傾向がある。しかし、日本の生活保護制度は、世界各国に比べて、きわめて低い利用率となっている。

日本弁護士連合会が作成した生活保護の利用促進を促す冊子によると、若干古いデータではあるが、各国の生活保護制度利用率は、ドイツ9.7%、イギリス9.27%、フランス5.7%、スウェーデン4.5%であるのに対して、日本は1.6%でしかない。

OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中、GDP(国内総生産)に占める生活保護費の割合は、OECD平均が3.5%であるのに対して、日本は0.5%でしかないのだ。

日本の生活保護は、まったく手厚くもなければ、充実もしておらず、先進国でも最低水準でしかないというのが実態だ。それでも、安倍政権は低所得世帯との整合性のために、生活保護支給額を引き下げようとしている。

半面、経済界に対しては3%の賃上げを要請しており、その一貫性のなさに、弱者切り捨ての構図が透けて見える。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2018年1月19日号)