週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

相次ぐ沖縄ヘリ事故問題で野党が合同現地視察 安倍政権の属国的対応を批判

稲嶺進名護市長(左)と面談した米国シンクタンクのダグ・バンドウ氏。(撮影/横田一)

沖縄ヘリ事故問題で野党が県民の怒りを受け止める形で1月15日に合同現地視察、22日から始まる通常国会で安倍政権を追及すると同時に、諸悪の根源とされる日米地位協定見直し論議にまで踏み込もうとしている。安倍首相の属国的対応を野党が批判、辺野古新基地建設が最大の争点の「名護市長選(2月4日投開票)」にも影響を与える可能性も出てきたのだ。

立憲民主党と希望の党と共産党などの野党視察団(事務局は本多平直・立民筆頭副幹事長)は15日9時すぎに那覇空港に到着、普天間基地所属のヘリ(UH1)が6日に不時着したうるま市伊計島を皮切りに、2日後の8日に同基地所属のヘリ(AH1)が不時着した読谷村にも足を運び、沖縄防衛局から説明を受けた。大型輸送ヘリ「CH53E」の窓枠が校庭に落下した「普天間第二小学校」(宜野湾市)や「緑ヶ丘保育園」(同)では、保護者からもヒヤリング。最後は県庁で、翁長雄志県知事と面談した。

日米首脳の共同会見でトランプ大統領の日本を見下す発言に一言も反論できずに「トランプの忠実な従属的助手」(『ワシントン・ポスト』)と酷評された安倍首相だが、沖縄ヘリ事故でも「米国第一・日本国民二の次」の姿勢を踏襲。翁長知事が「米軍ヘリの全機種点検と安全確認までの運用停止」を求めていたのに、米軍はすぐに飛行再開、安倍政権は黙認した。翁長知事が「県民が日常的に危険にさらされている。日本政府は当事者能力がなく、恥ずかしさを感じてもらいたい」と安倍政権批判をしたのはこのためだ。

CH53Eの部品が落下した「緑ヶ丘保育園」の神谷武宏園長も野党視察団に「防衛省沖縄防衛局は部品が米軍のものであることは認めたが、落下を否定する米軍の言い分を受け売りするだけです」と怒りを露にした。落下の事実さえ認めない米軍に反論すらしようとしていない安倍首相の姿勢を見透かして、米軍はわが物顔に振舞っているようにみえるのだ。

【名護市長選を直撃】

相次ぐヘリ事故が、自公推薦の渡具知武豊候補と稲嶺進市長の一騎打ちとなる名護市長選を直撃するのも確実。

稲嶺市長も全機種点検と検証なき飛行再開を批判すると同時に、海外に比べて対米従属的な日米地位協定の改定を日米両政府に強く求めると明言をしているためだ。

9日には米国シンクタンクのケイトー研究所のダグ・バンドウ上級研究員と面談。海兵隊撤退論者で辺野古新基地不要論者でもあるバンドウ氏は、稲嶺市長との意見交換で「政府に何が起こっているのかを伝えていきたい」と話し、面談後の囲み取材では「世界中にいる米軍はどんどん自国に帰ってくるべきだ」と海兵隊撤退論を述べ、「海兵隊用の辺野古新基地は必要ない」と断言もした。専門家として稲嶺市長を援護射撃した形だが、これに野党も属国的対応の安倍政権批判で同調。枝野幸男・立憲民主党代表が「安倍政権は米国に物がいえない」と指摘すると、大塚耕平・民進党代表も「日本国民の代表として安倍首相はもっと厳しい意見を言ってほしい」(11日の会見)と注文をつけ、玉木雄一郎・希望の党代表も「日米地位協定があって(日本側が)十分な捜査・調査ができないことも、頻繁に起きる背景にある」と日米地位協定改定に意欲を示した。

一方、自民党は菅義偉官房長官や二階俊博幹事長が沖縄入りして、名護東道路の完成前倒しや延伸などを訴える土建選挙を展開(先週号で紹介)。米軍ヘリの危険除去や新基地反対の民意を血税流用で抑え込もうとしている。

海外では低空飛行禁止など制限は当然の権利だが、ヘリ事故頻発は、日本がいまだに占領国状態であることを浮き彫りにした。合同視察をした野党もこの現実を直視、日米地位協定改定論議が与野党激突の政治課題となり、名護市長選に大きな影響を与える可能性も出てきた。米国に物を言えない対米従属で住民軽視の安倍政権の姿勢を問う県民投票のような様相を呈してきたためだ。

(横田一・ジャーナリスト、2018年1月19日号)

見送るということ(小室等)

去年二〇一七年、僕の“職場”で亡くなった人。

まずは三月一日、かまやつひろしさん。六〇年代後期、アートシアター新宿文化の支配人・葛井欣士郎さんがアートシアターの地下にアンダーグラウンド「蝎座」を作り、そこで三日間フォークのイベントをやってくれと依頼され、吉田拓郎さんや六文銭などが出たなかで、グループサウンズに越境して恐る恐るかまやつさんに声をかけたらすんなりOKで拍子抜けした。

かまやつさんにとってあれがフォークとの付き合いの端緒で、後に「実はフォークの人たちって少し怖かったのよね」ともらしていたが、ゆくゆく吉田拓郎作品「我が良き友よ」の大ヒットが生み出されるのだから世の中何が起こるかわからない。

