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【憲法を求める人々】山城博治(佐高信)

 2017年12月12日に開かれた「山城裁判を知ろう!」という集会での本人の話は「沖縄今こそ立ち上がろう」という歌から始まった。

今こそ立ち上がろう
今こそ奮い立とう
沖縄の未来は沖縄が開く
辺野古の海を守り抜くために

本誌5月12日号掲載の鼎談で、山城の高校の先輩である照屋寛徳が証言しているように「ヒロジの運動には沖縄の島唄があり、三線があり、カチャーシーがあり、時にラインダンスだって出てくる」

ちなみにカラオケで歌う歌は「釜山港へ帰れ」だとか。

照屋が「類まれなリーダー」と称える山城の闘いには何よりも笑いがある。前記の鼎談のタイトルは「帰ってきたヒロジさんと安倍政権を笑い倒す」だが、もちろん笑いとともに激しい怒りがある。

弾圧は警視庁が入ってきてから暴力的になった。沖縄県警とはある種の信頼関係があったのだが、それが断ち切られて山城は152日間も不当勾留される。

真冬に靴下の差し入れも認められなかった。その理由として留置所は「靴下を口の中に押し込んで自殺する可能性があるから」とバカな説明をした。

それで弁護士で代議士の照屋は内閣に質問主意書を出す。靴下の差し入れを制限している憲法違反の留置所、拘置所は全国にどれだけあるのかと問うたのである。答は名護署だけだった。そして、内閣から回答がおりてくるその日の朝から、靴下の差し入れが認められるようになったのである。

安倍政権の卑劣さ、狡猾さがどれほどのものかわかるだろう。その中心に官房長官の菅義偉がいる。よく知られているように菅も、菅と対峙する沖縄県知事の翁長雄志も法政大学に学んでいる。山城もそうである。また、山城と同い年の田中優子と松元ヒロも若き日に法政で学んでいた。おそらく菅だけが独立と抵抗の精神を学ばなかったのだろう。

山城は納豆が苦手だった。収監されるまで食べたことはない。しかし、よく出てくるので食べてみたら、うまい。以来、口にするようになった。それが唯一の「入ってよかったこと」かもしれない。

新聞は留置所では1日1紙に制限されている。しかし、関係する記事は切り取られているので、スカスカになっていた。

最初は残念に思ったが、次第に「おお、今日はたくさん書いてくれたんだなあ」と励まされる感覚に変わった。逆に切り抜かれていないと「今日は書いてないのか……」と落胆したのである。

山城を極悪非道の犯罪者だと印象づけようとして、当局はこんなことまでやった。

怒りをこめて山城は振り返る。

「取り調べで、名護署から裁判所や検察に移動する時の私の恰好はと言えば、裸足にゴム草履、手錠をされ、さらに腰に縄をつけられた状態なんです。その恰好で外を歩かされる。名護署に戻る時も同じです。そんな恰好をさせられ、後ろから歩け歩け歩けと、まるで犬畜生みたいに」

そんなことには負けないぞと、山城を闘いの場に戻らせたのは、生来のある種のヤンチャさだろう。山城には会う人をなごませる人なつっこさもある。

好きな俳優はと尋ねたら、日活にいた芦川いづみという答だった。

元気者の弟を支える姉のような役が多かったが、多分、山城の妻は芦川に似ているに違いない。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、2018年1月12日号。画/いわほり けん)

自民総裁選のカギ握る“魔の3回生”(西谷玲)

2018年の幕が開けた。今年の国内政治のポイントはまず、9月の自民党総裁選である。安倍晋三首相が出馬するのはまず間違いないとみられるが、ここで安倍氏が当選して、3年の任期をまっとうすれば、第2次大戦後の吉田茂氏、そして戦前の桂太郎氏を抜きさり、憲政史上最長の首相になるかもしれない。

今のところ、他に出馬の可能性があるとされているのが石破茂氏、岸田文雄氏、野田聖子氏、河野太郎氏あたりだが、いずれも今のところパンチ力に欠けており、安倍氏がもっとも有力である。

対立候補以外に総裁選を占うカギなのが、「魔の2回生」である。自民党が政権に復活した2012年での大量初当選組で、当時は116人いた。暴言や不倫騒動など発言や行動が次々に問題となり、離党や議員辞職した人もいた。14年に再選を果たしたのは参院議員経験者を除き96人で、昨年の総選挙では15人が落選し、81人となった。

彼らは自民党が苦杯をなめていた野党時代を知らない。だから苦労知らずで甘えが目立ち、政治家としての見識が足りないとも指摘される。谷垣禎一前幹事長や引き継いだ二階俊博幹事長はそんな彼らに党員獲得1000人のノルマを課し、実現できなければ外遊を禁じたりもした。

そんな彼らも少しずつ淘汰されて当選3回を重ねた。安倍一強と言われるのは、党のなかで3割近くを占める彼らが声もあげず、唯々諾々と安倍氏に従っていたからでもある。だが、これからはその光景が少し変わるかもしれない。力と自信を少しずつ増してきた彼らが、発言を始めるかもしれないのだ。すでにその兆しは見えている。

昨年の総選挙では、民進党が分裂したために自民党が大勝はしているものの、選挙区の最前線では安倍批判が渦巻いていた。彼らはそれを肌で感じている。もし今後も、これまで同様、安倍首相に何も言わない状態が続けば、自分の存在基盤が危うくなるかもしれないというのを理解したのだ。

すでに「ようやく3回生になった。これからはきちんと物を言っていきたい」というような、宣戦布告というと大げさだが、そんな思いをあちこちで自民党の3回生から聞いた。彼らが総裁選でどう動くのか。数は力である。「現代っ子」で、派閥への帰属意識も弱い彼らがどのような行動をとるのかが総裁選の動向を決めるといえよう。それからもう一つ、総裁選だけの問題ではないが、安倍官邸が今、今年の目玉としてねらっていることを指摘しておきたい。

それは安倍首相の訪中だ。

北朝鮮問題も緊張し、トランプ政権の方向性も不透明である今、日中がどういう関係をつくっていけるかは大きな課題である。その大きな一歩として安倍官邸は今、訪中して習近平国家主席と会談をする、しかもその時期を総裁選にぶつけた9月にねらっているというのだ。他の候補たちに対し、「自分は君たちとは全然違う地平を見ているのだ」ということを見せびらかしたいというわけだ。

もちろん日中の首脳外交は非常に重要である。昨年末に外務省の次期事務次官に秋葉剛男氏が内定した。非常に交渉上手で菅義偉官房長官の覚えもめでたい。着々と準備は進んでいる。

(にしたに れい・ジャーナリスト、2018年1月12日号)