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“農業の一等地”をつぶす石垣島への自衛隊配備 防衛省計画に住民らは猛抗議

石垣島への自衛隊配備候補地付近で10月30日に開かれた住民らの抗議集会。(撮影/本誌取材班)

防衛省が強行的に進めている南西諸島への陸上自衛隊配備計画。与那国島、奄美大島、宮古島とともに渦中の石垣島では10月30日、陸自駐屯地の候補地(平得大俣地区)に近接する4つの集落が現場付近の農地で抗議の声を上げた。

於茂登・嵩田・開南・川原の各集落で主に農業を営む住民ら約100人は、計画の白紙撤回を求めて同日に抗議集会を開催。これは、同月22日の衆院選・沖縄4区で自民党公認・公明党推薦の西銘恒三郎氏が当選したことに対して、中山義隆市長が「(陸自配備に賛成という)民意が出たと思う」などと発言したことを受けてのものだ。

対する無所属の仲里利信氏は選挙期間中、陸自配備反対を明確に訴えたが、西銘氏は〈今選挙では「自公政権を維持することが優先」として自衛隊問題を封印させ、地域事情を抜きにした運動を展開〉(地元紙『八重山毎日新聞』)した。同紙は、西銘氏の得票には〈陸自配備に否定的な公明支持者の票も含まれているとみられる〉などとも報じている。西銘氏の選対本部石垣市支部長を務めた中山市長も選挙期間中は陸自配備について沈黙を保っていた。

抗議集会で4集落は声明を発表し、衆院選で〈(西銘陣営は)「争点は経済対策だ」とも言っていた〉と指摘。〈中山市長は配備候補地で生活をする我々との話し合いの約束を反故にしました(中略)石垣島への自衛隊配備は『国の専権事項』などではありません。石垣のことは石垣市民に決める権利があります〉などとも訴えた。

平得大俣地区に近接する4集落は、いずれも戦前・戦後を通じて沖縄本島や台湾、四国などから移住した人びとが開拓した経緯がある。沖縄でのパイナップル生産の発祥地であり、現在ではマンゴーやゴーヤーなどの栽培も盛んな“農業の一等地”だ。

防衛省は2015年11月26日に石垣市へ配備計画を正式に打診。このとき同地区を候補地としたが、住民への事前説明などはなかった。各集落は当初から一貫して同地区への「配備反対」を求めており、石垣市や防衛省の対応に注目が高まっていた。

ところが今年5月17日防衛省が突然公開した駐屯地の「範囲・配置案」には、所有者の承諾なく無断で農地が施設内にくみ込まれていたり、弾薬庫4棟や覆道射場(射撃場)といった危険性の高い施設が描かれたりするなど、これまでの住民意思を踏まえない国側の強硬姿勢が露呈した。

【市が前例ない“介入”】

集会で嵩田地区の花谷史郎さん(農業)は、「4集落の願いは静かな環境で農業を営み、豊かな自然に囲まれて暮らしたいというもの。しかしそうした願いが、あやふやな“民意”によって奪われようとしている。私たちは声をあげなければならない」と強調した。

一方、計画撤回を求める市民運動に市側が前例のない“介入”をし、問題になっている。「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」が18歳以上の市民を対象に、7月から2カ月ほどで集めた約1万4000筆の署名を市側が「精査」すると言い出したのだ。本誌が取材した11月17日、同市の担当は「精査はおそらく初めて」としつつ、「市民連絡会から中止するよう申し入れが14日にあったので作業できない」と答えた。だが20日に一転。なんと選挙人名簿と署名の照合を開始したという。

呼応して市側の対応を報じたのは、『産経新聞』と提携する『八重山日報』だ。同紙は11月22日、署名には「最大6重ダブリ」があるとし、「私は配備推進派」という匿名の発言を紹介。「主旨を説明されずに署名させられた」などと報じたが、実数などは明らかにしておらず、中途半端な記述が目立った。

沖縄の基地問題に詳しい宮平真弥・流通経済大学法学部教授は、「自治体が選挙人名簿と署名を照合するなんて聞いたことがありません。断片的な情報をメディアに“広報”させるのも、市民運動の萎縮やイメージ・ダウンを狙っている疑いがある」と指摘している。

(本誌取材班、12月1日号)