四月五日、加川良さん。同じ職場なんだけど、配属場所が違ったらしく一緒になる機会は少なかった。芸風も良さんと僕は違う。でもときどき、良さんのファンで小室のファンでもあるという人に出会う。世の中、不思議だ。

六月二四日、佐藤公彦さん。ケメの愛称で当時のフォークでは異色のアイドル的スター。吉田拓郎さんもアイドル的人気を博したが、ケメは中性的王子様という感じ。もちろん職場は違いましたが、ケメの弟が少しの間僕のマネージャーとして付いてくれたし、僕の家で飼っていたホワイト・テリアは佐藤家からやって来たので、佐藤家とは近い距離にあった。

一〇月二五日、遠藤賢司さん。エンケンこと遠藤賢司さんを面と向かっては「賢ちゃん」と呼んでいた。賢ちゃんからの最後は〈「想い出づくり。」、日本映画チャンネルでみてますよ。やはり、名曲ですね〉と僕の音楽をほめてくれたメールだった。訃報をキャッチしたのはボルドーでワインを飲みながら十数年ぶりの生牡蠣を食べているときだったのは、この欄でも触れた。異国のレストランで生牡蠣とワインでの追悼であった。

一二月二日、はしだのりひこさん。ザ・フォーク・クルセダーズ、加藤和彦さんとも、北山修さんとは今も親しくしているが、はしださんとは子ども同士が同窓という以外、ご縁は浅かった。

いずれにしても、この歳になると、生き残るということは人を見送るということだと、つくづく思う年の瀬であったのだが、年頭にあたってひとつ。

昨年、すべての芸人、芸能人、ミュージシャンは、ウーマンラッシュアワーに頭を叩かれた。

ヒロちゃんは、自分にとって彼らの存在は大歓迎と言っていた。

今後、彼らがどう扱われていくのか、注視していかないとね。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年1月12日号)

安倍首相の年頭所感は実現可能か(高橋伸彰)

安倍晋三首相は就任6年目を迎えた今年元日の年頭所感で「本年は、『実行の一年』であります(中略)2020年、さらにその先を見据えながら(中略)改革を力強く進めていく」と述べた。

一見すると新たな決意だが、内実は3年前の年頭所感で誓った「今年は(中略)改革を推し進める。日本の将来を見据えた『改革断行の一年』にしたい」をリセットしたに過ぎない。

事実、2年前の年頭所感では誓い通りに改革が進まなかったことから、旧い3本の矢に新しい3本の矢を加え「挑戦、挑戦、そして、挑戦あるのみ。未来へと、果敢に、『挑戦する一年』とする」と嘯いた。その顛末が2016年6月1日の記者会見における世界経済の危機を口実にした消費税率引き上げの再延期表明だったことは記憶に新しい。

そして1年前の年頭所感では性懲りもなく「本年、安倍内閣は、国民の皆様と共に、新たな国づくりを本格的に始動します。この国の未来を拓く一年とする。そのことを(中略)強く決意しております」と国民に誓ったが、叶わないまま解散権を行使し、いわゆる「モリカケ」の疑惑隠しも兼ねて総選挙を断行したのだ。

誓うだけで結果が伴わないアベノミクスの実態は、安倍首相が5年間の成果として強調する「11%以上成長し過去最高を更新」した名目GDPの中身をみれば明らかになる。確かに、名目GDPの実額は民主党政権末期の2012年10-12月期と比して2017年7-9月期には、季節調整済み年率ベースで493.0兆円から549.2兆円に56.2兆円、率にして11.3%増加した。

しかし、GDPの過半を占める家計最終消費支出は同期間で283.2兆円から294.6兆円と金額で11.4兆円、伸び率で4.0%の増加に止まっている。かりに、名目GDPと同じ率で増えていたなら、家計消費は同期間で283.2兆円から315.5兆円に32.3兆円増加した計算になる。この315.5兆円と現実の294.6兆円の差額20.9(同期間の累積で約50)兆円、国民一人あたりで17(同約40)万円強に及ぶ「失われた」消費こそ、実感なき回復の正体ではないか。

家計消費が増えないのは賃上げが不足しているからだけではなく、二度の消費増税延期によって持続可能な社会保障制度の確立が先送りされ若年層中心に将来不安が高まっているからだ。

実際、長さだけをみれば「いざなぎ景気」を抜いた今回の景気拡大も、マクロ経済学者の吉川洋氏ほかによれば「労働市場の逼迫を別にすると必ずしも『好況感』は生まれてきていない。2012年末にスタートしたときには円安、株価の上昇などを背景に生まれたアベノミクスへの期待も次第に色あせてきた」(日興リサーチセンター「低迷する消費」)という。

年頭所感では「改革断行」とか「挑戦」とか「未来を拓く」とか耳あたりの良い言葉を並べ、いざ実現が危うくなると衆議院の解散権まで濫用して責任逃れを図る安倍首相の誓いを、国民はどこまで信じ続けるのか。今秋に控えた自民党総裁3選というリセットボタンが押される前に、私たちはあらゆる機会を通してアベノミクスの欺瞞を剔出するべきだ。そうでなければ未来は拓けない。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。2018年1月12日号)